社会保険のこと
さて、また少し時間を戻します。
僕がnoanroomsを作ってしばらくしてのことです。2010年頃
新米経営者の僕も勉強がだんだん追いついてきて、労働環境、中でも社会保険についても考えるようになりました。
2020年現在では法人は必ず社会保険に加入義務がありますが
10年ほど前まで美容業界では法人でも加入しないのが普通でした
僕のような個人事業主や、小さな会社に勤める職人さんなどは、自分で国に納める国民健康保険や国民年金を利用することが普通です。
しかしうちの店では人を雇用するようになった事と節税も兼ねて法人化しましたので、社会保険を切り替えることもできるようになったんです。
ここでいう社会保険とは、会社単位で入る健康保険と介護保険、会社経由で国に納める厚生年金、雇用保険、労災保険の五つです。
僕の知る限りで簡単にご説明しますと、社会保険を切り替えるメリットとは、補償が大きくなるということです。
年金の支給額は国民年金(だけの場合)に比べれば厚生年金は三倍近く多いです。
雇用保険があると、失業中に元の給与の何割かを国から支給されます。
労災保険では、仕事中に負った怪我や疾病に対して保険料が支払われます。
なぜそうなるかというと、厚生年金は「会社が半分払ってくれる」ということになっており、掛け金が大きい分、厚い補償が用意されているのです。
労働者にとって一見いいことばかりのようですが、デメリットもあります。
それは「手取りの給料が減る」ということです。
つまり手取りが30万円の人が社会保険に加入すると、それぞれの保険料が天引きされ、さらに所得税も天引きされて、おおよそ5万円ほどの手取り減額になり、支給額は25万円となります。(年齢や、地方で細かく違うので詳述は避けます)
僕はできるだけスタッフに手取りを増やして欲しいとの思いから給与を設定していたので、これらの経費の会社負担分を考慮に入れないでいました。
社会保険を導入すると、給与の支給の仕方も見直さなくてはならないかもしれません。
僕はこのデメリットは結構大きいと思っていました。
保険も大事ですが、社会保険料はやはり高いからです。
スタッフも手取りが減ってしまう。
社会保険の分を自己投資するなり自分で保険をかけるなり運用した方がチャンスが増えるというのが僕の考えでした。
会社にも社会保険を負担してもらって自分の生活の安定を確保する、というのも一つですが、僕のところのように小さな会社に負担を強いて、会社が潰れてしまったら何にもなりません。
結局お店の売り上げ、というパイをどう切り分けるかの問題なのですから。
メリット、デメリットを説明した上でnoanroomsのみんなに選択してもらうことにしました。
意外にも全員一致で社会保険に入りたい。
との答えでした。
僕はちょっと気が進まなかったのですが、了解しました。
ただ一つだけ釘を刺しました。
今は売り上げが順調なのでそれを確保してくれれば、みんなの手取りはなんとか変えないで済みそうだけど、売り上げが落ちたら手取りを減らさないとやっていけないよ。
それだけは覚えていてほしい、と。
社会保険に入ってからしばらくして、noanroomsの売り上げが少しづつ落ちてきました。
安定期に入れば波があるのは当然です。
しかしスタッフの給与を確保するために、お店の留保資金の残高が目減りしていく事態になると、僕も経営者としてできることはないか考えるようになります。
売り上げが上がるように考えようと、noanroomsの皆んなと話し合おうとしましたが、反応は鈍いという感じでした。
今までは売り上げについて一切話す事なく、のんびりだったのに急にお金の話ばっかり、という気持ちだったのでしょう。