ガンスリンガー&カラテ
第3新台場方面行き電車は今夜も当然の如く満員だ。仕事帰りのサラリマンや酔漢、オーエルやサイバーゴス、パンクまでさながら人工島住民の見本市のようだ。これらが一塊になって東京湾の沖合いに浮かぶ目的地へと向かっているのだ。
身体を車両の奥へとねじ込む。自然な体勢で丹田に力を込め、揺れや慣性の力をそのまま立つ力に利用し、循環させる。常に地水火風の精霊とコネクトし、チノ=リを得る。俺の属するカラテ門派《四大門》の教えである。
車両の奥がにわかに騒がしくなる。疲労と違法ドリンク剤でキマったサラリマンがパンクに因縁をつけたようだ。
「俺の足踏んだろテメーッ!テメーッ!」「因縁つけてんじゃねぇぞオッサン!」
一触即発の空気だが長くは続かなかった。瞬きする間に二人が眉間を撃ち抜かれて倒れたからだ。二人の前に座っていた女学生が空気を指で圧縮し、指弾を放った瞬間を俺は見逃さなかった。
【続く】