リーズ大学研究滞在記③-1:生活編
前回のnoteから1か月近くが経ちました。この1か月でまたいろいろあったので書いていきます。③は生活編と史料調査編の2部構成です。まず生活編から。
GP登録とピルの処方
イギリスは、NHSという国民皆保険制度があります。ビザを取って滞在する外国人も加入対象となっており、ビザを申請するときにビザのタイプや滞在期間に応じて保険料を支払います。
日本との違いは、この制度に入っていれば保険診療の病院にどこでもかかれる、というわけではなく、自分が住んでいる近所の病院をGP(かかりつけ医)として登録し、そこにいく必要があります。GPに行けば診療代や検査料は基本的に無料で、処方箋のみ有料です。
しかし、コロナ前から半分機能不全で、予約しても空いているのは2週間後、という状況だったこの制度は、コロナで完全に崩壊したとも言われています。そうでなくとも、少しの風邪や体調不良なら病院に行かずに自力で治すのが基本です。実は私も10月下旬に体調がすぐれず、どこにでも売っている風邪薬LEMSIPを飲んで寝て直しました。
とはいえ、かなり高いお金を保険料として支払いましたし、何かあったときにどこにも行けないのは困ります。さらに、私は生理痛がひどいため4年ほどピルを服用しています。日本では検査した上で診断が下り、保険が効いても3シートで2~3千円するものが、GPからの処方だと検査なしで無料なのです!GP登録が完了したとの通知が来てすぐに処方の手続きを開始しましたが、これまた一筋縄ではいきませんでした。GP登録の流れから、ピルを入手できたところまで順に書いていきます。
GPは住所が決まらないことには登録できません。
新居に引っ越した翌日の10月2日、NHSのウェブサイト上から、近所の病院にGP登録のフォームを提出しました。このとき、5年前の交換留学で登録していたバーミンガムのGPからこちらに移る形で手続きをしました。ここでの問題の一つは、交換留学時は独身だったので、旧姓で登録していたことでしたが、私はそれに気づいていませんでした。
2日後、その病院から「NHSを通してGP登録の希望が来たが、こちらのフォームから再入力してくれ」と送られてきました。そちらには結婚のために夫姓にした戸籍姓を登録しました。ビザなどの書類はすべて戸籍姓で出ているからです。そのフォームに入力して送信すると、自動返信メールが来て「登録に14営業日かかる」と書かれていました。
10月24日、無事に登録できたと、NHSから旧姓宛てにメールが来ました。ここで私はNHSに登録されている名字とGPに登録した名字が一致していないことに気づきます。どうしたものかと思いつつ、この時点で日本から持ってきていたピルのシートは飲み切っていてました。遅くとも次の生理までには新しいシートを入手する必要がありました。NHSがまともに機能していないらしいことやこれまでのイギリスの諸々の対応や連携不足を考えると、なるべく早く動いた方が良いだろうと思い、GP登録完了の通知が来てすぐ、予約を試みました。
ウェブサイトには予約方法として直接来院、電話、メールが載っていたので、まずメールしてみました。するとすぐに返信がきて、電話しろと言われました。電話してピルが必要なことを伝えると、ピルの種類や最後に服薬した日などいくつか質問され、あとから看護師が電話するのでそれに出てくれと言われました。
1~2時間ほどして看護師さんから電話が来ました。再びピルの名前や最後の服薬日などを聞かれました。ホルモンの名前を聞かれて焦りましたが、いつも服用しているピルの名前をグーグルで検索し、出てきた説明をChat GPTに訳してもらって事なきを得ました。看護師さんからは「普段あなたが服用しているものに近いものがあるので、明日身長、体重、血圧を測りに来たらそのまま処方箋を出す」と言われ、同じ内容のSMSも送ってもらいました。
翌日病院に行って問題が2つ発生しました。
1つは予想していた通り二重登録になっている件です。旧姓の登録と戸籍姓の登録が二つできていました。いろいろと質問に答え、NHSナンバーを聞かれて私が唯一知っている、前日送られてきたナンバーを見せるなどしました。これには最終的に4人がかりで対応してくれていて、申し訳ないと謝ると、「あなたが謝ることなんてないよ!」と言ってくれましたがやはり申し訳なさはありました。
