
Cinco De Mayoなのでメキシコに思いを馳せる
5月5日は、日本では端午の節句、こどもの日であり、最近では #午後の紅茶の日 でもあるらしい。
が、この日は世界では「Cinco De Mayo」というイベントの方が有名であると思われる。Cinco De Mayoは、スペイン語で5月5日のこと。1862年5月5日にメキシコのプエブラ州がフランス軍を撃退したことが由来のイベントで、特に祝日ではないが、主にアメリカなどで「メキシコ料理を食べながらマルガリータやテキーラを飲んで陽気に過ごす日」としてイベント化している。(メキシコより他国の方が盛り上がってるらしい。)
私も、柏餅は苦手だがメキシコ料理は大好きなので、今ナチョスとマルガリータ片手に陽気にこれを書いている。アミーゴ!
さて、そんなCinco De Mayoなので、今日はメキシコとの思い出を語ろうと思う。テキーラ!オレ!
私はかつて、フロリダのディズニーワールドでキャストをしていた。そのフロリダにはディズニー以外にも様々なテーマパークや美しいビーチが多数あり、世界中から多くの観光客が訪れる。特に、サマーバケーションの時期はゲストの80%が南米なんじゃないかと思うくらい、多くのメキシコ人やブラジル人がやってくる。
ブラジル人たちは頑張って英語を話そうとするが、メキシコ人は厄介だ。日本でいう英語や中国語のように、アメリカでは必ず英語と合わせてスペイン語表記が付いているため、どこにいってもスペイン語が通じると勘違いしているゲストが多いのだ。何が何でもスペイン語を貫き通すし、態度そのものも世界標準レベルと比較すると横柄な部類に入る国民性だった。
(そのため、夏の時期のキャストたちはスペイン語を聞くだけで目つきが変わる事もしばしばだ。「I don't understand your language!!!」とゲストに向かってブチギレているキャストも続出する。)
しかし、人を癒す力も、逆に傷つける力もある最大の魔法(←ダンブルドアより)「言語」に魅了されていた私は、そこでスペイン語の勉強をはじめた。
幸いにも、当時の私のディズニー寮ルームメイトは日本アニメオタクなメキシコ人だったし、毎日パーク中がメキシコ人で溢れかえっているのだから、四六時中練習ができた。本屋さんでテキストを買い、家でも職場でも、覚えたものを片っ端から使い、聞き取りを通して新たな表現方法を吸収していった。
言語というのは不思議なもので、わからない内は不快でしかない音も、意味がわかるようになった瞬間に不快さが消えるのだ。さらに、同じ言葉を使う人とは心の距離がグッと縮まるもので、こちらが一生懸命スペイン語で伝えようとすると、横柄な態度は一変して急に優しくて温かくて人懐っこい人柄に変わるのだ。人懐っこすぎて多くのメキシコ人たちに数分おきに頬にキスされるので(これも文化だ)、もう夏の間は頬にファンデーションを塗るのをやめたほどだった。
こうしていつの間にかスペイン語を操れるようになった私の名札には、「日本語」のタグの横に「Espanol」が追加された。
ここ数年、東京ディズニーリゾートも外国人ゲストの割合が増え、明らかに外国人観光客向けのマーチャンダイズだろうと思う商品も増えている中、中国人観光客がフロリダでいうメキシコ人観光客のポジションになってしまっている。例えば先日、ショーやパレードを待つ間にキャストさんからこのような声掛けをされたことがあった。「最近は中国のお客様が増えていて、割り込みされることがあるのでなるべく他のお客様との感覚は開けずにご覧ください。」と。これはショックだった。割り込みできるほど大きくスペースを開けている方が他者の気持ちを考えられないマナー違反人間なのに、それを差別的発言で解消しようとしたのだ。もし私が日本語のわかる中国人だったら、その日のホルモンバランスによって酷く落ち込んで涙目になりながら帰宅してツイートするか、怒り狂ってキャストの名札を確認してゲストサービスに電話をかけてからツイッターとインスタとFacebookにハッシュタグ付けまくりでキャストの写真と共に投稿するだろう。差別がどれほど苦しいか、日本には知らない人が多すぎる。
確かに、外国人たちは日本人的に理解に苦しむ行動も多いが、それはこちらが注意してあげればいい。注意して聞かなかった場合のみ、周囲のスタッフに頼ればいい。(大抵の場合、感じよく謝って退散していく。ここで退散しないのは逆に日本人のおばさんたちな気がする。)
グローバル化する世界で、相手を理解しようとする姿勢はより重要になる。その国の言葉を聞いただけで虫唾が走るほど嫌いな国でさえ、ひとたび歩み寄ってしまえば一気に好きになれるのだ。今では縁も所縁もないメキシコの記念日を毎年勝手に祝い出す始末だ。(ただマルガリータが飲みたいだけ、というのもある。)
優しい心で世界と向き合って行きたい。と同時にこの成功体験をくれたメキシコ人たちに感謝したい。
Happy Cinco De Mayo.
オレ!!!