あみというひらがなの名前とepisode1
自分の肩書やプロフィール写真、アイコンとかを変えたくなるのは自信がない時だと思ってる。自分的にね。私の名前は、ひらがなで「あみ」かわいいねとマネしてくれる親戚もでるくらいなんだけど、結婚できないことを名前のせいにしていた20代、あみを「阿弥」に変えていたことがあった。
阿弥様と書かれた茶封筒を父が持ってきて、「名前を間違えるなんて失礼よね」と少し笑いながらリビングのテーブルに置いたのを見たとき、私は「しまった」と思ったのだが、母がすかさず「あみちゃんは、今、名前を変えとうとよ」と言ってしまった。
私の名前をひらがなで付けてくれたのは父だったのに。
父の手が止まり、顔も硬直し(おそらく)何も言えずにリビングから自室に消えてから、阿弥の名前を封印した。そもそも、自分の名前じゃないんだし、封印も何もなんだけど。
1週間前に、同じ名前の人と2時間zoomで話した。互いに興奮しすぎて、終わった後はどっと疲れた。過去に戻り、今を感じ、時間を超える旅をしたからだと思う。だけど、また会うとわかっている。
父を固まらせてしまった8年後くらいに、私は結婚した。名前なんて関係なかった。呼ばれるままに京都に引っ越したら、3ヵ月後に滋賀の夫と出会った。しかも比叡山で。引っ越しの1ヵ月前、父に車を運転してもらい家具を買いに行った。穏やかな父が子どものようになったり、鬼のような一面を見せたり、もう見たくないと思った。どうして私は、父をこんな風に変えてしまうんだろう。傷つけたり、動揺させたり。
引っ越してから1ヵ月後、父の日のパンツプレゼントのお礼に手紙が届いた。8年前の名前のエピソードなんて忘れているかのように、「あみちゃんとお母さんの笑い声がリビングから聞こえない。辛くなったら、いつでも戻っておいで、ここで待っている」といったような内容がパソコンの文字で一枚半に書かれていて、手書きしないのが父らしいなと、京都の夕日が差し込む6帖くらいのワンルームで声を出して泣いたのを思い出しながら、今も堪えている。
今日はどうして、このエピソードを書きたくなったのかよくわからない。自分のこれから世の中に打ち出していくサービスのデザインに行き詰って、こちらに来た。
私はこうやって、感情が動いたエピソードをよく覚えているねと昨日、言われて、文章をほめられることはこれまでもあったけれど、「エピソード100くらい書いたらどうですか?」と具体的に、しかも書けそうな、大変そうでもない、書こうと思えばの絶妙な提案をされたのは、初めてで、その最初の会が今日になった。
これから、こうやって、あなたや私や、はたまた遠い国の誰かや、未来の宇宙人とか、そんなエピソードが100になるまで書いてみます。どうぞよろしくお願いします。
ストーリーライター あみあみ