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お手持ちのオーディオI/FでApple Musicのロスレスハイレゾを満喫しよう!Mac編

Apple Musicがロスレスハイレゾに対応して早1年。
存在は知っているけど、量子化ビット数とかサンプリング周波数とかなんとなく難しそうで未体験の人も少なくないのではないでしょうか。
このnoteを読むような方は、だいたい音楽制作に興味があって、だいたいオーディオI/FとMacをお持ちかと思います。
Apple Musicでロスレスハイレゾを楽しむのはその2つがあれば十分なんです!追加の出費なし、たいして難しい設定もなし。

Windows?ごめんなさい…
(iOS/Androidでもけっこうお手軽にロスレスハイレゾできますので後日記事書きます)


実践編 : Macでロスレスハイレゾを再生

お手持ちのオーディオI/Fを確認しよう

ロスレスハイレゾに必須なのは量子化ビット数24bit・サンプリング周波数96kHz以上に対応するオーディオI/Fです。
ご安心ください、現在10000円以上で売られている・使われている、一般的な箱型のオーディオI/Fは、ほとんどが24bit/96kHz以上に対応しています。
なので音楽制作をしている人はロスレスハイレゾを今すぐに楽しめる確率が非常に高いです。
Sterinberg, Focusrite, Roland, Native Instruments, Presonus, Zoom, TASCAM…といった主要メーカーが過去5年以内に発売したものはすべて対応しているはずです。
behringerでもUMC HDシリーズであれば対応しています。

一般的な箱型のオーディオI/F

対応していないものが多いのは、
・超コンパクト系(behringer UCA202など 「USBオーディオアダプター」と呼ばれるもの)
・ギター用小型オーディオI/F
・USBマイクのオーディオ出力機能
・廉価ブランドの最廉価モデル(M-Audio M-Track, behringer UMC202,UM2など)
・ミキサー内蔵のオーディオI/F
・DJコン内蔵のオーディオI/F
あたりでしょうか。
古くてもRoland UA-25EXのように24bit/96kHz対応のモデルはありますので、スペックをあらためて調べてみましょう。

また、Bluetooth接続機器はロスレスハイレゾに対応していません。Appleからも公式に案内があります。AirPods Maxであっても対応していません!

厳密には、Bluetooth機器側がaptXに対応していれば、Macに高度な設定を施すことでロスレス「に近い」音質で聴くことも可能なようです。Apple製品はaptX非対応です。不可逆圧縮のためロスレスということはできませんが…

「ハイレゾ対応」のイヤフォン・ヘッドフォン・スピーカーは必要?

「ハイレゾ対応」でなくて大丈夫です。
イヤフォン・ヘッドフォン・スピーカーは、有線接続であればどんなに古くてもハイレゾを再生できます。
ハイレゾ対応のスペック的な可否というのは実はオーディオI/FなどのDAC(デジタル-アナログ変換器)にのみ適用される話です。
イヤフォン・ヘッドフォンの「ハイレゾ対応」というのは「ハイレゾを再生に見合うような高品質ですよ」という売り文句でしかありません。再生可能帯域とかもあまり関係ないです。
現に24bit/192kHzの現場で使われるモニターヘッドフォンやモニタースピーカーに「ハイレゾ対応」なんて冠されてませんし…

(ここから読んで)Apple Musicをロスレスハイレゾ設定しよう

ミュージックアプリ→環境設定→再生タブ→✅ロスレスオーディオ→ストリーミング・ダウンロードともにハイレゾロスレスに設定
以上です。解説するまでもないですね。ここはこの記事の主題ではないので…
可逆圧縮の圧縮率はいいとこ70%程度。同時間の動画程度のファイルサイズになるのでテザリング接続の人は通信量に気をつけてください。

オーディオI/Fを適切に設定しよう(ここが一番大事)

Macの場合はCore Audioという統一規格があるため、いま使われているようなUSB接続のオーディオI/Fであればドライバ不要で接続すればすぐに使えるようになっています。
(ThunderboltやFireWireなど特殊なモデルはドライバ必要なことが多い)
オーディオI/Fが24bit/96kHz(192kHz)対応なのを確認した、Macに繋いだ、さあロスレスハイレゾを聴くぞ!…という前にちょっと確認しておく事項があります。そしてこの記事の本題でもあります。

