ことの発端_2

実は、彼女はこれまでコンサルが提出した成果物の出来栄えの悪さや、数々の失礼な言動により、コンサルに対する信頼を失っていた。
そして、大島紬について何も知ろうともしなかったにもかかわらず、全て自分本位に物事を進めようとするコンサルに嫌気がさし、自分は信頼できる人と仕事がしたい、あなたのことは信用できないという趣旨のメッセージを送った。
それに対し、コンサルからは長文の返信があったが、まるで彼女に罪悪感を抱かせるようなニュアンスが散りばめられていたため、これに対して彼女は返信をしなかった。

その後コンサルとの連絡は途絶え、年を越すこととなる。
おそらくそのまま音信不通になっていれば、彼女が「大島紬のことについて使うことになっていた10万円」についてコンサルに問いただすこともなかったであろう。
しかし、年明け早々にコンサルから彼女に連絡があった。

彼女のアトリエでは、機織り体験をすることができ、コンサルの妻が機織り体験をしたいということで、彼女はコンサルから応援アワードの賞金のうちの10万円とともに体験料3万円を渡されていた。
その際、彼女は、日程も決まっていない中で体験料を先払いされても困ると固辞したものの、ほぼ無理やり渡されたという。
その3万円について、今さらになって機織り体験できる日程の目処が立たないという理由で返還を求めてきたのである。

それならば、と彼女は「大島紬について使うことになっていた10万円はどうなったか?」と問いただした。
その10万円は自身の活動で使いたいが、体験料の3万円と相殺しても構わない旨伝えたが、コンサルは「先に3万円を返せ」の一点張りであった。
そして、「大島紬のために使う10万円」については、とにかく一度会って話がしたい、話せば分かり合える等と話をすり替えるばかりであった。

真夜中や早朝という非常識な時間に送られてくるコンサルのメッセージを読み、彼女は疲弊し、何度か攻防した結果体験料の3万円をコンサルに返した。

その後、コンサルからは一切の連絡が途絶えた。

実は、双方を知る人物が間に入り、このままでは埒があかないので「俺が一旦その10万円を預かり、2人に5万円ずつ渡すから、それで手打ちにしてはどうか」とコンサルに提案したそうだが、コンサルはそれには応じなかった。
おそらくその10万円は既に使ってしまい、彼女に渡しようがない状況だったのであろう。
それどころか、お金に困っていて、3万円の返還を要求してきたのかもしれない。

私は、コンサルの行為は、彼女だけでなく応援アワード2023で彼女に投票してくれた審査員の方々や応援してくれた一般投票者の方々に対する裏切りだと感じ、一連のやり取りについて彼女から逐一報告を受けながら、怒りに打ち震えていた。
彼女本人よりも私の方がよほど怒っていたかもしれない。
ここまで話が通じない相手ならば、支払督促か少額訴訟を提起し、公的機関の力を借りてコンサルからお金を取り返してやりたいと考えた。
しかし、彼女名義で物事を進め、裏で私が彼女を後押しした場合、一歩間違えば非弁活動(弁護士でないのに弁護人として活動すること)になる恐れがある。
また、彼女が自分で裁判所に出向くとなると、彼女の精神的な負担が大きくなってしまう。

そこで、私は彼女に対し、コンサルに対する賞金引渡請求権の譲渡を持ちかけた。
私が債権譲渡を受ければ、全て私名義で物事を進められるようになるからである。
私は多少法律の勉強をしたことがあったため、訴訟の当事者になることにとても興味があった。
学生時代からの悪友に優秀な弁護士がおり、気軽に相談できるという強みもあった。
裁判所という公的機関を通じてコンサルを懲らしめるという合法的でサディスティックなゲームを楽しんでやろうと言って、彼女から債権を買い取った。
厳密に言うと、私は彼女にお金を貸していたので、買い取った債権は貸金の返還に充てた。

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