義実家がやってくる!ヤァ!ヤァ!ヤァ!Part3
そんなこんなで義妹一家が引っ越してきた。
自分なりに頑張ってメッセージを送ったり、会話をしながら毎日が過ぎていく。
「サンポ、イキタイカ?」
「昼飯ヲ食ウ。来ルカ?」
「買物イクゾ」
私なりに懇切丁寧に送ったはずのメッセージだが、見返すとかなり上から目線。
この頃は文章を書くときは必ずGoogle先生にお世話になっていたはずなんだけどなぁ。
今なら、ちょっとスペルや文法間違えたくらい些末なことよ...と優雅に茶をしばくこともできるが、当時の私は一言一句間違えてはならねぇ、と血眼になって調べ上げたものだった。
とにもかくにも過ごしていくうちに最初の難関にぶち当たった。
お役所関係である。
義妹家族を連れて市役所へ行き、住民登録をすることになった。
が、ここで当然アメリカのシステムと違うので質問攻めを喰らう。
住所の登録は何のために必要なの?
ヘイセイ?ショウワ?グレゴリオ暦ではないの?
ローマ字って何?
ハンコは何に使う?サインではダメなの?
国民保険?これはどういった保険なのか?
待ってくれーーーーーッ!
私、リスニングはできてもスピーキングができねぇんだよーーーーーーッ!!!
どうしよう、どうしよう、とパニクった挙句とった手段はGoogle先生だった。
「住民票 英語」と打ち込み、義妹に画面を見せる。
すると彼女は
Okay, but for what?(何のために?)
と訊いてきた。
そうしたら私は「住民登録制度」と調べ、出てきた文言をGoogle翻訳へとコピペして再び画面を見せる。
側からみると何とも…な光景だが、これを繰り返しているうちに、なんだかやり取りがスムーズになってきたではないか。
しかも単語も覚えられちゃう。
結構いいじゃん!
自分の中で理解できる内容は噛み砕いて、簡単な言葉に再翻訳して自分の言葉で伝えてみる。
その中で文法に誤りがあれば義妹がやんわりと教えてくれる。
なぁんだ。
別に文明の利器に頼ったっていいんじゃん。
画面突きつけるのって失礼かなぁと思っていたけど、案外単語やフレーズを知るきっかけになる。
間違えてても、逆に向こうが察して教えてくれるし。
これは行ける!!!!!!
勝利(?)を確信し、今日はもう余裕だぜ。と思った矢先に、窓口からお呼びがかかった。
「北村様〜」
書類に不備があったかな?とひょこひょこ窓口へ行き、担当者の言葉に私は固まった。
「この度転入されてきたご夫婦の、婚姻関係を証明する書類の原本とその翻訳文はありますか?」
何それ。
アメリカ人のパートナーはいるけど正式に結婚してないから婚姻書類については全くの無知、ていうかそもそもアメリカとか行ったこともなかったのでどういった制度があるとかよく分かっていなかった。
婚姻証明書?
外国人の転入について調べてもそんなの書いてなかったじゃん!
しかし奇跡的に義妹が持ってきてた。
超ナイス。
残るは翻訳文。
「すみませんあの、翻訳文がなくてですね...これがないとどうなりますか?」
「転入受付ができません」
まじかよ。
「本職の方の翻訳である必要はないので、北村様が今この場で翻訳して、ご住所とご署名をいただければ受付できますよ」
担当者はこともなげに言ってのける。
それができたら苦労しないよ!!!
とはいえ、ここまでで2時間ほど経過していた。
バイリンガルの友達は多忙、元パートナーもかしこまった日本語が書けるとは思えない。
やるしかない。
証明書には双方の婚姻歴や仲人の情報なども記載されているので、念のため義妹とその夫に了承を取って、窓口でもらったコピー用紙に翻訳文を書き込んでいく。
Countyって何だ、国じゃないの。
Sherifってあれだろ、西部劇で出てくる警官みたいなやつだろ。
なんでこの単語が出てくるんだ?
Google先生に訊きまくる。
何これ、何これ。
かしこまった条文みたいなものは今でも読むのが苦手だが、とにかく小難しくて長い単語の羅列ばかりだ。
幸いにして国語は得意だったので、前文と後文はそれっぽく文章を整えて、必要な情報だけは確実に正確に書き込んでいく。
結局1時間くらいかけて書き上げた。
達成感半端ない。
多分翻訳文としては完璧な物じゃないだろうけど…。
自分の住所と署名を書き込んで、窓口に提出した。
「ありがとうございます。こちらで結構です」
感無量とはこのことだね。
これから転じて、今では知人友人に頼まれて役所で通訳したり、仕事で書類の取り回しを英語でできるようになったんだから人生何が起こるか分からない。
このときはまだ、自分がペラペラ話せるようになるなんて思っていなかった。
けれどこの経験が、とどのつまり大事なのは失敗を恐れないことであると教えてくれた。
やればできる。
っていうか、案外なんとかなる。
ここから、今の私の「とりあえず身振り手振りとGoogle先生さえいれば何とかなる」精神が始まった。
これを言うと「えーうそぉ?」とか言われるけど本当なのよ。
大事なのはコミュニケーションを取ろうとする姿勢だぜ。
みんなも「コンニチハ!」って頑張ってカタコトでも声かけてくれる海外の人、微笑ましいなって思うでしょ。
おんなじよ。
そんなこんなでアメリカ人の義妹家族とすごしていくうちに、調べる癖とiPhone片手に単語を訊く癖も功を奏し、気がつけばおぼつかないながらも日常会話くらいならなんとかできるくらいに成長したのである。