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ドラマ#5『仮面ライダーBLACK SUN』

『仮面ライダーBLACK SUN』

監督:白石和彌
原作:石ノ森章太郎『仮面ライダーBLACK』
脚本:高橋泉
コンセプトビジュアル:樋口真嗣
出演:西島秀俊、中村倫也、平澤宏々路、三浦貴大、ルー大柴、ジュア、中村蒼、音尾拓真、芋生悠、モクタール、濱田岳、黒田大輔、中村梅雀、吉田羊、プリティ太田、他
配信媒体:Amazon Prime Video
配信開始:2022年10月28日

公式Webサイトより引用

あの「漆黒の仮面ライダー」が、令和に舞い戻る。

時は1987年、TVシリーズ『仮面ライダーBLACK』が始動した。

今までにないようなシリアスなストーリー性や、原点回帰を果たしたかのような仮面ライダーの無骨なデザインなどが当時人気を博した。

そして時は流れ……2022年、彼は再び舞い戻る。
「史上最も黒い仮面ライダー」、『仮面ライダーBLACK SUN』として。


『仮面ライダーアマゾンズ』同様、昭和の仮面ライダーのリブート作品であり、配信媒体も同じくAmazon Prime Video。

アマゾンズは原作とは全く異なるストーリーを展開していたのに対し、今作は原作の要素を引き継ぎつつ新たなストーリーが描かれている。

主人公は「ブラックサン」こと南光太郎「シャドームーン」こと秋月信彦の2人。他にも動物をモチーフにした怪人たち「創世王」の継承など、TV版との類似点は多い。


そして今作のオリジナル要素となるのが人種差別をテーマにした社会派ドラマだ。人間から排斥され、強い差別を受ける怪人たちの描写は妙に生々しく、むしろ特撮アクションの側面よりもこちらの方が強いとさえ思える。

そんなわけで全話を通して非常に重くて憂鬱な雰囲気が漂っており、また人間側も怪人にされたり無惨に殺害されたりで中々悲惨なことになっている(その惨さはアマゾンズ2期に匹敵するかもしれない)。

またもう一つの特徴として日本の政治への皮肉及び風刺が挙げられる。こちらの描写も非常に生々しく、特にルー大柴演じる総理大臣は不快感たっぷりで「絶対いい終わり方しないだろうなぁ」と沸々と思っていた。

社会ドラマと仮面ライダー、という異例の組み合わせには賛否両論の意見が挙がっている。私個人的には「人種差別というテーマを仮面ライダーでやる必要はあったのか」というのが正直な感想。ハードな社会ドラマよりも、もっと特撮らしいアクションを見たかったよ。


また今作の賛否の原因の一つには脚本のチープさも含まれている。詳しく語り出すと凄まじい文字数になりそうなのでここでは省くが、要所要所で細かい描写が抜けており、どこか疑問を感じてしまう部分があった。

個人的に疑問に感じたのは主人公の光太郎とヒロインの葵の登場シーンの割合だ。何だか光太郎よりも、葵の方が登場シーンが多いと感じたのは私だけだろうか。別に葵が嫌いって訳じゃないが、これではどっちが主役なのか分からなくなってしまうような感じがした。

また過去と現在のシーンを交互に流す、という構成も個人的にごちゃっとしているような印象を受けた。現代では緊迫したシーンが流れていて、このあとどうなるんだ!?と思ったら急に過去に戻されたりするので、少々混乱してしまった。


だがより生物的に新しくデザインされたブラックサンや、変身ポーズやOP再現などの原作オマージュなど、評価されるべき点も数多く存在する。

特に原作の要素は序盤では中々登場せず、中盤でようやく変身ポーズ登場(それまではずっと「黒のバッタ怪人」だった)、そして終盤で怒涛の再現ラッシュ(マーク、OP再現、ライダーキックなど)。溜めに溜めまくってた故に、いざ出てきた時の興奮度が凄まじかった。


中でも南光太郎/ブラックサンの宿敵であり、親友同然の秋月信彦/シャドームーンを演じた中村倫也は、今作随一の演技力を発揮していたと思う。

もちろん、南光太郎の孤独感を演じ切った西島秀俊の演技も素晴らしいのだが、個人的に中村倫也はシャドームーン特有の「THE悪のカリスマ」感をうまく醸し出していると感じた。

それ故に、光太郎との決戦の後の「あの頃に戻りたい」と言うセリフには強く心を打たれた。久々に頬に涙が伝うぐらい泣いてしまった。宿命の敵とは言えど、光太郎と信彦は同じ釜の飯を食った仲だ。辛くない訳が無い。


来年3月公開となる『シン・仮面ライダー』と同じく、仮面ライダー生誕50周年を記念して制作された今作。結果として賛否両論を引き起こす事態となったが、個人的には非常に楽しめた。

前半は「これホントに仮面ライダー?」と疑問に思う部分もあったが、後半になるにつれ物語が加速していき、特に最終話は興奮と感動が入り混じり凄まじい余韻が残った。

今作を踏まえ、果たして『シン・仮面ライダー』はどんな作品になるのか、是非とも期待していきたい。


まとめ

ぶっちゃけ言うと、R-18作品と聞いていたもので、アマゾンズと同等、あるいはそれ以上のバイオレンスなアクションを期待していたけれど、そうでもなくて少しガッカリ。もっと臓物と血飛沫を撒き散らして欲しかった。笑

「社会ドラマよりも、もっと仮面ライダーっぽい戦いが欲しかった」。今作は本当にこれに尽きると私は思う。シリアスな作風を大事にしたいのは分かるが、ならば仮面ライダーでやる必要性はどこにあるのか、と思ってしまう。

まぁでも、面白くなかったと言ったら嘘になるね。原作再現がようやく出てきた時の脳汁半端なかったし。というか面白いと思わなかったら1日で全10話完走なんて真似はしない。信彦の死亡シーンで泣いたりもしない。

『シン・仮面ライダー』は戦闘シーンマシマシであってくれ。頼むよ庵野秀明。

それではまた、次の映画にて。

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