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#4 ダンディ
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こんにちは、平埜生成です。
ヒラノキナリ、と読みます。
気軽に「ダンディキナリ」と呼んでください。
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この前、中学校の同級生とご飯を食べに行きました。2年ぶりのご飯でした。創作イタリアンのお店でした。オシャンティ、でした。見たことない料理に興奮しながら、お酒を飲み、笑い合う。ダンディな夜になりました。
そんなダンディなわたくしたちは、「なぜ、今の仕事を選んだのか?」というダンディなテーマで語らいました。
ダンディな友人は、「中学のときに言われた親の言葉が大きかった」と、ダンディワードを炸裂させていました。
では、わたくしはどうか。
「なりゆき、かな」 と答えていました。
ナイス、ダンディ!
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ダンディな友人は、ダンディに向かって言いました。
「いつから芝居やってるんだっけ?」
ダンディ、素直に答えます。
「厳密には中学生くらいかな。でも、向いてないと思って、一回、辞めてるんだよね」
友人、ここでニヤリとダンディな笑みを浮かべます。
「向いてない?」
「そうそう。今でもそうだけど、人前に立ったりするの、恥ずかしいんだよね」
「そうだっけ? 謝恩会とかで、楽しそうにダンディしてなかった?」
「あれはノリというかさ。内心はすごい恥ずかしくて、ノーダンディだったんだよ」
「そうかぁ。まさかダンディがそんなことを感じていたなんて思わなかったよ」
「まぁ、だからダンディなのかもしれないよね」
「ナイス、ダンディ」
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そんな話をしていると自然とお酒が進みます。ダンディは、レッドアイ、友ダンディは赤ワインをおかわり。ダンディな色が、2人の顔を染めます。つまり、酔っ払ってきました。
「じゃ、けっきょく、ダンディはさ、なんで役者をやってるの?」
「それ最近よく考えるんだけど、すっごくシンプルに言っちゃうと、楽しいから、かな」
「ダンディだねえ」
「え、友ダンディはどうなの?」
「同じ。仕事が楽しい」
「ナイス、ダンディ!」
グラスがチン、と響きます。心地よい疲労が体を吹き抜けていくのがわかりました。時刻は、21時を回ろうとしていました。
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「仕事が楽しいと思えるのって、しあわせだよね」
ダンディ、酔った勢いで青臭いことを言っていました。しかし、友ダンディは茶化すことはしません。「そうだね」と同調すると、遠くに視線を移します。
「緊張があるから、なんだろうね」
「緊張?」
「そう。ダンディは役者やってて緊張することってない?」
「するする。ずっとする。大ベテランの先輩ですら、緊張するって言ってた」
「・・・そうだよね」
友ダンディ、なんだか声のトーンが変わったような気がします。影が差したというか、少し落ち込んでいるというか・・・。
「え、お医者さんは緊張しないの?」
「・・・するよ」
深い声の響きに、ナイスダンディ、と叫びたくなりました。でも、あまり陽気な空気でもなかったのでグッと我慢です。
「オペは毎回、緊張する。でも、だから楽しいのかもしれない。その緊張の背景には、責任があるからさ。常に責任ある仕事を求められているというのは、やはり楽しいよ」
沈黙が生まれました。 友ダンディは、何かを噛み締めているようでした。その横顔には、喜びでも苦しみでもないダンディが浮かんでいます。
ダンディは、なにも言わず、じっと友ダンディの横顔を見つめていました。
すると、友ダンディが、フッと笑い出しました。
「すべての仕事に対して責任を果たすことができればいいけど・・・。果たせなくて、悩むことはあるよね」
ダンディ、その言葉を聴いて、友ダンディの視線の先にある「命」について、思いを馳せました。もしかしたら、友ダンディは「命」と「楽しさ」が混在してしまうことについて悩んでるのかもしれません。
「楽(ラク)じゃないから、楽しいんだよ」
気づけばダンディ、そう言ってました。特に意味はありませんでした。
友ダンディは、目をキョトンとさせています。
ダンディ、反射的に答えたもんですから、気まずくなって、とりあえず満面の笑みを返します。そんなダンディを見て、友ダンディは、呆れるような笑顔をこぼしてくれました。
「ダンディ、そういうところ、変わらないよね」
「それ、悪口?」
「ううん。ダンディってことさ」
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最近は、自分の中の「変化」について考えることが増えました。あの頃と今。なにもかもが違います。しかし「変わらない」部分もあるようです。
旧友の目には、わたくしの「変わらない」部分が映ったようですが、わたくし、ついつい旧友のダンディな「変化」にばかりに目を奪われてしまいました。
たまには「変わらない」部分に目を向けてみると、自分の新たな素(す)の部分が見えてくるのかもしれませんね!
その素を大切に、目指せ、スーパーダンディ!
では、また。
平埜生成