Macの「Audio MIDI設定」というアプリを起動しましょう。デフォルト状態ではLaunchpadの「その他」に入っています。見当たらなければアプリケーションフォルダから。

もし見当たらなければウィンドウ→オーディオ装置を表示

名前通り、Macに接続されたオーディオデバイス・MIDIデバイスの管理を行うアプリです。ここでオーディオI/Fが動作するサンプリング周波数を確認・切り替えする必要があります。
せっかくの24bit/192kHz音源で24bit/192kHz対応オーディオI/Fだとしても、動作モードが44.1kHzではまったく意味がないので…

接続したオーディオI/Fを選択し、「出力」タブへ切り替え、フォーマットを96000Hz(=96kHz)に設定しましょう。192kHz対応モデルなら192000Hzを選んでもOKです。これでハイレゾロスレス音源を聴く準備完了です!

ちなみにこの場合、16bitの音源は24bitに、44.1kHz,48kHz,88.2kHzの音源は96kHzにアップサンプリングされます。Macとミュージックアプリでは音源に合わせて自動で動作周波数を切り替える機能はありません。
この変換処理による影響が気になるところですが、96kHz動作であれば大して気にならないというのがぼくの感想です。CDプレイヤーなどオーディオI/F以外のオーディオ再生機器ではアップサンプリングが常套手段と化していますし…


おすすめロスレスハイレゾ音源の紹介

せっかくなので、Apple Musicのロスレスハイレゾで音質を実感しやすいであろう音源をいくつか貼っておきます。
ちなみにAppleは24bit/48kHzをハイレゾ扱いしていません。24bit/96kHz以上がハイレゾ扱いです。超巨大企業の偏屈なこだわりが垣間見えてちょっと良いですね。24/48と24/96の差という点で言わんとすることはなんとなくわかります。

24bit/96kHz。生楽器の録音やサウンドエンジニアリングに凝った作品はやはり聴き応えがあります。非可逆圧縮音源では聴き取れなかったボーカルの歪みっぽさのニュアンスが最高!


24bit/96kHz。衝撃的なサウンドデザインでリリース時に話題を席巻したのも記憶に新しいですね。ボーカルの質感はもちろん、モジュラーシンセサイズによるクセの強い音色(おんしょく)や突き詰められたサウンドの配置を楽しむことができます。
(ハイレゾは楽器録音だけでなくDAW内制作やシンセサイザーでもとても有効なんです!)


24bit/96kHz。周防パトラのボイス/ボーカルを24bit/96kHzで聴けるだけでも素晴らしすぎるのに、Yunomiの圧巻のトラックもすさまじい鳴り!非可逆圧縮との差がとても目立つ楽曲かもしれません。


24bit/192kHz。ぼくが知る限りDAW内制作の作品で唯一の24bit/192kHzです。
散りばめられた水音のモチーフが鮮やかに再生され、これ以上ないサウンドスケープ体験ができます。聴くだけで耳が綺麗になるような気がします。


24bit/48kHz。この作品は48kHzのちょっと天井低いようなサウンドが似合うかな?と思います。
ロスレスハイレゾ環境であれば、サンプリング周波数設定による表現のちがいや制作側の意図を楽しむこともできますね。


24bit/96kHz。アンビエントやフィールドレコーディング系はハイレゾの恩恵を受けまくりです。圧倒的なサウンド体験で眠りにつきたい…

24bit/96kHz。波音、現代的なサウンド、夏の音!音楽を作ることをテーマとしたオーディオドラマという作品の質感とニュアンスを最大限に楽しめます。バンドリハスタ録りっぽい音のディテールも見事。

おまけ : お堅くてタルい理論と考察

ロスレス(可逆圧縮)って?

