行方不明展に行った話
この感想はネタバレを大いに含みます。
まず一度でも「消えたい」と思ったことがある人なら行くのがおすすめです。消えたい欲を発散できます。
とはいえもう日時指定券は終了しているので期間指定券(主に平日)のみになりますが。
【感想】
とにかく面白かったといいますか、興味深かったです。
いろんな「不明」がありますけど総じて人、人とのつながり、といった総評。
「消えたい」妻と「死にたい」夫の展示物にあるように「消えたい」と「死にたい」は明確に私の中では違っていて、「消えたい」って存在を消したいんですよ。自分そのものがいなかったことになりたい。「そんなひといたっけ?」っていうの、自分という存在がいる状態だとこの上なく哀しいものなんですけど最初から戸籍も何もかも存在してなければ自身も含めて誰も哀しまない。
行方不明展の解説文にはその願い通りほとんどの人の記憶から存在が消えてて「そんな人はいない」みたいになっているけど、行方が消えた本人に近しい人ほどそうはならない、ほとんど思い出せなくても消えてはいない描写に切なさみたいな、消えたい本人にとっても、消えてほしくない家族や配偶者側からにとっても、苦しみからは抜け出せない辛さみたいなのを感じ取りましたね。
なんかフルーツバスケットという漫画の「大切に思ってくれる他人が一人もいないなんてそんなことあるはずがない」というセリフを思い出します。
逆に言えば完全に消えるっていうことはいくら孤独を貫こうが人と関わらないようにしてようが現実世界で生きている限り不可能、という新たな苦しみでもあるんだなぁ。
まあ観測できるのは「失敗ケース」だけなので、完全に痕跡も記憶も消えた成功例はそもそも観測できないんですけどね。面白いなぁ。
会場を出たときにフィクションなのに身につまされたような感覚に陥りながら近くの天丼屋に並んで天丼美味しいしてきました。おいしかったです。
こんなこと考えながらも消えたら描いた漫画もなかったことになるのは嫌だしまだ創作はコツコツ一人でもやっていきたいのでしぶとく生きてるでしょう。
【追記】
この方の感想すごく分かりやすかったので共有。
全体通して「行方不明になって別の世界にいったとして、その先で上手くいく保証がない、行った先の方で後悔するかもしれない」というメッセージが強くて「そんなの分からないじゃん?」とか思ってたんですがなるほど、実際に消えようとする人が出ないための配慮だったのか~~~確かにあれら見て日ごろから孤独感じてる人は実行に移しかねないもんね。やさしさだ……。