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企業団体献金の問題点って何!?/弁護士の視点から考える

こんにちは!台東区議会議員 木村さちこです。
今国会での大きなテーマ、政治改革

元々、先の衆院選も、いわゆる自民党裏金問題、すなわち、政治家の政治資金パーティー(例えば、2万円の会費で、ざっくり1万円が会場費・飲食費、1万円が寄附になるといったもの)のノルマ超過分について、
政治資金規正法上の会計処理をせず、政治家がポケットに入れて非課税かつ使途非公開の資金として流用していた問題が発端となり、自民党支持率低下、岸田元首相総裁選不出馬表明、自民党総裁選での舌戦からの衆院解散
という流れで行われたものでした。
2009年以来、15年ぶりの自公過半数割れという衆院選の結果からは、
国民の民意が、政治とカネの問題をなんとかしたい!
という方向で表れたことは、間違いありません。

自民党も、さすがに問題意識をもって、政治資金規正法の改革に乗り出していると思われますが、
今日のニュースでは、自民党案では、
企業団体献金の廃止については言及なし
とのことでした。
これについて今日は、考えてみます。

各政党の企業団体献金に対する立場

この点、企業団体献金の廃止を訴えている政党は・・・今のところ

  • 立憲民主党

  • 日本維新の会

  • 日本共産党

  • れいわ新撰組

があります。

とはいえ、ここでちょっと意地悪に解説しますと(※第三者的評になることご容赦ください)、

まず立憲民主党は、企業団体献金廃止を声高に訴えていますが、自民党(与党)が廃止するまでは、立憲も献金を受け続ける(自党だけ独自に廃止などはしない)という、いわゆるイコールフッティングを訴えています。
(言うのはタダで、実際にはなかなか立憲が与党を取れないわけですから、企業団体献金廃止をやらないのは与党が悪い!とずっとしていればよく、内心は廃止したくないと思っている可能性があります。実際、立憲の支持母体である労働組合による献金は、立憲の収入源になっています。)

次に日本維新の会は、しがらみのない政治の実現・そのための企業団体献金廃止(企業団体からお金をもらっては、その企業団体が有利になる政策を立案するのが人情なので、本当に世のため人のためになる政策を打ち出すのに支障が出るから)を訴えており、しかも実際に自党だけでも率先してこれを実践してきたと訴えています。
このような「しがらみのない政治」が同党の党是といってもいいくらいですが、実際には政治資金パーティーのパーティー券は企業に売っていたり(今は廃止したそうです)、「団体」には政治団体は入らないとして、各種政治連盟(日本医師連盟など)からは献金をもらっていたり(今は廃止したそうです)、企業の代表者(オーナー経営者など)からの個人献金はよしとしていたり(法人と個人の区別があいまい)、色々運用上の問題が多いです(現在行われている、日本維新の会代表選の争点になっています。)。

日本共産党は、実際に企業団体献金を受け取らないことで一貫している政党ですが、共産党の収入源はしんぶん赤旗であり、しんぶん赤旗を、企業団体に組織的に販売していたり、あるいは特定の労働組合から組織的な支援を受けていたりということで、実質的に企業団体からの支援を受けており、しがらみが生まれているのは同じではないか、と批判されたりします。

れいわ新撰組も、企業団体献金の廃止を主張していますが、立憲同様、実際に現在これを党内で禁止しているのかは不明です。

このように、企業団体献金の廃止を訴えていると一口に言っても、
完全にクリーンな政治、しがらみのない政治が実現できているかと言うと、
実際には課題が多いです。

ここで、今回の衆院選で躍進した国民民主党(従前7議席→28議席への議席4倍増)は、企業団体献金の廃止を訴えてはいないとされます。
同党の支持母体が労働組合であり、献金が貴重な収入源であるからと想像されます。

なお、無所属の議員であっても、労働組合をはじめとする、各種企業団体から金銭的支援を受けている議員というのは実はいて、政党に所属していないからといって、完全に企業団体献金を受けていないかというと、そうではないので注意が必要です。

そんな、理想と現実の狭間にある、企業団体献金ですが・・・
ここからは弁護士区議である木村さちこの視点から、企業団体献金について深掘りしてみたいと思います。

企業団体献金の法的問題点とは?

