![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97174740/rectangle_large_type_2_a06c83894453a502a22dfa2654500ff9.jpeg?width=1200)
映画#89『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
(”The Imitation Game”)
監督:モルテン・ティルドゥム
原作:アンドリュー・ホッジス『Alan Turing: The Enigma』
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グッド、ロリー・キニア、チャールズ・ダンス、マーク・ストロング、他
製作会社:ブラック・ベア・ピクチャーズ、フィルムネーション・エンターテインメント、ブリストル・オートモーティブ
配給会社:ワインスタイン・カンパニー(米国)ギャガ(日本)
公開:2014年11月28日(米国)2015年3月13日(日本)
上映時間:114分
製作国:アメリカ合衆国
【あらすじ】
第二次世界大戦時、ドイツ軍が誇った世界最強の暗号<エニグマ>。 世界の運命は、解読不可能と言われた暗号解読に挑んだ、一人の天才数学者アラン・チューリングに託された。 英国政府が50年間隠し続けた、一人の天才の真実の物語。時代に翻弄された男の秘密と数奇な人生とは――?!
ドイツは愛によって戦争に負けた。
同じく愛によって腐敗してしまった、1人の天才によって。
第二次世界大戦当時、ドイツがヨーロッパ諸国を侵略し始め猛威を振るい始めていた頃、ドイツの執り行う奇襲作戦を予測することはほぼ不可能に近かった。
それを唯一推察することができるのが、難解すぎるあまり解析不可能とすら呼ばれる暗号機「エニグマ」。どうにかして暗号を解読できれば、ドイツの快進撃を止めることが出来る。
かくしてエニグマ解読を目的としたチーム編成が組まれ、英国の中でも選りすぐりの秀才な数学者たちが招集される訳だが……その中で一際異彩を放つ者がいた。それが天才数学者と呼ばれる大学教授「アラン・チューリング」だった。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97427267/picture_pc_4aae19fe47830d93d1133152816f27af.png?width=1200)
彼は確かに天才的な頭脳を持つ逸材だ。だがしかしチームで解析をしなければならないというのにも関わらず自分勝手に行動したり、チームのリーダーになった瞬間にチームの何名かを問答無用で解雇するなど、壊滅的に傲慢という弱点があった。
(邦画でいう『アルキメデスの大戦』と似た構成をしている。尤も、根幹にあるテーマは異なるが……)
そんな彼を演じたのはベネディクト・カンバーバッチ。『ドクター・ストレンジ』や『ホビット』でもそうだったように、彼ほど「高慢な天才」を演じるのが上手い俳優は存在しないだろう……それほどに今作での演技は凄まじいものに仕上がっていた。
人間ではなく機械にエニグマを解析させると判断したアランは、仲間の信用を失ってでも研究に没頭し、エニグマ解析装置を作成する。
しかしアラン・チューリングにはもう1つの側面があった……それは同性愛者であること。学生時代を共に過ごしたクリストファー・モーコムにかつて恋心を抱いていたが、不運にも彼は結核で亡くなってしまう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97428987/picture_pc_5a8e5e6b7d32975fd242318d29015871.png?width=1200)
それ以来、アランは解析装置に「クリストファー」という名前を付けるなどして、彼との思い出や恋慕を捨てきれずにいた。彼の天才的な頭脳の根底には、底知れぬ恋情が眠っていたのだろう。
また、エニグマは国家最高機密事項に指定されていたほどの代物であり、これを解読できたことをドイツを始め他国に知られてしまっては大惨事は免れない。つまりドイツの奇襲作戦を予測しても、それを毎回止めることはできないのだ。
実際の史実においても、エニグマの解析は戦争の集結を2年早めたとも言われており、結果として多くの命を救った。だが救えたかもしれない命を救うことができなかった……いや救わなかったという事実は、何とも言葉にし難い感情を抱かざるを得ない。
(劇中では、解析チームの1人の兄が乗る船が奇襲作戦の標的だと分かるが、敢えて助けないという苦渋の決断を下す。戦争の残酷さも相まって、非常に刺さるシーンである)
そしてラストシーン……男娼と性行為をしたという疑い(今更だが当時は同性愛は犯罪とされていた)で起訴されていたアラン。ジョーンが家を訪れると、そこには化学的去勢で衰弱したアランの姿が。
戦争終結を早めた、という偉大な功績を成し遂げた英雄……そんな彼の弱った姿を見るととても胸が締め付けられる。有罪判決か化学的去勢かの2択で、仕事のために後者を取るのも彼らしい。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97432392/picture_pc_249ba1e20f0bc725ff92f46a1f0c23e4.png?width=1200)
「クリストファー」が押収されそうになるのを知った彼は「置いていかないでくれ」「一緒にいてくれ」と咽び泣く。先述した通り、彼の心の奥底には何事にも替え難い程に強い「亡き想い人への愛情」が眠っている。
エニグマの仕掛けを真に理解した彼は「ドイツは愛で戦争に負けるぞ」と呟いた。しかしそんな彼もまた「愛に侵され世界の不条理に負けた」と言えよう。
友人からのススメ&アマプラでの無料配信が終了間近であった為急遽鑑賞した訳だが……とても良かった。思わずホロリと涙を流してしまった。一見『スノーデン』のような小難しい作風を意識するかもしれないが、これは一人の秀才な男が愛に翻弄される話なのだ。是非とも観て欲しい。
それではまた、次の映画にて。