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偉そうなことを言って、人をいじめたり、バカにしたりするヤツなんて~ロバをいじめた馬(イソップ物語)

 他人の態度に、腹が立つことはありませんか。相手が、立場が上の人だったら、苦情も言えず、黙って耐えるしかありません。そんな悩みを持っている人に、イソップは、こんな話をしています。


 一頭の馬が、大通りを、さっそうと駆けていました。
 背中には、キラキラ光る黄金の鞍をつけています。
 他の馬とは格が違うことが一目で分かります。
 乗っている主人が、この町で一番偉い人なのでしょう。
 馬まで、得意満面、偉そうにしているではありませんか。

 すると反対側から、やせこけたロバが荷車を引いてやってきました。
 かなり重そうです。
 ロバは、下を向いて、ふうふう言いながら、必死に荷車を引いているので、前から来た馬に気づきません。
 挨拶もしませんでした。

 馬は、かっとなりました。
 無視されたと思ったのです。
「おい、のろまで薄汚いロバよ。なぜ、私に挨拶をせんのだ。け飛ばしてやろうか!」

 馬は、ロバをいじめ、ひどい言葉を浴びながら通り過ぎていきました。

 ところが数日後のことです。
 あれだけ威張っていた馬が、事故で前足を骨折してしまったのです。
 もう、人を乗せて駆けることができなくなりました。
 するとこの馬は、主人から見捨てられ、農家へ売られてしまったのです。
 馬の新しい仕事は、肥料になる糞を畑まで運搬することでした。
 ニワトリの糞や、人間のうんこを背中に載せて運ぶのですから、臭くてたまりません。
「なんで、自分が、こんなひどい目に……」
 馬は泣きました。
 こんな日が来るとは、夢にも思っていなかったのです。

 ある日、馬がうんこを運んでいると、この前、自分がいじめたロバが前方からやってきました。
 馬はうつむいて通り過ぎようとすると、ロバが、わざと大声で語りかけます。
「あら! まぁー臭い! いったい、どうなさったのですか。私らでさえ、そんな汚いうんこを背負ったことはありませんよ。あの美しい黄金の鞍は、どこへしまわれたのですか?」

 ロバに嫌味を言われ、恥をかかされても、馬は一言も返答ができません。
 逃げるように去っていったのでした。

 仕事を任されたり、役職を与えられたりすると、ついつい自分が偉くなったと勘違いしてしまいます。
 いい気になって他人を見下げたり、いじめたりしていると、その報いは、いつか必ず、自分に現れます。想像以上の大きな苦しみに見舞われ、泣かずにおれないでしょう。
 そう考えると、偉そうに振る舞っている人は、とても哀れで、かわいそうな人に見えてきませんか。
 

イラスト・黒澤葵

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