リーズ大学研究滞在記①
2024年9月24日に日本を発ち、10月1日からイギリスのリーズ大学で9か月間の在外研究を行います。交換留学とも学位取得とも異なる形の滞在で、部屋探しから行った経験を書いていこうと思います。今後どなたかのお役に立てれば幸いです。
今日は10月4日で、渡英から10日が経ちました。
渡英前の話から、時系列に今日までのことを書いていこうと思います。
Visiting Postgraduate Researcher
今回の滞在は、Visiting Postgraduate Researcherという肩書で行います。別の大学の博士課程に在籍しており、そちらで博士号を取得することを前提に、1~12か月の間で任意の期間リーズ大学のリソースを使って、博士課程学生の身分で研究できるという制度です。イギリスの大学はどこも似たような制度があると思います。
この制度を使う最大のメリットはお金です。イギリスの大学に学位取得を目的に入学すると、EU外からの留学生にはイギリスの学生の3倍の授業料が課されます。私は修士号をイギリスの大学で取りましたが、1年間で約300万円かかりました。貯金やバイト代、奨学金で賄いました。
Visiting Postgraduate Researcherとして滞在する今回は、1か月あたりの施設利用料が決まっており、9か月で50万円ほどでした。文字通り桁が違います。幸い私は学振特別研究員に採用されているので、科研費で施設利用料は賄いました。他にも奨学金に応募しましたが、残念ながらどれも取れませんでした。Visiting Postgraduate Researcherのポストへの申請の流れは以下の通りです。
2023年3月:受け入れ希望教員に連絡
受け入れ希望教員にメールでコンタクトをとりました。この時、私の所属大学の研究セミナーで私の報告にコメントしてくださったイギリス革命史の大家の先生に連絡し、受け入れ希望教員につないでもらいました。知らない人からの突然のメールより、大家の先生からの紹介の方が優先度が上がるだろうと思ったからです。受け入れ希望教員に送ったメールには、CV、直近の英語報告のスクリプト、日英それぞれの大学に提出した修士論文の目次(日本の大学に提出したものは英語訳しました)、博論構想(目次)、リーズでの研究計画を添付しました。
4日後に返信が来て、受け入れを快諾していただきました。2024/25のVisiting Postgraduate Researcherの枠に空きがあるか確かめておくと言ってくれました。何回もfollowing upメールを送ったり、自分を売り込まなければならないと思って早めにメールを送りましたが、あまりにスムーズに快諾していただき、このあとはちょくちょくメールをするだけで、やりとりはほとんどありませんでした。
2024年3月末:ポストに応募
Visiting Postgraduate Researcherのポストに応募しました。応募のプロセスは博士課程に応募するものと基本的に同じでした。この時困ったのは、所属大学の修了予定年が記載されている書類を提出しなければならなかったことです。他の大学に在籍し、リーズでの滞在が終わったあと必ず帰ることが前提のため必要なのだと思いますが、私の所属大学は、博士課程1年目の在学証明には修了予定年が記載されません。リーズ大学に問い合わせると、公式のフォーマットでなくても、大学事務が作ったものであればよいと言われました。そこで私の方でフォーマットを作り、指導教員を通して教務に特製の在学証明を作ってもらいました。
2024年6月末:結果が来ず、受け入れ希望教員に連絡
応募から2か月以内に結果がでるはずなのに音沙汰がなかったので、受け入れ希望教員にどうなってるか知らないかを問い合わせました。結論としては、受け入れ教員が私と面談をしなければならなかったのに、そのメールを見落としていて審査が止まっていました(笑)。すぐに面談をセットアップし、これまでの研究やリーズでやりたいこと、文書館調査の計画などを話しました。受け入れ教員が最初に「面談ではなくおしゃべりのような気軽な雰囲気で」と言っていたように和やかに進み「審査が進むよう見張っておくから!」と言われました(笑)。
7月下旬:offer letter 1通目
offer letterが来ました。しかしここで問題が。私は結婚を機に改姓し、大学では旧姓利用をしています。応募の段階でsurnameに戸籍姓を、another nameに旧姓を書き、事情を説明してoffer letterは旧姓か、両姓併記でだしてほしいと備考に書きましたが、発行されたoffer letterには戸籍姓のみが記載されていました。リーズでの研究活動は旧姓で行いたかったので、再度日本の事情を説明し、旧姓か両性併記で出してもらえないか交渉しました。問題は、パスポートの印字は旧姓併記でも、中のICチップは戸籍姓のみというところでした。ビザの発給にも関わるので慎重に対応すると言われました。
