35歳、『町田くんの世界』を観る。
なんとなく、中高生が観そうな映画を観に行くのは、ちょっと恥ずかしい。
35歳がひとりで、しかもポップコーンを片手に。
『町田くんの世界』も、初恋がテーマだから、なんとなく自分とは違うかなと思ってた。
だけど、映画館の宣伝でエンドレスに流れる平井堅のテーマ曲が気になって。
平井堅のライブに行ったら、
「47歳、頑張って最大級のかわいいを表現しました! 劇場でぜひ」って言ってて、
そうか、劇場に行こう。みたいに思って。
映画館は想像どおり、お友達同士の高校生とか、若いカップルがわんさか。
キャッキャ、キャッキャしてる中、たまにひとりおじさんを見かけては心の中でご挨拶。
なんとなく気恥ずかしくて、くすぐったくて、でも、観に行ってよかったな。
全力で恋する高校生たちが、なんだか可愛くって、懐かしくって。
そいで思ったのが、恋をするって、ものすごく理不尽で、暴君みたいなもんなんだなーって。
だってさ、あんな誰にでもやさしくて、親切な町田くんでさえ、そうなっちゃうんだから。
初恋は、理性どころか、喜怒哀楽のどれも、自分では制御不能。
「恋をしたら、世界がひっくり返る」
それくらい、人間にとっては、大変なできごと。
どんな命もそうやって、理不尽の上で成り立っている。
だから、「誰にも迷惑をかけたくない」「誰も傷つけたくない」って、
ビビりながら、頭をこんがらがしながら生きていても、残念ながらそれは叶うことがないんだろうな。
そもそも、そうやって生まれてきたんだから。
でもだからこそせめて、
目の前にいる人にはやさしく。
出会ったものには、誠実に。
きっと、人はやさしいと思って接すれば、やさしい反応が返ってくる。
世界は美しいと信じて生きていれば、美しい世界に気づくことができる。
映画を通じてそんな「町田くんの世界」を覗き見ることで、いつのまにか気恥ずかしくて目をそらすようになってしまった、だけど大切なことを思い出した気がする。
そしてそんな大人の気恥ずかしさに
「だよな」
って寄り添ってくれる、あっちゃんのぶっきらぼうなやさしさが、ありがたい。
たまには、「テイストが違うから」とか斜に構えずに、えいっと、飛び込んでみるのも、いいかもしれない。
カップルたちがキャッキャ、キャッキャするなか、ひとりおじさんに心の中でご挨拶をして、映画館をあとにする。
おじさん、どう思ったのかな。
ちょっと、聞いてみたかったな。