創造の中に生き、創造の中に死ぬこと。
曲を作るということ〜アルバム制作日記〜
アルバムのジャケットの制作が終わった。三枚作った。
やりきることやはり、できることは全てやった。
なんだかとてつもない疲労感とやり切ったという達成感が体の内側から
破裂するように駆け巡る。
ハイになって半分狂ってしまっている。
あとはやるだけだ。そう中身の曲を完成させることだ。
曲を作ることというテーマでやって入るが
アルバムのジャケットを作っているではないか。
と自分で自分にツッコミが入ったが、それは全くもって的外れな指摘だ。
アルバムによって曲が方向付けられるからだ。
アルバムは王様で、あり奴隷だ。
アルバムの名前とジャケットと曲の世界観は一致していないといけない。
ゆえに、もう曲たちはアルバムジャケットの世界観から逃れられない。
今までの曲の迷いは、圧倒的な優先順位としてアルバムの世界観と調和するかどうか
ということが優先されるようになる。
このような意味で、アルバム、ジャケットは王様であるが
アルバム、ジャケットは同時に曲たちがしっかりしていないと
名前だけになってしまってハリボテになってしまう。
中身が追いついていないと、調和を取れない。そのような意味で
数学と化学の関係
キリストと信者の関係
王様と奴隷の関係に似ている。
その全てが最高純度でありながら、常に最高純度たらしめてくれるものの存在を必要とする。
よってアルバムを、ジャケットと世界観を作ることはすでに
曲たちの最も根本的な色付けを行う。その意味において、これもまた作曲作業なのだ。
今回制作期間は、ざっと200時間ほど。
今までのその全てを、自分の人生、自分とは何かのその答えを全て注ぎ込んだ作品だ。
アルバムのジャケット制作で、かなりお金もかかった。驚いた。その制作のためなら一切の妥協をしない自分に驚いた。
全く気にならなかった。まるで無限に金が湧いてくるような人間になっているような感覚だった。
0の数は全く気にならなかった。それよりもこれを使ってどんな作品になるかということだけがイメージの世界を支配していた。
もうこの作品に自分は勝てない。完全にこの自分の歴史と尊厳そして自分という人間を体現している。
熱くなれた情熱になった。注いだんじゃない。わたしそのものが情熱だったんだ。
この時の感覚は嬉しいとかではなく、得体の知れない充実感だ。生きているというやつだ。他の誰でもない自分が。そしてこのことを書いている今、私の目には涙が流れた。
涙はどこからやってくるのか、心のどこからだろう。なんの涙なのだろう。わからない。
でも、何かが何かを待っていた涙だ。
こんな感覚を感じられることが私にとっての最高の喜びだ。
同じ言葉では言い表せない、自分の生きている意味のようなものだ。
創造の中に生きて、創造の中で死にたい。
それだけでいい。その充実感を越すものなど何もないかも知れない。
今回は絵を描いたり、紙を切ったり、いろんなことをした。
今までは全く考えもつかないような方法だ。しかし、もうそれをする時期に来ていたんだと思う。
多くの人と出会い、核心的に今回のアルバムジャケットの制作に影響を与えた切絵作家の方がいるが彼女と出会わなかったら、今回のジャケットは作れなかった。
ピカソに出会わなかったら無理だった。
この時代に生まれないと無理だった。
そう今回の創造は、いやその創造とは全て規制より確率の低い、その運命によって宿命づけられている。
ただ、それを体現する人間がどれだけそのことに自覚的であるかということが重要なのだ。
私の場合今回ほど自覚的であった作品はないだろう。
アルバムジャケットを作る日々の中で、たくさんのことに気づいた。
そしてたくさんのものを失った。
失ったものが多い分たくさんのことを得ることができた。
失ったものは、失ったものとして形を変えて私に帰ってくる。
結果人は失うことはできない。ただその存在の色が変わるだけだ。
もし、私たちが何かを完全に失うことができるのならば、私たちは完全に何かを得ることもできないだろう。
その何かとはすなわち自分に他ならない。
その全てがこの私の中に詰まっている。決して人は一人にもなれないし、自分だけなどになれない。
過去、他人、もの、ビル、情報、感情、愛、優しさ、罪、恐怖、ひらめき、思い出
その全てが私の中に存在している。決してどこかに消えることはない。
私の中には常にその全てが存在している。
知らないことや出会わなかったものは存在していないが’、一度触れたものは存在している。
作品を作りながらそのようなことを思った。し、気づいた。そう私たち一人一人はそのような意味で、歴史の体現者であれることができる。
そして体現しようと過去とつながりを持つ中で、自分の尊厳が浮き上がってくるのであって
外からもらうものではない。
生きよ。人間。そしてお前という人間の歴史の体現者になれ!
現場からは以上です。
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