総合論評 その存在がミーティングをギュッと引き締める!
会長につぐ「俯瞰力」が求められる
トーストマスターズクラブの例会(ミーティング)は、大きく分けて3つ。事前に準備したスピーチを披露する「準備スピーチ」の時間帯、その場で投げかけられた質問に対して即興でスピーチを披露する「テーブルトピックス」(即興スピーチ)の時間帯、そしてその例会全体に対するフィードバックをする時間帯「総合論評」の時間帯だ。
この記事では「総合論評」を取り仕切る総合論評者(General Evaluator)の役割とポイントについて書いてみようと思う。
喜餅が総合論評者に対して真っ先に浮かべるイメージは「俯瞰力」かな。例会の開始時間より前のメンバーの立ち振る舞い、例会が始まったあとの進行の様子、さらには自身に与えられた総合論評の中での時間管理、そして次に開催される例会に向けて参加メンバーがワクワクできるようなフィードバックを出せるか?といったところかな。
総合論評の出来によってその例会が有意義なものかどうか・・・が決まるぐらい、実は重要な役割なのだけど、存外軽んじられている(?)のが総合論評並びに総合論評者ではないかと思ってしまう。
総合論評者のやること① 論評スピーチに対する論評
細かな部分(段取り・進行)はクラブによって異なるけれど、総合論評者がその時間帯でやることの一つは、披露された論評スピーチに対する論評が挙げられる。
存外と目にするのが、披露された「スピーチ」に対して総合論評者が論評してしまうことかな。スピーチへの論評ではなく、スピーチに対してされた論評に対して、論評をする。
「スピーチ、内容が難しかった」ではなく「内容が難しかったスピーチを論評するのは、大変だっただろう/難しかっただろう etc.」ということになる。
総合論評者のやること② 各役割への投げかけ+例会全体に対する論評
総合論評の時間帯には、複数の役割を任されたメンバーからの報告がある。
たとえば「あーカウンター」と呼ばれる役割がある。各メンバーの発言にどれだけの「あー」とか「えー」といった不要な合いの手(英語では filler と呼ばれる)が挟まれているかを数える役割であったり。他にも文法的な観点からフィードバックをする文法係やメンバーに覚えてもらいたい言葉を紹介し、例会中の使用を促す&数える今日の言葉係といったもの。
そういった役割を担ったメンバーに対し、総合論評者は司会のように発言を促し、各役割にレポートをしてもらう。
そして今度は自らが例会全体の評価を行う。素晴らしかった点を指摘したり、より良くするための提案を行ったりといった形。
時間調整されがちな総合論評
総合論評がしっかり行われると、その例会はギュッと引き締まる。有意義な時間となり、「よしっ、次の例会、より良いものにしよう!」という・・・離陸した感覚のまま家路につくことができる。
重要なのだよね、総合論評は。
・・・でも時々、帳尻合わせの時間帯となってしまうことがある。
準備スピーチやテーブルトピックス(即興スピーチ)の時間が予定よりも長くかかってしまった場合、かなり短縮されてしまうことがある。
総合論評に割り振られる時間帯が短縮したのに加えて、各役割のレポートがその短縮に全く比例しない形で行われることもあったりする。その結果、総合論評者による総合論評が、超絶コンパクトなものになってしまうことも。
あぁ、悲しい存在かな、総合論評。
その場その場の瞬発力が求められるね、この場合は。たとえば15分を予定されていた総合論評の時間が10分になったとしたら、各役割のレポートをしてもらう際に「冒頭に」リクエストをする機転も必要になったりする。「それでは、あーカウンターの〇〇さん、今回できれば〇分以内でレポートをお願いできますか?」といったもの。
そして、(これは喜餅自身の課題ともなっている)場合によってはワンワード・ワンフレーズ・ワンセンテンスで論評をまとめることができるチカラなどもあったらかっこいいよね。それができたら究極の時間調整になる。
※冗談抜きで、喜餅は近い将来ペップトークを学んでみたいと思っている。
「総合論評の〇〇さん、すみません!〇〇分で総合論評を終わらせてください!」という急なリクエストに「あいよっ!」と応えることができたら・・・粋だよね。
実務的なポイント
喜餅の勝手な印象・・・特に英語のクラブにおいては論評と並びもっとも敬遠される役割がこの「総合論評者」だと思う。
準備できない。その場で起きたことを元にコメントをしなくてはいけない。即興性が求められる。そういったものを英語で表現することができない。
・・・といった理由だと思う。
母語でない言語での大変さは仕方ないとして、それ以外に「総合論評やりたくない・抵抗がある」点を乗り越えるために、この点を注意して臨めば「とりあえずは総合論評者としての体裁が整うかな?」なんてものを挙げてみたい。
1.論評の論評
良い点を先に。提案点を後に。
与えられた時間によって、披露された論評に対し個別に論評をする場合もあれば、一つにまとめて論評をする場合もあると思う。そのどちらでも原則は良い点の紹介→提案という流れで。
「私みたいな立場の人間が、良い点や提案なんて」という感覚もあるかも。良い点を「指摘」というよりも、あなたが感じた良い点の「共有」という感覚で臨むと少し楽になるかも?