もう一つの問題は、なぜか脈拍の数値が1分間に125をたたき出したことです。日本の病院にもよくある、腕を差し込んで加圧されて測る機械でやりました。歩いて病院に到着してそれほど時間が経たないうちに測ったからなのか、緊張していたのか……
ここで測った身長、体重、血圧などは記録されて看護師さんがチェックしています。GP登録について受付で云々やっていると私のスマホに看護師さんから電話がかかってきて「脈拍がやばいので医者にアポイントをねじ込んだから今すぐ待合室に行け」と言われました。それを受付に伝えると「それはこちらも知っているが、この登録を解決しないとどのカルテを使うかで問題が生じるのでこちらの解決が先だ」と言われました。
無事GP登録が解決したようで、今すぐ1階(日本でいう2階)に行って脈拍見てもらってきてと言われました。迷いまくって、他の患者さんに階段を教えてもらってようやくたどり着きました。名前を呼ばれてお医者さんについていき、下着まで脱いでと言われたので片腕だけヒートテックも脱いで血圧や脈拍を測り直しました。すると94。正常範囲ですね。お医者さんに「今後測るときは、病院に着いたら5分くらいじっとしてから測りなさいね」と言われました。すみません。
受付に戻ると、私のことを対応してくれていた人たちはおらず、初めて見る人が座っていました。その人に「複雑なのでうまく説明できるかわからない」と断ったうえで「本来ピルの処方箋をもらうために来たが、まずGP登録で問題があり、そのあと脈拍の数値で問題があった。GP登録は多分解決されて、脈拍も問題がないことが確認できた。今から何をしたらいい?」と聞きました。生年月日と名前を聞かれて、おそらくきちんと登録し直されたカルテを見て、何事かを説明してくれましたが、正直あまり分かりませんでした。
とりあえず今日は処方箋が出せないこと、来週水曜日あたりに電話があることだけ分かりました。それ以上私ができることもなかったので帰宅しました。
その日のあとで電話がかかってきて、GP登録の正式な処理は月曜日を待たなければならず、処方箋は火曜日に出せると思う。もしそれよりも遅れそうになったらまた連絡するとのことでした。
史料調査でロンドンに滞在中だった翌週火曜日に、無事にGP登録が完了し、希望の薬局に処方箋を送るとSMSで連絡が来ました。電話をすると言われた水曜日には何も連絡がなく、翌日にはGPとのアポイントメントはどうでしたか?とアンケートが来ましたが、なんせ電話がなかったので無視しました。
処方箋を送ったと言われた2週間後に薬局に行き、名前と処方箋が届いているはずだと伝えると、30分後にまた来てくれと言われました。改めて出直し、無事ピルを入手しました。無料で、6か月分もらえました。日本では保険適用のピルは一度に3か月分しかもらえないので便利です。今後シートを飲み切って新しいものが欲しい場合はいつでもきていいとのことでした。
薬局に行った2日後に処方箋が準備出来たよ、とSMSでメッセージが来ました。もしかしたら本来はこの連絡を待つ必要があったのかもしれません。
Preplyで日本語講師を始める
オンラインで日本語講師を始めました。資格不要で、自分で紹介動画と紹介文を書いて、自分でレッスン料も設定します。これに関してはまた別のnoteで書こうと思うのでさらっとだけ。始めて約1か月で生徒さんもついてくれて、2万円ほど稼ぎました。教材を作るのが大変ですが、一度作れば使いまわせますし、マニュアルや引き継ぎなどを作るのは割と好きなので、良い息抜きになっています。
何より嬉しいのは、自分の英語力の上達を感じられることです。私が今持っている生徒さんはほとんど全く日本語がわからない初心者の方が多いので英語で説明することになります。例えば「私は日本人です」の「は」や「です」の意味や使われ方を英語で説明するわけですが、生徒さんが理解してくれるととても嬉しいです。
普段英語を使う場面と言えば研究関係ばかりで、もっともっと、まだまだ足りないと思うことの方が圧倒的に多いですが、このような経験ができると自信になります。特に、イギリス人の生徒さんに何か質問があるか聞いた時に「No, it perfectly makes sense」と言ってくれるとよっしゃ!という気持ちになります。(笑) みなさんとても熱心な生徒さんなので、少しでも日本語が身に着いてもらえると良いなと思います。8年間の塾講師経験を最大限に活かして頑張ります!
