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「その他」デジタルとアナログの使い分け
私はもともと、IT教育を本業にしていました。
IT専門学校で教える傍ら、経済産業省認定の国家試験である情報処理技術者試験を対象にした、参考書や問題集を各社から刊行していました。
またIT用語事典も、単独で書いて刊行したものや、共著で刊行したものがあります。
IT教育の中でも専門は情報セキュリティで、情報セキュリティに関する試験を対象にした参考書や問題集だけでなく、情報セキュリティに関する雑誌の連載記事も執筆してきました。
この経歴のためか、ITに関する相談を受けることもあります。
ITに関する相談に関連して、これまでの経験から、デジタルデータとアナログデータの使い分けに関して、思うところがあるので書いていきます。
なお、この記事は人生相談の内容から外れるので、タイトルで「人生相談」を「その他」としています。
※この記事でのデジタル(digital:離散的)データとは電子データのことを、アナログ(analog:連続的)データとは紙などの媒体に書かれたり印刷されたデータを、それぞれ意味するものとします。
※これ以降の内容は、すべて私の経験に基づく見解です。
■デジタルデータとアナログデータの使い分け
結論から言えば、
(a) 身の回りで利用するデータは、アナログとデジタルの使い分けが望ましい
(b) 保存するデータは、検索性を向上させたデジタルデータが望ましい
ということです。
これについて、デジタルデータの特徴と、アナログデータの特徴を、まず取り上げます。
■デジタルデータの特徴
デジタルデータの特徴を4点挙げます。またこれ以外に、伝送が速いという特徴があります。
□場所をとらない
100冊の紙の書籍は本棚が必要ですが、電子書籍ならパソコンや電子書籍のリーダーで保存できます。
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それと同じことで、一つの電子機器で大量のデータが保存できます。しかも技術の進歩で、同じサイズの機器での記憶容量は高まっています。
□検索性が高い
デジタルデータが年月日順や階層別など体系的に分類されていれば、見つけやすいです。
それだけでなく、キーワードによる検索ができれば、探し出すのに手間も時間もかかりません。
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□複製しやすい/共有しやすい
電子メールの送信は、メールの送信データのコピーを、ネットワークを介して送ることです。つまりデジタルデータは、簡単に複製して送ることができます。
そして受信後は、送信者と受信者に同じメールのデータがあるため、メールの情報を共有しているといえます。つまり、複製と共有が容易であるということです。
これと同じように、Webページでは不特定多数への情報発信(デジタルデータの複製と送信)と情報共有をしているといえます。他の通信ソフトも同様で、デジタルデータは複製と共有を容易に実現しています。
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□インテグリティ(完全性)が高い
ここでのインテグリティとは、データに誤りが出ることや、データが消失することに関する性質です。
紙の文書は経年変化で、紙が変質したら読めなくなったり、誤って読み取る可能性があります。それを防ぐためには、紙の文書を作り直すことや複製などを行いますが、手間がかかります。
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デジタルデータも、磁気メディアなら経年変化で磁気が弱くなったり、フラッシュメモリなど回路で記憶するメディアなら電荷の消失で、記憶内容がおかしくなったり消失する可能性があります。しかし、誤り訂正機能があり、また新しいメディアに容易にコピーできます。
■アナログデータの特徴
ここでは書籍や書類など、紙のメディアを対象とします。
□データが物と一体になって存在している
これは、紙に書いたデータは紙とデータが一体になって存在している、ということです。そしてデータを持ち運ぶことは、紙を持ち運ぶことでもあります。
オフィスで他の人にメモを伝える場合、ソフトを使って相手のパソコンの画面に表示させる方法と、紙に書いて相手の机の上に置く方法があります。
どちらがより確実に伝わり、相手が忘れないかというと、紙に書いたメモに軍配があがります。
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会議室の利用状況など自分から主体的に探すデータは、デジタルのほうが共有性の面で優れています。
しかしこちらから相手に伝えるデータは、紙のほうが着目率が高いですし、相手の手元に物として残ることで忘れられることが少ないです。
このメリットから、印刷した文書や、付箋などの手書き用紙が今も広く使われているといえます。
ただしデジタルデータも、大量のデータを簡単に送り、いつまでも相手の電子機器に残せるというメリットがあります。用途としてそれが求められる場合は、デジタルデータが適しています。
□手書きで書き込みできる
情報を容易に追記できるメリットがあります。それよりも大切なことは、手書きで書き込みむことで、書いた内容が記憶に残りやすいという特徴があります。
学校での授業でも、画面を見るだけの勉強よりも、学んだ内容をノートに書くことで、より記憶に残りやすいです。
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ですから学校での授業では、基本は教科書を使って説明して、補足することや分からないことでタブレットを利用するような使い分けが最善と思っています。
□機器が無くても伝えて共有できる
相手がパソコンなどの電子機器を持っていなくても、紙なら伝えることができます。
私は阪神淡路大震災を経験しましたが、大規模地震などの災害発生時の被災地内では、ネットワークでの掲示板よりも、避難所の壁に貼られた紙の情報のほうが役に立つ傾向があります。
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これは、パソコンなどの電子機器を持っていない人でも、持っていても故障や長時間の停電で使えなくなっている人でも、アナログデータは利用できるからです。
紙の文書も、焼失や破損や汚れで表示できなくなる可能性はありますが、電子機器がなくても表示できて読めるため、デジタルデータよりは役に立ちます。
■結論
前述の結論を再掲すると、
(a) 身の回りで利用するデータは、アナログとデジタルの使い分けが望ましい
(b) 保存するデータは、検索性を向上させたデジタルデータが望ましい
です。
私たちの仕事や生活で、手書きで書き込みする場合、情報が物と一体になって存在しているのが望ましい場合、機器が使えないときは、アナログデータが適しています。それ以外では、デジタルデータが望ましいため、使い分けが賢明と思います。
長期保存や大量保存は、グループ別や階層別に分類されていたり、キーワードで多様に検索できるようにした、デジタルデータが適していると思います。