「センスがいい」とはどういうことか?
嬉しいことに、わたしは昔から「センスがいいね」と言われてきた。
これだけ書くと「なんだ自慢か」という風に受け止められかねないがちょっと待ってほしい。
「センスがいい」って何だろう?
まるで風船のようにふんわりとしているその言葉を強く抱きとめることができず、これまで投げられては空に放ってきた。自分の自信にはあまり繋がってきたとはいえない。
人は「私は○○のデザインができます」「私は○○の言語が書けます」と胸を張れても、「私はセンスが良いんです」とは面と向かって言うことはできない…と思っている。
わたしは一度だって言ったことがない。というか、口が裂けても言えない。
(万に一つの確率でそう名乗ったとしてそんなこと言うヤツを一体誰が信用するだろうか)
🌿そもそも「センスがいい」とはなんなのか
コラージュを作れば「感性が良い」
写真を撮れば「いい空気を切り取るね」
絵を描けば「あなたの絵は絶妙だ」
企画を挙げれば「嗅覚が良い」
そうして最後にはみな口を揃えて
「センスが良いんだね」と言う。
(ありがとうございます)
言われたらそりゃあもう天にも昇る心地。褒めてもらえて素直に嬉しい。
しかし「じゃあ何か目に見えたスキルがあるのか?」と問うても答えはNo、決してそうではないのだ。
二言目にはこうだ。
「なんか、こう、雰囲気がいいんだよ。しっくりくるんだ。」
一体全体なんなんだ、私が持っているスキルとやらは。
頼む、誰か教えてくれ。
そんな折に、昨日ちょっと衝撃的なことがあった。
🌿誰でも人が美しいと感じる「黄金比」
わたしが撮った写真をフリー素材として公開しているサイト「Odds and Ends」を利用してTwitter上でスケッチ練習をしている方を発見したのだ。
個人的に衝撃たったのは「黄金比」を用いてわたしの写真を解剖してくださっていたこと。
■黄金比とは
近似値1:1.618、約5:8の安定的で美しい比率とされる貴金属比の一つ。
また、黄金比は「神の比」とも呼ばれている。
エジプトのピラミッド、ダヴィンチのモナリザ、Twitterやペプシのロゴにも用いられていることでも有名な比率だ。
つまり、簡単に言うと誰でも「美しい」と感じる比率が黄金比。
そして今回、わたしの写真をその黄金比に当てはめていただいていた。
なるほど…。
なんとまあぴったりな感じで、我ながら感心してしまった。
🌿空っぽじゃないと生み出せない世界
話は変わり、「作品を作るとき、何を意識してますか?」と聞かれることが多々ある。
わたしは写真を撮るときやコラージュを作るとき頭の中に何も描いていない。空っぽの状態にしている。むしろ空っぽじゃないと何も生み出せない。
その時々の気分に合わせて心地良い音楽をかけ、空っぽの状態で画面や風景に向かう。
気がつくと夜が明けていることもある。何時間も同じ姿勢で頭の中に潜る。そういう状態で作品作りをする。
だから「人が美しいと思う配置はこれで〜」「黄金比を意識してこの形に切り取ろう」なんて一度たりとも考えたこともなかった。
そんな状態で生み出したものたちを「誰でも美しいと思う比率に則っています」と言われ、心底驚いた。
と同時に「これが『センスが良い』の正体か…!」と腹の底から腑に落ちた。
まるで何十年も絡まっていた糸の塊がスルッと解けたときのような快感だった。
🌿「センスがいい」の正体はいかに
実は黄金比に当てはめてみたらピタッとハマっていた!という経験はこれだけじゃなかった。過去に作ったコラージュでも全く同じことがあったのだ。
前は「まぐれだろうな」と思っていたけれど、今回他人に解剖していただいたことによって不確かだったものの輪郭が見えてきた。
「センスが良い」「しっくりくる」「雰囲気が良い」と思ってもらえるような、誰もが美しいと感じるバランスの作品を無意識で生み出せる。
これがわたしの誇れることなんだ。
特段オチがあるわけではないのだけど、自分の抱えていた謎をひとつ解き明かすことができてどこかに書き留めておきたかった、というお話でした。
スッキリしたものの、今後とも「私はセンスが良いんです」とは言える気はしないが、口にせずに「私はバランス感覚に自信があります」とひっそり胸を張れる気がする。
小さな自信に繋がった。視界が晴れて嬉しかった。
これからは貰った風船を強く抱きしめることができそうだ。
さて、もうすぐパスタが茹で上がる。今日は大好きなボロネーゼにしよう。
{ kimix }
女子カルチャーおたく。絵を描いたり、写真を撮ったり、マーケティングやプロデューサーをしたりしています。かわいいものを作ること・伝えることが好き。ブランドを作りたい。おでんと銭湯が癒やし。
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