夫の到着と不完全燃焼のロンドン観光
夫が来ました!11月1日に無事渡英してきて、ヒースローからセント・パンクラスにチューブで到着した夫と落ち合いました。
到着当日は私はまだ史料調査が残っていたので、二人でホテルに荷物を預けて解散しました。夕食はホテルの近所を散歩していた夫が見つけたパブで食べました。夫が「ほんまにイギリスのご飯か……?」と言うくらい美味しかったです。ちなみに泊まったのはこちらです。
翌日は午前中はバッキンガム宮殿に観光に行き、お昼ご飯をSilver Crossで食べました。ここまでは良かったのですが、夫が少し疲れを見せ始めました。彼はもともと疲れが体調に出やすいうえ、23時間フライトもあり、かなり疲れがたまっていたところを、せっかくロンドンにいるからと体調をおして観光していたのだと、今では思います。
本人の大丈夫という言葉のまま、予定通りセント・ポール大聖堂を見に行きました。セント・ポール大聖堂は私も初めてで、荘厳さと壮麗さに圧倒されました。セント・ポールは落雷やバイキングによる焼き討ち、火事などで何度もその姿を変えています。今の姿は17世紀のロンドン大火で焼失したあとに再建されたものです。
夫も感動しておりたくさん写真を撮っていましたが、体調が辛そうになってきていたので早めに切り上げ、宿に戻りました。ホテルの向かいのコープで晩御飯と薬を買いました。
翌日はロンドンに留学している夫の親戚と3人で会う予定でしたが、夫は完全にダウンしていたので私だけでお会いしました。集合時間よりも少し早めについたので、ナショナル・ポートレート・ギャラリーのテューダー朝の部屋だけ行きました。すっかり見慣れた顔ぶれですが、やはり本物の肖像画を見るとワクワクするしテンションも上がります。と同時に、馴染み深い面々に囲まれて落ち着いた気持ちにもなりました。
夫はその後少しずつ体調はマシになりましたが、とても観光できる元気はなく、かなりの不完全燃焼感を抱えてリーズ行きの電車に乗りました。リーズに帰ってからも数日心身共に不調が続いていましたが、2~3日するとすっかり回復したようで安心しました。前出のLEMSIPに加え、夫が飲んでいた薬は以下の2種類です。
ヨーク観光とBonfire Night
イギリスの11月と言えばBonfire Nightです。1605年11月5日、当時の国王ジェームズ1世の爆殺計画が発覚しました。計画のなかで火薬管理を担っていたガイ・フォークスの逮捕を祝って、毎年11月5日には積み上げた木材や藁の上にガイ・フォークスに見立てた人形を置いて燃やすBonfireが行われます。Bonfireを行う広場には移動遊園地がきて、屋台が立ち並び、花火があがることもある一大イベントです。首謀者でもないのに400年間こすり続けられるガイ・フォークスを少し気の毒にも思いますが。
その話を知った夫が興味を持ったのですが、直前過ぎたこともあり11月5日当日のイベントは軒並みチケットが売り切れていました。幸い今年の11月5日は平日だったこともあり、土日に開催されるイベントもいくつか見つかりました。いろいろ探していると隣町のヨークで開催されることが分かったので、行くことになりました。
ヨークは非常に歴史が古い街です。イングランドの北半分を管轄するヨーク大主教もおり、宗教的にも重要な街です。夫はたまたま道中通りかかったShambles Marketという市に夢中になっていました。可愛らしい小物からお菓子、野菜までいろんなものが売られていました。あまりにも可愛すぎたのでまた近々行く予定です。
そのあとヨークミンスターに行きました。ヨークミンスターはチケットを買うとその後1年間何度でも入れるのがとても嬉しいシステムです。
宗教改革以前からある教会建築は、もともと聖人像が置かれてたのかな?と思える台座やくぼみを見るのがとてつもなく好きです。
ヨークミンスターは高い塔があり、1日に何回か登るツアーをやっていて、入場チケットとは別にツアーチケットを買えば参加できます。登れば街を一望できます。今回は夕方に行ったため、ラストのツアーを逃しました。ここも次回リベンジしたいと思っています。
その後Bonfire Nightの会場へ。移動遊園地と大音量EDM、ピザやハンバーガー、ホットドックやおもちゃの屋台が並び、家族連れで賑わっていました。ベビーカーを押しているカップルも多かったです。
そして始まったBonfire。じわじわと人並みをかき分けて前に進むことができ、ついに最前線まで辿り着きました。少し前まで霧雨が降っていて寒かったのですが、燃え盛る炎のパワーで暖かかったです。
もう一つの目玉、花火も始まりました。司会との連携がうまく行っていなかったようで、カウントダウンを2回したものの花火が上がらず、3回目のカウントダウンでようやく上がりました。
夫はイギリスの文化を感じられてとても楽しかったようで、私も嬉しかったです。来月のヨーク再訪も楽しみです。
リーズに帰って
リーズの王立武器庫博物館に行きました。目当てのヘンリ8世のトリッキーな兜はルーブル美術館に貸出中でみられず残念でした。
今週はお天気がいい日が3日ほど続き心も明るくなりました。念の為ビタミンDサプリも飲んでいますが、やはり日光はいいですね!
生活編はここまでです。
かなり盛りだくさんの1ヶ月でした!