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ひと夏の経験

 夏のあいだアルバイトをした。
文句言わずによく働くと、あちこちで評判のわたしだが、行きはじめて2日でほとほと嫌になり、今日こそ辞めよう、明日は辞めようと、辞めることを目標にがんばった。偉いぞわたし。
 なにが嫌かって、みなさんとてもイジワルなのだ。
 わからないことを質問すると、
「自分で考えて」
と言われた。判断する情報がない状態から、考えて何かがわかることはない。だから聞いてるんだけど。
 それから、
「何回言ったらわかるの」
口頭説明でメモとって、さあ実際にやってみようとなったときに言われた。だから「いまのところ2回ですね」と言おうかと思ったがやめた。別の時、1回目の説明のときに「何回言ったらわかるの」と言われたときは異世界を感じた。
 あと、
「普通にやってくれたらいいから」
知らんがな。普通って誰の普通?どこの国の普通?何時代の普通?
 そして結果がご自分のイメージ通りでないと、
「あんなんじゃダメぜんぜんだめ」
どんなんだとダメじゃないかの説明はない。
 それがひとりではなくて、職場全体の空気がそんな感じ。中にはごく少数、親切な人や優しい人もいたけれど、最初は親切だと思った人もしばしば機嫌が悪くなる。いきなりヒステリックになる。すれ違って挨拶しても返事しない。質問されて即答しないとキレる。びっくりするほどよくキレる。
 万能スライサーとか包丁ならいいのに。
「お腹が空くと不機嫌になって」
「バタバタしててつい」
などとあとから言い訳をする人もいたが、思春期の中学生じゃあるまいし、成人した大人は自制するものだと思う。違うのだ。わかっていて、わざとイジワルをしているのだ。
 そういう人たちを大量に観察した夏だった。

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