8月中旬:offer letter 2通目
パスポートの印字通り「名前 戸籍姓 旧姓」のoffer letterが届きました。ビザ申請は戸籍姓で行い、問題なく発給されました。旧姓使用の問題がどのように対応されるかは国や大学、機関や企業によって全く異なっていて、旧姓使用でトラブルになった方々のお話も聞いていたので、私は幸運だったと思います。
ビザ申請
私のStudent Visa
8月末、英訳した通帳など必要な書類をそろえてビザ申請をしました。9月24日が渡航予定だったので通常サービスでは心もとなく、優先サービスを使いました。以前ビザを取得した時に比べて何もかもが値上がりしており驚愕しました。今後は海外学振やイギリスでポストを得るかしない限り、自力での長期滞在はビザ申請の時点で厳しいなと思いました。
1週間ほどでビザが下りたとの連絡が来て、郵送サービスを購入していたので自宅にパスポートが帰ってきました。
夫のDependent Visa
夫も10月末に渡英してくる予定です。私のビザが帰ってきたあと、夫のDependent Visaの申請を始めました。Student Visaの場合は、博士課程レベルでフルタイムで留学するのであれば、その人の配偶者、未婚のパートナー、子供が申請できるビザです。申請からさかのぼって2年間同居していない場合、なぜ同居していなかったのか、結婚前後も恋愛関係であるかを証明しなければなりませんでした。私の在学証明と夫の就労証明でずっと遠距離だったことを示し、これまで二人で撮った写真や結婚式前後の写真などをアップロードする予定です。真面目に申請する方としては恥ずかしいですが、偽装結婚して入国する不法移民対策なのだろうと思います。現在就労証明の英訳待ちです。
eSIM
前回の滞在では物理SIMカードを使いましたが、今回はeSIMを渡英直前に購入し、アクティベートしていきました。前回の滞在でも使っていたgiffgaffと契約し、月£10で20ギガ使え、ヨーロッパでもモバイルデータ通信ができるプランを選びました。国際電話ができないのだけがネックなものの、家族や友人とはライン通話があるので基本的には満足しています。成田からの飛行機が遅れるトラブルで乗り継ぎが上手くいかず急遽オランダに1泊しましたが、そこでローミングが自由に使えたのがとても助かりました。
部屋探し
渡航前
以前イギリスに留学した時は学生寮に入れましたが、今回は授業料を払っていないため学生寮に入る資格がありませんでした。そこで、入寮できない人はまずここに連絡を取るようにと大学が推奨していた不動産エージェントにメールを送りました。9月初旬にメールを送りましたが返信がなかなか来ませんでした。そのため、Student Accomodationを斡旋している民間のエージェントにも問い合わせを送りましたが、入居者全員が学生でないとだめだと言われました。
その後、rightmoveやzoopla、spareroomなどのサイトでよさそうな物件に問い合わせを送りました。1 bedroom(いわゆる1LDK)で、治安や綺麗さを考慮すると£850~が相場のようでした。これに先立って、スカイプでイギリスの電話番号を購入しました。かなり安く使うことができるので、とてもおすすめです。実際結構電話はかかってきました。購入しておいてよかったと思います。
その後オンラインで契約まですべて完了できる物件のエージェントとやりとりをして決まりかけたのですが、イギリスで物件探しをした先輩やその先輩のお友達に、必ず内見をするべきと強くアドバイスされたので、内見をしてから決めたいと先方に送りました。先方からは「渡英前になったら連絡してくれ。その時に物件が空いてたら内見を設定しよう」と言われました。安いホテルを9/25~10/1の1週間予約しました。このとき、決まりかけたエージェントに送るために、私と夫の通帳や給与明細などの英訳を依頼していました。
また、別の先輩研究者からエイブルのロンドン支店を紹介してもらいました。ロンドンだけでなく幅広くイギリスの物件探しを手伝ってくれます。してもらえることは基本的に私が自分でやっていたことと同じで、rightroomなどの物件サイトでこちらの条件に合う部屋に問い合わせを送り、内見の予約をしてくれます。ロンドン以外では£100(たしか+vat)を支払えば代わりに内見にも行ってくれます。ただ手数料がかなり高く、エイブル経由で成約した場合は家賃1か月分+vatの支払が必要です。現地の不動産エージェントとのやりとりに自信がなかったり、渡英前に日本人から見て住めるところを確実に見つけたかったり、お金に余裕がある方にはお勧めです。
