Noli me tangere〜私に触れるな〜無事終了!
ライブに来てくれたみんな、そして、企画してくれたタオンガ・戸田さんに感謝を込めて。
長くなるけれど、昨日配布したテキストです。
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No distance, No time, No border
距離も時間も、国境もこえて
人生を賭けた仕事を「不要不急」と言われ、コンサートはキャンセル続き、フリーランスの演奏家は政府に 守られることなく社会的弱者とはこう言うものか、と思い知らされて2年が過ぎた。
私はなぜ、音楽をしているのだろう。
この仕事は誰かのために今、役立っているのだろうか。
それでも私は音楽を続けている。 なぜなら、他でもない、自分自身が演奏することを必要としているからだ。 溢れでる強い想いを表現することなく胸に抱え込んでいたら、発狂してしまうだろう。
一般の人が音楽に求める「癒し」や「慰め」などとは比べ物にならない感情が、自分の中にはある。
日本では「平均的」で「優秀」であることが求められ、「出る杭」は決して好まれない。
コロナ禍でも同調圧力が蔓延り、自分自身で考え、行動することは疎ましがられている。
しかし、この国で生きにくさを感じたとしても、当然ながら一歩外に出れば、全く違う文化や価値基準があ るのだ。
そして、文化芸術に対してのリスペクトを失った国は、経済的にいかに発展していると言っても先進国とは 呼べないのではないか。
何を選択して生きていくのか。
私は、生き長らえながら死んでいるような生活よりも、明日、死んでもいいような生き方がしたい。
日本で仕事が全てストップしていた去年の春、いち早く芸術活動が始まったフランスのミュージシャンから ツアーの依頼があった。
東京で燻っているよりも、リスクを冒してでも演奏できる場所へ行こうと思った。
素晴らしい経験をした。
そしてまた、4月に南仏へ。
一寸先は闇、渡航できるのか、帰国はできるのか。綱渡りの旅だ。
しかし今、安全な距離に住んでいる人と会うより、遠く離れた国の演奏家と親密なコンタクトを取っている という事が、全てを象徴しているような気がする。
私たちにとって音楽活動は「不要不急」ではなく必要不可欠なもの、今だからこそすべきこと、なのだから。
No distance, No time, No border
この言葉は地球の反対側、アルゼンチンのブエノスアイレスのラジオで私の曲がオンエアされた時に、パー ソナリティーの方が叫んだ言葉だ。
距離も時間も、国境も越える。
私たちには、「音楽」と言う魔法の杖があるのだから。
小川紀美代(バンドネオン奏者)