#1 雨
こうなることはわかっていた。
昨日の夜コンロの鍋に残したままのスープが今朝には食べられなくなってしまうことも、お気に入りのオフホワイトのブラウスが母がくれた赤いハンカチと一緒に洗ったせいで斑なピンクに染まってしまうことも、天気予報の通りに午後2時から雨が降り開けっ放しの窓のサッシが濡れてしまうことも、全部わかっていた。
たった1つ、あなたの気持ち以外は。
きっとあなたは知らない。
私の失くした片方のピアスの行方も、飼い犬のお気に入りの昼寝場所も、あの子の隠した涙の意味も。
何も知らないのよ。
きなこ
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