より難しいのは「提案」なのかな。
それでも困った時のためのチェックポイントとして・・・
①改善点の提示がされているか否か
②タイムオーバーが発生していないか
③(たとえば had better のような)言い回し
・・・を持っておくとよいかなと思う。
母語でない言語での指摘に対して抵抗を感じるならば、文のテンプレートを沢山もっておくとよいかなと思う。たとえば上で挙げられたチェックポイントを指摘する文を準備しておいて、あとはその場で起きたことを空白部分に当てはめていくようなイメージ。
そのテンプレート作成に、トーストマスターズインターナショナルが準備しているマニュアル・・・の中で書かれている文が非常に役に立ったりする。
2.例会の論評
こちらも、良い点と提案をそれぞれ一つ準備してみる。
「良い点」という表現、こちらもやはり「自分ごときが・・・」ならば、「素敵だと思った点」「他のメンバーに共有したい/気づいてもらいたい点」という言い方に換えたってよい。
大袈裟な「良い点」でなくても、オッケー。
それこそ、緊張した面持ちで入室してきたゲストに対して真っ先に声をかけたメンバーを紹介したっていい。急遽欠席してしまったタイマーの代役についてスッと手を挙げてくれたメンバーを紹介したっていい。
むしろ、素晴らしいスピーチやパフォーマンスに対してのフィードバックよりも、そういった点にスポットライトを当てる方が良いのではないかと思う。
そしてそういった細かな配慮を見つけるためには「見るチカラ」が必要になってくるよね。
こちらも提案は難しいかな。自分がもってるチェックポイントは・・・
①スタート時間(時間どおりにスタートしているか?)
②各セクションの時間割り振り
③ゲスト紹介がされているか否か
④発言が少ないメンバーへのケアがなされているか
⑤各役割がその役割に沿った目的を果たしているか
・・・あたりかな?もっともっとチェックするポイントがあるかもだけど、トーストマスターライフが始まったばかりの方にとってはこれぐらいでいいかと思う。
やっぱり「観察力」なんだろうなぁ
スピーチを面白くしたいです!
会話を面白くしたいです!
コミュニケーションにおいて、花形に見える「話術」といったもの・・・そこにどうしても目がいってしまうけれど、実際のところそういった箇所を伸ばすためにも「観察力」「見る」「相手を知る(知ろうとする)」って部分、大事なのだということがわかる。
そしてこの観察力を伸ばすためには、スピーチ以外の役割であったり会長といった役員に挑戦していくことじゃないのかなと思う。
トーストマスターズクラブに飛び込むと、いつか任されるこの総合論評、「任された時に考えよう」ではなく、今この瞬間から「自分が総合論評なら、どうコメントしよう?」という感覚で臨んでみたらどうだろう?
その小さな違いが、何か月後・何年後で大きな違いになると思う。