【小説】クお白チ 026【第一期】
3階に脚立を二台持って上がり、クッキーとチビには箱を開けてもらう事にする。フタを開けたら裏返して、それを1教室一枚ずつ床においてもらう。24灯分終わったら、最初に戻って灯具の取り出し。3階の北側の一番奥から始める。白と香は俺の助手。香が配線カバーを受け取り、白が蛍光管を受け取る係。配線だけ外して灯具は外さない。高い方の脚立を立てて、おしゃべりとラブは俺の後ろを付いてきて潤滑剤をナットにかけるように頼む。下の人は目に入るから声を掛け合って作業をしてくれと指示。ハシゴも脚立も同じなんだけど下りる時の方が危ないから、潤滑剤を下の人に受け取ってもらってから脚立を下りる事、脚立は二人で運ぶ事も言っておく
潤滑剤スプレー作戦は30分ほどで終わった。あぁ、ヘルメットを忘れた…
俺「俺のヘルメットがどこにあるか知ってる人いるかな?」
チ「私知ってるんだよ♪」
俺「取ってきて」
チ「あいよ♪」
俺「作業着が3階の一番南の教室にあるから、白取ってきて」
白「はい」
俺「二人は待っててね」
お&ラ「はい」
高い方の脚立を、灯具を外して一ヶ所だけ開口してる真下に持っていく。脚立を上がり懐中電灯が無い事に気が付く。疲れてる…昨日親方が使った懐中電灯がその辺にあるはずだ
俺「その辺に懐中電灯ないかな?」
ラ「ありましたよ」
受け取って中を覗く。ゲッ!廊下の天井が吊ってない。横に木の棒を六本渡して両脇は釘で止まってる。その釘が抜けかかってる。昨日下がったスレートと一枚向う側のスレートの隙間に懐中電灯を当てると、南側から北側に組んであるのが分かった。一旦下がって体の向きを変え、教室側を照らす。見た事もない驚きの光景が広がっていた。ボルトは金属だが、あとは全部木で組んである。電気配線のパイプも繋がってないで外れてるところが数カ所。すごい…
脚立を下りて、天井の脇に届くところへ脚立を移動し、スレートを持ち上げてみる。見事に釘が切れててベコベコ動く…脚立を下りて教室に入り、点検口を探したが無い。今まで気が付かなかった…
彼女達をこの下で作業させるのは無理だ。開口している天井のスレートを指さして
俺「この下から北側には入らないでくれ」
チ「どうしたのさ?」
俺「灯具を外すと廊下の天井がいっぺんに落ちる可能性がある」
作業着を着てヘルメットをかぶり
俺「箱部隊を手伝っちゃってくれ」
「はい…」×4
俺は南側に脚立を持って移動して、開口部に頭を突っ込む。こちらのスレートは釘が利いてる。そうこうしてるうちに箱の開梱が終わる。2灯目に低い脚立を置いて、六人に声をかける
俺「見てろ」
右手に電動ドライバーを持ち、頭で灯具を押し上げる。背中が痛い!ビシッって音がしたがヒビは入ってない。そのまま右のナットを緩め、左手にドライバーを持ち替えてナットを外す。潤滑剤作戦は成功のようだ
俺「問題はここからだ。聞いてろよ」
俺が力を抜くとバンッ!!!って昨日よりでかい音が聞こえた
「きゃっ!」×6
落ちそうにないな…
俺「みんな来てみて」
全員集まる
俺「ボルトが見えてないの分かる?」
ク「ほんとだ…」
俺「3灯目を見てきてごらん。ボルトが出てるだろ」
お「出てるぅー」
俺「なぜか分からないんだけど3.5cm短いボルトで灯具を吊ってあるんだよ。学校が古いせいか、天井の板はボルトで吊ってないで、両脇を釘で止めてるだけ。その釘も抜けそうなんだよ。今は灯具が支えてるけど無くなったら天井全体が落ちるかもしれない」
白「それじゃ、おにいさんも危ないじゃないですか」
俺「そう言う事。あははっ」
チ「笑い事じゃないじゃんさ!」
俺「天井が落ちたら誰か救急車を呼んでください」
ラ「お願いです。やめてくださいよ…」
ラブが涙ぐんでる。めずらしい…
俺「これが俺の仕事なの」
お「危ないよぉー」
俺「これから毎日学校に通うみんなが一番危ないかもね」
チ「やめなよ!」
俺「これが俺の仕事!何回言わせるんだよ!」
「……………」×6
俺「みんなで3階、2階、1階、階段と渡り廊下下の箱を開けてきてくれ。コンセントの箱も開けて器具を外に出してコンセントの下に置いといて。でっかい音がしたら、救急車ね」
チ「しらないよ!バカ!」
俺「酷いなぁ…」
みんなで不安そうな顔をしてる。でもやらなくちゃ…
俺「じゃ、分担はまかせるからみんな行ってくれ」
「はい……」×6
外すのは簡単だ。スレートをずらさないように注意しないとだめだな…天井が落ちたら落ちただ…7灯目が終わった10時ちょっと前だった。今のところ落ちない。スレートは一枚20kgはある。頭を直撃したら死ぬかもなって思ってた
1階に下りていくと、みんなが廊下にたまってる
俺「どした?」
お「心配でぇー自分たちのぉー仕事が出来ないよぉー」
俺「あぁ、そうだ」
階段まで戻って、スイッチを一ヶ所外してみんなのところへ戻る
俺「おしゃべりとラブはこれをお手本にしてスイッチ組んでくれ」
ラブにわたす
ラ「はい…」
俺「先に木陰に行ってて」
「はい…」×6
材料置き場から電線を持って木陰に行く。みんなで怒った顔してこっちをにらんでる
俺「なんでそんなに怖い顔してるんだよ」
チ「死にたいの?」
涙ぐんでる…なんなんだこいつは?
俺「死なないさ」
ラ「いやですよ…」
人見知りのラブの発言が多い。ラブも泣きそうだ
俺「あと16灯。みんなで祈っててください」
白「なんでそんなに楽観的なんですか!」
俺「俺だって怖いさ。でもやらなきゃ終わらないだろ?」
小&ム「こんにちはーー♪」
小鳥とムック登場。異様な雰囲気に黙って席に座る
俺「小鳥、ムック、3階の北側は立ち入り禁止になったからね」
小「どうしたんですか?」
俺「わけはみんなに聞いてくれ」
「はい…」×2
俺「今日のサンドイッチは?」
白「いやです。あげません!」
俺「じゃ、俺が無事でも、もう作ってこなくていい!」
お「二人とも喧嘩しないでよぉー」
ク「私もあげません!」
チ「バカっ!」
俺「分かったよ!」
ヘルメットをかぶって立ち上がり3階へ上がる。誰も付いてこない。嫌われたな、もう彼女達は来ないかもしれないな…天井のスレートを見上げて
この工事最大のトラブルが起きたと思った…
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