ものすごく簡単にいうと「WAVの品質を完全復元できる形でファイルサイズだけ何割か縮めた」音声形式です。対義語はロシー(不可逆圧縮)です。

WAV(AIFF)はデジタル音声データをそのまま手をつけずに保存した非圧縮形式です。
ファイルサイズが大きく、インターネットでの販売やストリーミング配信では微妙に取り回しづらい代物でした。(16bit/44.1kHzのCDフォーマットですら1.441Mbps)

音声ファイル圧縮のやりかたには2種類あります。
・音声の成分には手をつけず、デジタルデータを(完全に復元可能な)数学的に圧縮する → 可逆圧縮 ロスレス ALAC,FLAC
・人間の耳が感じ取りにくい音声の成分を切り捨てる → 不可逆圧縮 ロシー MP3,AAC,Opusなど

現在のSpotifyや非ロスレスハイレゾモードのApple Musicは不可逆圧縮のAACを採用しています。
MP3に比べればだいぶ高音質なものの、それでも元のWAV品質と比べるともっさりする、表現しきれていない、ディテールに欠ける…というのが一般的な感想でしょうか。

ロスレス形式は可逆圧縮、つまり元のWAV品質を完全に復元できます。ALACとFLACの2形式があり、ALACはApple Lossless Audio Codecという正式名称通りにAppleが主導で開発したロスレス形式です。 
サービス開始からはだいぶ遅れてしまったものの、Apple MusicがSpotifyに先駆けてロスレス配信を開始したのも納得ですし、ある程度予測されていたことでした。
ロスレス開始以前からSpotifyやApple Musicを含む主要サブスクサービスはWAV品質での入稿を前提としていたので、サブスクサービス側としてもロスレス配信のハードルはさほど高くなかったと思われます。

ハイレゾって?

ものすごく簡単にいうと「CDフォーマット(16bit/44.1kHz)を上回る音質設定の音源」です。24bit以上か48kHz以上であれば一般的にハイレゾとされます。
WAV品質が大前提となります。なのでロスレスとも密接に結びつきます。

CDフォーマットは40年以上前の技術的限界に基づいた代物です。
デジタル技術と音楽性が飛躍的に進歩し、大容量ストレージや高速回線やロスレス技術やストリーミング配信が出てきても、最終的にリスナーに届ける楽曲はCDフォーマットとするのが業界標準となっていました。いまそれが大きく変動しつつあります。
音楽制作環境は2000年前後にはすでにハイレゾ対応していました。DVDですら24bit/48kHzが標準フォーマットです。

16bit,24bitというのはデジタル化された音声の量子化ビット数です。波形の縦の解像度だと思ってください。
16bitだと65536段階を表現できます。24bitだと16777216段階を表現できます。16bitに比べ256倍の解像度が得られます。ファイルサイズは1.5倍で済みます。上げない理由がないですね。

44.1kHz,48kHzというのはデジタル化された音声のサンプリング周波数です。この先で96kHzとか192kHzとかも出てきます。波形の横の解像度だと思ってください。
44.1kHzだと1秒あたり44100個の点(サンプル)が得られます。点はすべて量子化ビット数で設定した縦の解像度を持っています。
一般的にサンプリング周波数の半分の(デジタルデータではなく音声一般の)周波数までの音を再現できます。(ナイキスト周波数)
44.1kHzのサンプリング周波数は22.05kHzまでの音声を再現できるので、人間の聴覚の上限を考えると十分な数値である…とされてきました。
実際は44.1kHzでも十分ではありません。音楽に必要な高域の丸まりや余分なノイズが人間の耳で判別できるほどに発生します。
クリアな音を保つには最低でも48kHz、シマー音や波音などの超高域を必要とする音楽であれば96kHzは欲しい…というのが最近の制作現場の一般的な考えのように思われ、ぼく個人も強く思います。

ハイレゾロスレスの現況

以前のハイレゾは超有名アルバムのリマスタリングや超大御所アーティストの生演奏…といったようなところでしか目にせず、実質ファングッズの一つのようなものでした。
ロスレスも似たようなもので、ハイレゾ音源販売サイトやBandcampぐらいしか対応していませんでした。
Apple Musicがロスレスのみならずハイレゾにも対応したのは驚きでしたが、そこから1年ちょっと経った現在、新譜リリースの半数近くがハイレゾ(=非CDフォーマット)になっているように見受けられます。
なにせ音楽制作現場はとっくにハイレゾ化していましたからね。個人制作であってもDAWのプロジェクト設定を変えるだけでハイレゾ化できます。
みんな少しでも自分の制作環境に近い品質で聴いてもらいたいのでしょう。さらにはハイレゾの広いキャンバスを前提としたサウンドメイクの動きも興りはじめていて、サブスクで加速した音楽制作の洗練がより一層引き上げられる予感があります。
いい時代だ。


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K/Inada
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