アゲハが魅せた「きもの」の力
「きもの」への印象が変わり、
「きもの」のまだ見ぬ魅力に気づき、
「きもの」への価値観が芽生えたのは、
紛れもなくアゲハと出会ったあの日でした。
私の時代の成人式には、
祖母や母から受け継いだ振袖を身にまとう友人こそ一定数いたものの、
「ママ振り」というワードはまだ聞かれていませんでした。
私の祖母の手元にも振袖がありましたが、
私はそれを着て成人式に出るつもりはありませんでした。
祖母との確執ゆえ、その着物に愛着がわかなかったのです。
それに輪をかけるようにして、
海外へと関心を深めていた時期でもあった為、
日本文化や風習、そして着物が好きというには程遠い状態でした。
私と母は、実家自宅に送られてきたDMの中から
当日着付けの会場にのみひかれて、店舗へ予約に向かいました。
一番安いプランで済ませるので良い、
と母に宣言したことを今でも何故か鮮明に覚えています。
しかし、到着するやいなや、
私の目に飛び込んできたのはアゲハでした。
「きもの」でありながら、
常識とはかけはなれたインパクトと存在感を放ち、
20歳ハレの舞台で身にまとうにふさわしい可愛らしさと
上品な大人っぽさを兼ね備えていました。
私がアゲハを選んだように、
アゲハも私を選んでくれたと思えるほど、
求めていたイメージとアイデンティティが重なりました。
“下手の横好き”という言葉がある通り、
好きになるとそこからは自ら進んで触れる機会を作っていくものです。
着れるか着れないか、
着ていく場所があるかないかは関係ありません。
できないのならできるようになり、
ないものはつくりだせば良いのです。
そこから私は着方教室に通い、
他の誰よりも振袖を沢山着て、
何よりも優先してメンテナンスを行うようになりました。
アゲハは私にそれだけの原動力を与えてくれたのです。
今では、私の人生に欠かせない相棒です。