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血脈
N橋家はいとこ同士の仲がいい。
(父が兄弟の中で一人だけ男であり、みんな嫁いでいるのでN橋姓は私だけなのだが。)
父方のいとこは私以外に6人おり、私が一番下で一番上のいとこのとは10歳も年が離れている。
実家が典型的な田舎の百姓なため、親戚づきあいが多かった。
幼いころは、お盆や正月にみんなで集まっており、一番年下の私は叔父叔母だけでなくいとこたちからもお年玉をもらうなど、いろいろと可愛がってもらった。
一人っ子の私にとって、いとこは離れたところに住む兄や姉のように感じられ、考え方やカルチャーなど多くの影響を受けた。
特に年が10才ほど離れている姉は、地元でもそこそこ有名なギャルだったため多くの過激な思想を植え付けられた。
そんな中でも、
「女なんて化粧すればみんなかわいくなるんだから、今ブスだと思っても優しくしとけよ」
という教えだけは金言だったなと30を過ぎた今になって思う。おかげさまで地元の女子とは未だに仲がいい。加えてスクイズと言われるほど広い私のストライクゾーンもこの言葉が土台となって形成されたのかもしれない。
風俗店で指名しなくとも楽しめるので毎回2000円ほどお得だ。
ギャルのアドバイスはいつだって偉大だ。
さて、そんないとこたちも私とは違いほぼ全員結婚して家庭を築いている。
私が高校生の時に生まれた一番上の娘はもう高校2年生になる。なんなら高校の後輩だ。
そんないとこの娘が今回田植えの手伝いにきてくれた。たしか前回会ったのが中学生になったばかりくらいだったので4.5年ぶりである。
たしかその時はコナンが好きな純朴な少女だった。久しぶりの再開で話も弾み、色々と話をしたのだが、現在はアイドルにハマッているらしい。
なんなら夜行バスでちょこちょこ東京近郊に遊びにきているとのこと。
血は争えないな。俺の子じゃないけど。
「こいつはおそらく私同様、散財の才能がある。」
俺の直感がそう言った。
どうやらおばあちゃん()とお母さん(いとこの奥さん)も心配している様子。
このままではいけない。アイドルはギャンブルに比べれば健全な娯楽だ。
そんなことを思いつつ、気づいたら初めていとこの娘に忠告をした。
「メン地下には手を出すな。」と。
素直な高校2年生は、そうするわ!といい放ち去り際に復唱して帰っていった。
もしかしたら前途有望な若者の人生を救ってしまったのかもしれない。
こうやって一族の教えは続いていくのだろう。
おそらくN橋家は私の代で末代になるだろうが黄金の意思は受け継がれていく。