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記憶に残るライブってぶっちゃけそんなにないっていう話 後編
というわけで後編。
そんなこんなでようやく開場の時間となった。先ほどまで閑散としていた会場周辺には黒山の人だかりができていた。チケットはもちろんソールドアウト。それどころかキャパ以上にチケットを出しているように思えた。僕らが手にしたチケットの整理番号は50番代。いまや整理番号なんてあまり気にしないし、良番でも開演ギリギリに入る体になってしまったが、当時は一生分の運を使い果たしたとさえ思った。番号が呼ばれ、逸る気持ちを抑えて中に入る。BAY5のフロアは横長で奥行きはあまりない。ステージもそこそこ高いのでどこからでもしっかり見える。しかしそこは迷わず最前へ。藤くんとチャマの間くらいで柵を掴めた。ここからの1時間は期待で胸がいっぱいで、さっきまであれほど軽快に話をしていた友達との会話も途切れ途切れになった。開演が近くなりローディーさんがサウンドチェックを始めた。ヒデちゃんのドラムのバスドラが鳴り響き、チャマのベース、ヒロのギター、藤くんのギターが鳴らされるたびに会場から大きな歓声があがった。本人たちがいないのにあの歓声。ローディーさんはさぞやりにくいだろう。
そして開演時間を少し過ぎた頃、電気が一斉に消え、お決まりのSEであるThe Whoの「A Quick One While He's Away」が鳴り響いた。その時の大歓声は先ほどのサウンドチェックとは比にならなかった。その後、アルバムに収録されているインスト曲「星の鳥」が流れ、幻想的な雰囲気のなかメンバーがステージへ。当時はテレビ露出もほとんどなかったので、雑誌を動く彼らを見る機会はめったになかった。本当に実在するんだ、、、とようやく実感がわいてきたところで、最後にやってきた藤くんが黄色のレスポールスペシャルを掲げ、ライブの始まりを告げた。
その日のライブのセットリストは以下の通り
01.星の鳥
02.メーデー
03.才悩人応援歌
04.ランプ
05.アルエ
06.ハンマーソングと痛みの塔
07.ひとりごと
08.ギルド
09.花の名
10.arrows
11.飴玉の唄
12.真っ赤な空をみただろうか
13.かさぶたぶたぶ
14.ダイヤモンド
15.天体観測
16.supernova
17.星の鳥 reprise
18.カルマ
En
01.ダンデライオン
02.ガラスのブルース
アルバムの流れ通りに「メーデー」からスタート。
「君に嫌われた君の沈黙が聴こえた」と藤くんが歌いだして一気に鳥肌が立った。本物がわずか数メートル先で歌ってる。なんだこれは。どういう状況だ。理解が追いつかない頭を置いてライブは進む。トリッキーなリフから始まるバンプとしてはダークな「才悩人応援歌」に続いて演奏されたのは「ランプ」と「アルエ」!高校時代、MDウォークマンで何百回と聴いてきた、バンプとの出会いの曲が立て続けに披露されてもうすでに涙で前が見えなかった。
その後もMCはそこそこにorbital periodの曲を中心にライブは進んだ。アルバムを聴いている時はあまりハマらなかった「花の名」「arrows」「飴玉の唄」のミドルテンポの曲の世界観はライブで補完された。時折祈るように歌う藤くんの姿も相まって、それはとても美しかった。
いよいよ終盤。「ダイヤモンド」「天体観測」とバンプの代名詞とも言える曲も飛び出し、「星の鳥 reprise」から「カルマ」へ。この日一番の盛り上がりだった。
本編を終えてすでに声は枯れていたが、必死に声を振り絞ってアンコールを求めた。しばらくしてライトがつき、メンバーが再び登場。すこしリラックスしたのかこの会場の独特の立地と雰囲気が気に入っていて、ここで自分たちの企画をした話(BAUXiTE page 1;対バンはsyrup16g、ハックルベリーフィン、BURGER NUDS)など和やかにMC?談笑を挟んで「久しぶりの曲やります」から放たれたのは「ダンデライオン」。カントリー調のメロディーとこれぞバンプという物語のような歌詞で人気の曲である。
「最後の曲です、ガラスのブルース!!!」最後に披露されたのはバンプの始まりの曲。お決まりの合唱があることは知っていたので、後悔しないように歌った。会場が一つになる。これ以上無い大円団だ。
ライブは2時間ほどで終わった。体感にしてみれば一瞬であり、しかし永遠のようにも思えた。買ったばかりのツアーTシャツは汗でぐちゃぐちゃで、人に揉まれて毛玉ができていた。
ライブ直前は沈黙していた友達との会話は高揚感に引きずられるように盛り上がり、チャリを漕ぎながらいつまでも喋っていた。大学を全休して物販に並んだ友達は帰り道にファミレスで飯をおごってくれた。やっぱりこいつはいい奴だ。
このライブに行ってから11年半が経つ。ついに30代に突入にして筋肉痛が遅れてやってくるようにはなってきたけど、それでもこうやって記憶には焼き付いている。これから先も素晴らしいライブに何度も遭遇するだろうし、バンプのライブにも足を運ぶだろう。でもこの日のようにいつまでも覚えていられるだろうか。わからないけど、特別な日はめったにないからこそ価値があるんだと思う。その特別な日に出会うためにライブには通い続けたい。