渡航後
渡航前に問い合わせていた物件で残っていたところが2つあったので、25日にリーズに到着した翌日に内見に行きました。どちらも£700台と安めのところです。一つは大学まで徒歩10分と立地は良かったのですが設備や家具が古く、備え付けのマットレスがかなり小さくて、日本人女性の平均身長に満たない私でもまっすぐに寝れば足がでるくらいのサイズでした。
もう一つは大学までバスで20分ほどの郊外にあります。リーズで最も治安が良い場所で、ウェイトローズやアルディも近くにあるため第一候補でした。しかし内見してみると家具がやや古いのは仕方ないにしても、寝室のカビ臭さがひどかったです。イギリスは家の構造や気候から、どこに住んでもある程度はカビと戦わなければならないようですが、入る前からこれは不安だなと思いました。
別のある先輩はカビがひどい部屋に入居し、コーヒー豆やマフラーがかびてしまったと言っていました。除湿器を使うようになってからはかなりマシだと言っていましたが、どこまで除湿器で対応できるのかも未知数だったので、見送ることにしました。
候補だった安い2物件が不発に終わり、再びrighmoveなどで大量の問い合わせを送りました。最終的に送った問い合わせは、渡航前と合わせて約60件です。部屋が決まる未来が見えなさ過ぎて、少しでも早めにとった方が安いだろうと、別のホテルをさらに1週間予約しました。また、イギリスの銀行口座がないと部屋を借りられないので、ホテルの住所を使ってオンラインで口座を作れるRevolutで口座を開きました。
新たに問い合わせを送ったエージェントの一つから27日の朝に電話があり、今日11時からなら内見を案内できると言われ行きました。部屋は広く、家具付きですが古さを感じず、設備も申し分なく、カビのにおいも全くせず、窓もイギリスの物件にしては大きく開き、10/1から入居できるとのことでした。£899とやや高めですが、光熱水費やインターネットが家賃に含まれており、カウンシルタックスもバンドAと一番安く、図書館まで徒歩6分、受け入れ教員のオフィスまで徒歩8分と大学に近かったのも良い点でした。内見をしたその足で不動産エージェントのオフィスに行き、もろもろ書類をその場でairdropで提出し、家賃3か月分を前払いして契約しました。新たに予約していたホテルは安さを優先した結果返金不可のところだったので泣く泣くキャンセルし、他の内見の予約もキャンセルしました。10/1に無事入居できました。
部屋を整える
家具付きとはいえいろいろ無いものがあるので、午前中に鍵をもらってから買い物に行きました。Argosでベッド関係一式、大学のコープやポンドランドでボディーソープやシャンプー、リンス、色々な洗剤などの日用品、アマゾンで洗濯物干しと掃除機、タオル掛け、便座カバーなどを購入しました。今日の時点で必要なものはかなりそろってきていて快適です。あとはお掃除グッズをもう少し揃えなければならないなと思っています。
生活
食料は大学のコープや近くのテスコで購入しています。テスコの隣には日本の調味料を置いている中国系スーパーもあり助かっています。
昨日は初めて洗濯もしました。学生寮にいた時は乾燥機もありましたし私が掃除するわけでもないので何も知りませんでしたが、イギリスの硬水でそのまま洗うと、洗濯物が石灰化して灰色になったり、ライムスケールなるものが洗濯機の中にできてしまうとネットで知りました(ライムスケールはシャワーにもできる)。そのため、イギリスでは硬水を柔らかくするためのアイテムを洗濯のたびに投入するそうです。私はポンドランドで見つけたので購入しました。それでも服が灰色になったら、重曹に浸け置きするとよいとのことです。
選択モードもいろいろあります。イギリスで1年かけて理想のモードの組み合わせにたどり着いた日本の方のブログがあったので、その組み合わせを真似してみました。
乾燥機はなく、基本的に部屋干しの文化なので、洗濯ラックも購入しました。一晩でジーンズ以外は綺麗に乾いていました。
研究
昨日ガイダンスがあり、いろいろ設備やシステムが分かってきました。身分は博士課程なので、それ用の話を聞くわけですが、やはりイギリスで博士課程をやりたかったなという気持ちが出てきます。でも、私が持つリソースを考えると、学振に採用され、9か月もイギリスで在外研究ができるというのはこれ以上ない現在地なので、この滞在を最大限有意義に使い、次につなげられるよう頑張りたいと思います。
来週月曜日には受け入れ教員と対面で面談予定です。学生証もそろそろもらえると思うので、図書館にもたくさん行きたいです。大英図書館やノリッジの文書館での調査も楽しみですし、こちらでの報告や論文執筆など、いろいろなことに挑戦していこうと思います!