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お尻が拭けない
講演を終わらせて秋田から帰宅した。プロペラ機はなにかと疲れる。文句を言ってもしょうがないので従うしかない。伊丹空港から秋田空港へのフライトは乗客がわずか5人。その乗客数で隣にヒトがいる状態を専門用語で「ついてない」と呼ぶのである。全員がのびのびと、まるでチャーター機の如く、過ごすことになった。
一方、帰りは満席で、ただでさえ狭い機内が、まるでえべっさんの福男選びのダッシュの如き状態である。私はいつもどおりに通路側に座り、PCを出した。隣は若い女性。これだけでもなんとなくツイテイルゾという気分になる。とにかくプロペラ機はブロロロロという軽いエンジン音を響かせて秋田空港を飛び立った。
プロペラ機の嫌なところはなんと言ってもトイレである。飛行機のサイズからすれば致し方ないことではあるが、あまりにも狭い。機内に一か所しかないのだからもう少しなんとかならぬかと思うほど狭い。
狭いトイレ。あそこに親子で入っていくのを見るに、どうやってコトをお済ませになるんだろうと考え、ついついPCを叩く手が止まる。子どもが座るだろ。親が(男性が小便をするような姿勢で)子どもの前に立つだろ。ここまでは判る。問題はそのあとだ。
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済ませたあと、つまり要するにナンだ、紙をからからと引っ張り出したあとに、然るべきところを拭かねばならないじゃないか。が、親が邪魔になって拭くに拭けないのではあるまいか。というより、拭くために親が一緒に入っているのじゃないのか? だとすれば、子どもは立たねばならないよな。しかし、立つと二人が向かい合った状態になってしまい、拭けないのではないか。
聞きたい。聞きたいが、聞いては完全に変態だ。いや、そりゃアンタもともと変態じゃないかと言われりゃそうなのだが、そういう意味で変態という専門用語を多用しているわけではないのだ。トイレから出てきた親子に「どうやって拭きました?」は完全にアウトだ。炎上という二字熟語が頭上でちらちらと舞い踊る。
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ついでに言うなら、経験者なら誰でも頷いてくれると思うが、プロペラ機のトイレ、大きいのをしたあとに自分で拭くのも相当な努力を要する。拭くためには前傾姿勢を取らねばならない(よなぁ?)はずだが、そうするとドアにゴン!と頭が当たる。
えーっと、お尻拭きたいんで、ちょっとドアを開けていいっすか?駄目っすよねぇ?と思いながら、おそらくほぼ全員が呼吸を止めて然るべき場所を拭いているはずだ。身体が硬直してしまっている50歳以上の人間は「あぁ、駄目だ。これはもうあきらめて、到着してから空港でゆっくりとウォシュレットで洗おう」と、これまたおそらくほぼ全員が思って断念しているはずなのだ。
ANAよ、頼むからプロペラ機を、あのトイレを、なんとかしてもらえんだろうか。