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『予知夢』

聞いた話によると、アメリカ帰りの背高のっぽの色白が、これからベトナムに行くと言う。

私はのっぽの母とも仲がいいし、見送りの挨拶に家を訪ねた。無論のっぽの母君は私を歓迎して、広い居間へと通してくれる。
のっぽは間もなく階段をおりてきて、突然のベトナム行きの経緯を語った。のっぽの母君が出してくれた茶菓子は、どれも高級な味がして、安く易い味を求める私の口には銀紙のチョコと、金紙のチョコの違いは分からなかった。

話してる最中、ポロン、とのっぽの携帯が鳴った。
「奨学金、1人辞退して空きがあるらしい!」
のっぽが私にも申し込むように勧めた。

私も以前からどうしても海外に住んでみたかったので、のっぽの勧めに乗った。


あくる週、また私はのっぽの家を訪ねていた。
奨学金の結果の報告と、明日のっぽが日本を立つらしいから、その見送りである。

のっぽを見て、一番に、
「私もベトナム行ける。」と告げた。
のっぽは喜んだ。
一緒に祝杯を上げ、
広い居間に2人で寝ることにした。


酒がずいぶん回って、気持ちよく眠りについたのだが、変な夢を見た。

私はカラスで、体のひょろ長い、先をゆくカラスを追いかけている。
先ゆくカラスは次第に疲れ、フラフラしだして、途上国にあるような薄汚れたビルの外壁にぶつかった。
ひょろ長カラスはまた飛び立ち、飛行を始めようとして、同じビルにぶつかった。
そうして私の目の前で脱力し、地面にたたきつけられていた。
どろりと粘ついた血を見た。

急に場面が切り替わり、美しいベトナムの街並みと、のっぽがベトナムの大学で講義を受けている映像が流れる。

…とわかった瞬間、嘘かのように場面が変わって、のっぽは腰の位置まである深い沼地でもがいていた。夕暮れ時、闇がのっぽに纏わりついていた。


目が覚める。
のっぽはまた爆睡していた。
…最悪な旅立ちでは無いか?



そこでアラームの音が聞こえた。

………なるほど、私の友達にはアメリカ帰りの、ベトナムへ行く色白のっぽなど居なかった。私もベトナムヘ行く予定はなかった。

夢だ。夢の中で夢を見た。
カラスの粘った血には今でも少しさぶいぼが立つ。

カラスは朝公園で見かけて、
ベトナムへは友達が留学に行く。(のっぽじゃない。)
ベトナム戦争についても勉強した。
私は留学に迷い果ててるし、
不穏なのは寝る前の私立探偵スペンサーのせいだ。
全くハラハラした!


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