企業団体献金が問題になった事例といえば、
法律を勉強したことがある人であれば法学部1年生の1学期くらいで習う(?)、
八幡製鉄所事件
泣く子も黙る、最高裁判所大法廷判決昭和45年6月24日 民集24巻6号625頁
であります。

内容を極めて簡単に言うと(詳しく知りたい方はChatGPTにでも聞いてください)、
法人の権利能力、すなわち、企業などの法人(自然人とは異なりバーチャル人概念)が、

憲法に保障される基本的「人」権を持つのか?

参政権の一貫としての政治献金の自由があるのか?

ということとか、

会社は定款に目的が定められており、
目的外の行為は定款違反なので会社に対する善管注意義務違反(背任行為的なやつ)にあたりかねないが、
会社が行う政治献金って会社の目的(主要な業務)の範囲外なんじゃないの?
ということが問題になりました。

当時、ときは高度経済成長期
今の比じゃないくらい、政治献金というかほとんどワイロなんじゃないかというような、お金が政治界隈で飛び交っていたわけですね。
八幡製鉄(のちの新日鉄=新日鐵住金=日本製鉄という日本を代表する会社)の他にも、各企業が、政党や政治家にお金を献金しまくっていたわけです。
これが、実際には利益供与っていうかほとんどワイロなんじゃないの!?
ということで、公職選挙法違反が問題になったのに対し、八幡製鉄側が、

いやいや、企業にも憲法上保障されている政治活動の自由が、政治献金の自由があるんだ。憲法上保障されてるんだからワイロなわけないだろ

と言ったので、社会問題になり、最高裁大法廷が開かれるまでに至ったわけです。

これについての最高裁判旨は、皆さんご承知のとおり

バーチャル人である法人たる企業にも、政治活動の自由がある!献金の自由がある!憲法上保障されている!

企業の定款の目的の範囲には、目的に列挙されている事業に間接的に必要な限りで、政治献金も含まれうる!


との判断でした。(試験に出ますよ!)

ここで、最高裁が、企業団体献金に憲法上のお墨付き(ワイロじゃないよ!正当な権利行使だよ!)を与えたばっかりに、現在に至るまで、これが問題になり続けているわけですね。

私も所属している、日本維新の会は、企業団体献金は、とにかく
しがらみ
を生むのだとして、全面禁止を訴えていますし、党内規で禁止もしています。
しがらみ」というとちょっと感情的なきらいがあり、あまり、法的な言葉じゃないのですが
要するに、それって実質ワイロでしょ!?
ということを言っているのです。
実際そうです。法律は、非常に曖昧で、技巧的で、また社会情勢なども反映した価値判断も含まれるものであるので
ワイロと適法な政治献金の境目って、限りなくボンヤリしているのですよね。

企業団体献金のその他の問題点

国会の話に戻りますが、
企業団体献金が禁止されなければならない理由として、上記の法的な理由以外によく挙げられるのが
企業団体献金の廃止は過去に(1994年に)問題になり、これが廃止されることが前提になってそのかわりの政党の活動資金として政党交付金(政党助成金)税金を原資として創設された。
しかし、なぜか、企業団体献金もなくなっていなくて、政党交付金との二重取り
になっている!
というやつですね。

これについては、なぜ、そのようなどうしようもないことになってしまったのか、私も経緯を調べきれていませんが・・・
なんだか、民主党政権下で、マニフェストに掲げられた目玉公約であったこども手当が創設されることとバーターで、年少扶養控除がなくなって、
こども手当なくなっても、年少扶養控除は復活しない
ことと似ていますね
・・・

まとめ

そのような、歴史的にも、法的にも問題の多い、企業団体献金ですが、
政治にはお金がかかる!
ことから、必要悪?的に、なかなか廃止に至っていないのが現状です。
また、他方では、「企業団体献金は受けてもいいから、きちんと公開してほしい。そうすればしがらみがあったとしても見える化されて、投票の参考になるから」という意見もあります。これもありですね。
企業団体献金の廃止についての議論は、感情的になりがちですが、その背景を解きほぐしながら、見直しに向けて与野党一丸となって進んでいくことが、民意に叶うのではないかと思います。

皆さんのご意見もお寄せください!
台東区議会議員 木村さちこでした!!



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