物語の面白さの要件とは、感情が揺れ動くことである。ー感情体験から書くことを汲み上げるー
感情を動かす人物を見て、読者が感情を動かすこと。
これが面白さの要件である。
あらゆる種類の「感情」を動かすことができるのが、ぜいたくな作品であると言える。そういうものがつくれたら、とうぜん、喜ばれるだろう。
物語で喚起できる感情の基本は「涙」と「笑い」。
そのあとに
情熱、
サスペンス、
興奮、
愛、
嫌悪、
恐怖、
畏怖、
希望、
絶望、
欲望、
不快感、
魅了、
同情、
肉欲、
怒り、
驚愕
などが続く。
クリエイティヴ脚本術、という本より。
この感情たちのいずれを使うか。どの感情から、どの感情へと移り変わってゆくか。どういう感情を経由し、最終的にどういう感情へと行き着くのか。感情の流れが、物語を通じてどういう曲線を描くのかが、その物語の性質を定める。
シーンには必ず目標となる感情を設定することだ。
登場人物がそのシーンを通じて目標の感情にたどり着けばよし。その感情を読者がありありと追体験できるなら、言うことなしだ。
ある一種類の感情を、徹底的に描くのもひとつのやり方である。
それらはホラーや恋愛ものなど、ジャンルものに多い。ひとは「こういう感情を得たい」と思って作品に接してくる。その欲求をじゅうぶんに満たすことができれば成功だ。ラーメン屋を訪れた客に、うまいラーメンを出す。求められているのは、そういう技術だ。
上にあるだけではなく、自分が日常生活で覚えた感情をメモしていく。
たとえば、
・尊敬できる上司がバシッと決めるかっこよさ
・自分より目下の人間に見下される不愉快
・やりたいこととやるべきことが一致しない焦り
・やりたいことがあるのに時間が取れないもどかしさ
など。
これをできるだけ多く控えておき、それらを元にシーンをくみ上げていく。じぶんの感情が揺れ動いたときに、忘れず、じぶんを見つめてみること。
感情の流れを元に、プロットをくみ上げる。
すると、必然性の高い物語が生まれる。
初心者が陥りがちな失敗とは、感情の流れをおろそかにしてしまい、作者の都合で登場人物を動かしてしまうことだ。物語を貫く背骨とは、感情に他ならない。登場人物は、内的必然性に導かれるように行動を起こし、その軌跡が物語というかたちを描いていく。そういう順序で、ひとつのストーリーは組み上げられていくのだ。こういう道を通して、こういう風景を見せたいから、と感情の流れをねじ曲げると、読者は興ざめしてしまう。
まずは、感情。
その流れをせき止めず、委ねて、その行く末を見守ること。