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「車上ねらい」と「車上荒らし」どちらが正解なのか?

駐車中の車から金品を盗む行為を「車上ねらい(狙い)」や「車上荒らし(あらし)」と呼びます。

では、この「車上ねらい」と「車上荒らし」のどちらが正解なのか

どっちでもいい、と感じる方が多いかもしれませんが、広報紙などを作成する方にとってはちょっと詰めて正解を探したいところでしょう。

ところが、グーグルで「車上ねらい 車上荒らし 違い」と検索してもどうやら正解を示してくれているサイトは存在しないようです。

そこで、今回は「車上ねらい・車上荒らしのどっちが正しいの?論争」を終結させます。

そうだ!Wikipediaで調べてみよう!

Wikipediaで検索すると、どちらの名称でも「車上狙い」とヒットします。

そうか、車上ねらいが正解なんだな!と答えを決めてしまうのは早計です。

車上狙い(しゃじょうねらい)とは、自動車等の積荷や車両内から現金や品物を盗むことである。車上荒しとも呼ばれる。
Wikipedia「車上狙い」

車上荒らしとも呼ばれる…などという曖昧な解説によって、Wikipediaは「どっちでもいい、どちらも同じ」としています。

よし!報道の表現を調べてみよう!

窃盗事件のニュースを調べていけば、報道がどんな表現を使っているのかがわかります。

ニュース番組や新聞記事は正確な日本語を使うように心がけているはずなので、ここに正解がありそうな気もするのですが…

では、いくつかピックアップしていきましょう。

保育所に"お迎え"の車狙う車上荒らし 「無職で金に困っていた」52歳男を逮捕
新開町で車上荒らし2件続く、苫小牧署「車内に 荷物を置かないで」

どうやら報道では「車上荒らし」のほうが有力なようです。

もしかして、記者ハンドブックには「車上荒らし」と表記しているのかもしれませんが…

※ニュース記事なのでリンク切れしてしまうかもしれません…

正解は「車上ねらい」

ネット代表のWikipedia、正しい日本語代表の報道の見解がわかれたところで、この疑問の正解を明かします。

正解は「車上ねらい」です。

「ねらい」は「狙い」ではなく、ひらがなで「ねらい」と表記します。

本当に「車上ねらい」が正解なのかを確認するために、警視庁のサイトをみてみましょう。

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「自動車盗、車上ねらい」の防犯対策|警視庁

たしかに、ここでは「車上ねらい」と表記されていますね。

窃盗は「手口犯罪」と呼ばれる犯罪です。

ひとつの罪名に対して、その方法や目的によって「手口」を分類する犯罪を手口犯罪といいます。

窃盗の手口は、市民に公開されるさまざまなデータ・統計に用いられるため、とくに厳密な判断が求められています。

Wikipediaが言うように「どちらでもいい」わけではなく「車上ねらい」と呼ぶのが正解です。

なお、手口犯罪に分類されるものとしてもうひとつ有名なのが「詐欺罪」です。

結婚詐欺・不動産詐欺・振込め詐欺・無銭・無賃など

こちらも統計として公開される機会が多いので、正確な手口分析が求められています。

「ねらい」と「荒らし」の違い

警察では「ねらい」と「荒らし」を明確に定義して使い分けています。

「ねらい」に分類されるのは非侵入窃盗です。

不法な侵入を伴わない方法で窃盗をする手口で、主に屋外における窃盗が該当します。

もう一方の「荒らし」に分類されるのは侵入窃盗です。

他人の住居や建物、敷地への侵入を伴う手口で、窃盗事件としては悪質だと評価される部類に属します。

車の中に入るから「侵入」なのでは?

侵入を伴わないなら「ねらい」で、侵入を伴えば「荒らし」になるというところまでは理解できたとしますが、まだ疑問を感じる方もいるでしょう。

だって、他人の車の中に入るのだから「侵入あり!」になるような気がしますから…

ここでいう「侵入」とは、刑法第130条の住居侵入罪・建造物侵入罪にあたるものと考えられます。

(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
刑法|e-Gov

刑法に照らすと「不法な侵入」とみなされる場所は、他人の住居や看守する邸宅(つまり空き家)、ビルや施設などの建造物、豪華客船や自衛艦などのように生活できるレベルの大きな艦船に限られます。

つまり、他人の車に無断で乗り込む行為は「不法な侵入」とはいえません。

侵入を伴わないため、その場で窃盗行為があっても非侵入窃盗に分類されます。

なお、侵入に近いもので軽犯罪法第1条32号も挙げられますが、こちらは規制される場所が「立入禁止の場所や他人の田畑」なので、やはり車は対象外です。

同じような使い方で紛らわしい手口

この「車上ねらい」の理屈で考えると、ほかにも紛らわしくて「どっちが正しいの?」と悩んでしまう手口名もはっきりと正解がわかります。

自販機荒らし→☓
非侵入なので「自販機ねらい」が正解
工事現場荒らし→☓
やはり侵入を伴わないので「工事場ねらい」が正解
※工事現場ではなく「工事場」といいます。
さい銭荒らし→☓
侵入がないので「あらし」にはなりません。なお、手口名としては「さい銭盗」が正解です。

また、屋内であっても「侵入した」とはいえない手口では「ねらい」になります。

職場ねらい
同じ職場内で同僚の金品を盗む手口です。屋内でも不法な侵入がないので「ねらい」になります。
※部外者が侵入して盗んだ場合は「事務所荒らし」などの侵入窃盗に該当します。
脱衣場ねらい
公衆浴場などの更衣室でロッカーなどから金品を盗む手口です。入浴客などによる犯行なので、屋内でも「侵入した」とはいえません。

どちらを使っても意味は通じるが…

「車上ねらい」と「車上荒らし」のどちらが正しいのかというと、警察の手口分類のうえで使用されるので「車上ねらい」が正解です。

とはいえ、どちらを使っても大抵の人には「車から金品を盗むこと」という意味で理解してもらえるでしょう。

すると、やはり「どっちでもいいじゃない」と思う人がいるかもしれません。

たしかに、どちらでも正しく意味が伝わるはずなので、単に会話のなかで登場するだけならどちらでも問題はないのでしょう。

しかし、その使いどころが広報紙であったり、自身が開設しているサイトであったりすれば、やはり正確な表現を用いるべきです。

ぜひ今後は「車上ねらい」で統一して使うようにしましょう。


タイトル画像|photoAC

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