私の息子は風邪をひかない〜インフル狂想曲

2017年2月

4-2が学級閉鎖だって…
インフル
下から上がって来てたもんね
もう隣のクラスまで来たから
気を付けないとだね

おかえりー
今日はおやすみ何人だったの

10人かぁー

うちのクラスもそろそろかも

息子は耐えてる
大丈夫

と
思ってたら

ん？ごはん残すの？

あまり食欲がないね？
そう言えば顔が赤いような

触れたほっぺが熱くて

これは微熱があるね

37度
今日は早く寝よう



まさかの夜中
暗闇で目覚めた

隣で寝ている息子の体
熱く
触れた肌から伝わり起きた

ドキドキしながら
薄暗闇のスポットを照らし
目を凝らして見た体温計

42度って


朝

着替えて
寒いと言う息子を
タオルでグルグル巻きにして

出発

予防接種したのにな
今まで小学校4年間
休んだことなかったのにな
つい考えてしまう

さぁ！

待合所で貰った薬
すぐ飲もう
辛いね

熱い息子を抱く
辛いよね


え？

もう平気？
そんなに早く効くの？
お腹空いたって？
食べられるのかな？

お薬すごい

もりもり復活


学校停止は五日間
熱もないし
元気過ぎる数日

ホント
元気になって
良かった


あれ？

わたし

何かが変だ
クラクラする
ギシギシする

体が痛くて

布団から

起きれない

土曜だけど
もう起きなきゃ
ご飯

朝ご飯作らなきゃ

でも
起きれないんだ


おーい

おーい

聞こえるはずもない
貧弱な声

たすけて

必死

耳を澄ませば

物音もなく
気配もない家


みんないない？


出掛けたの

ひとりなの

…

耐えるしかないの


多分これは
いや確実に

罹った

そう
移った

やっぱり
貰った

息子のインフル

わたし
予防接種してない

この歳で
初めてのインフル

そうか
これがインフル

頭が痛くて
体が痛い

ギシギシ

絶えず

涙が溢れて
悲しさが溢れて

こんなにも
辛いもの

涙目で見る
滲んだ39度

40度も出ていない
耐えよう

汗をかけば
楽になるはず

薬を飲めば
治るはず

湿った体から
どんどん
どんどん

出れば

冷えるはず
終わるはず

なのに


汗が出ない？
喉もカラカラ？

そうだ
そのはず

必死に求める
水分

何もない部屋に
動けない体があって
耐えるしか

ない

「まだ寝てるの」

インフル…移った…水…

「病院もうやってないから明日」

悲しい
涙が止まらない

どうして
汗が出ないのに
涙は出るの

頭が痛い

頑張って
汗をかこう
水分を摂って

飲んで

しっかり

飲んで


やっと出てきた
汗でベタベタ
布団も何もかも湿って熱い

起きて
頑張って着替える

それなのに
すぐびしょびしょ
何度目かで諦めた

もういい

だって酷い頭痛
グルグル目が回る
クルクル回転している

全てが

何もかも

寝ることも出来ない
寝たら全てを忘れられるのに
解放という名の全て


暗闇に目を凝らすと
目の前に
キラキラ輝く何か

あれは何？

何かの集合
動いている

それを必死に集めてみる
積み上げて固めてみる
きちっと嵌めて

完璧を求めた

それは
必死に集める悲しさと
終わらない哀れみの集合

けれど
やらざるを得ないでしょう

それなのに
集めたのに…



動いてはならない

動いてはいけないのに！


ピッタリ嵌ったそれが
寝返りで崩れた

暗闇で煌めく脆い万華鏡のように
それが分離する…

離散する…

ああ
初めからやり直し…

また積み上げて
隙間なく埋めていく
辛く気の遠くなる
作業の繰り返し

暗闇でキラキラと
チカチカするそれを

ひたすら

ひたすらに
集めて嵌める

同じようでいて全く違うけど
それぞれ色味は一緒な　それ

チカチカ点滅している
不思議な　それ

互いが全く関係ないものの集合体
だと思われる　それ

それ　は発光する
モザイクアートのようで

永遠に完成しない
小さくて細密な
絵のないジグゾーパズルのような

それ

それ　はとても脆くて崩れやすい

万華鏡のように
クルクルと
目が　体が
回転しているから

何度も何度も繰り返す作業
やっと出来たのかも知れないと

思うのに

寝返りで全てがやり直し

絶望


どのくらい経ったのだろう
終わりが来るのか分からない

モザイクの世界を作り続ける私
万華鏡にように脆くて
悲しい作業

もっともっと密に
一つ一つ編み込んで
しっかり固めているはずなのに

砂の城のように崩れ落ちてしまう
散り散りに壊れてしまう
すり抜けて

なくなってしまう

寝返りを打ちたくないのに
私の体は辛くて

動く

身動ぎ一つで
台無しになると分かっていても

動いてしまう


インフルは
そんな作業

初めての
インフルは
そんな作業

解放を願い

広くてどこまでも明るい空を
想像して

解放を求めて

飛び立ちたいんだという
切実な気持ち

よく分かった



「病院に行くよ」
「着替えて」

動けないのに

無理

私の中に怒りがまだあった

体が
泥のようとはこのことか

一晩寝ずに苦しんで
やっと薬が飲めるのね

薬
薬
薬が

立てなくて
歩けなくて
支えられて

車椅子
情けない

待合室で横になって
みっともない

だって体が真っ直ぐに
ならないから

薬頂戴
水頂戴

待合室で
楽しみにしていた
テレビ中継

時差があるのでちょうど今
目を開けなければ
しっかり

必死に

今だけは目をしっかり開けて
見なければ

羽生結弦が4回転アクセルを
跳んだように見えた

すごい

ついに

さらっと

跳んだのね

やっと



来年は絶対に
予防接種を受ける

絶対に

二度と罹りたくない
インフルエンザ


目覚めてから知った

この時羽生結弦は
4回転アクセルを
跳んでいないことを

ーーー
インフルでコレだから
新型コロナはきっと耐えられないと
そう思って

徹底防御

いまだに
コロナに罹患していない
私と家族
共に4年間耐えた

罹らない努力続行！