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夏も終わるしここらで怪談話など一つ

『うつらない』

これは私が中学生のころの体験談です。

私の学校では夏季の林間学校(※)で長野県の諏訪湖周辺の宿泊施設へ行っていました。
※山中へ泊りで行き、飯ごう炊飯やレクリエーションをする行事

この諏訪湖、最近でこそ映画「君の名は」の聖地としても知られる観光スポットですが明治時代には近隣の製糸工場で働く女学生たちが過酷な労働環境から投身自殺を図ったという県内有数の心霊スポットでもあったそうです。

宿泊施設に到着した私たちは、集合写真を撮った後、外にあるキャンプ場で飯ごう炊飯をしてカレーを食べ、就寝準備をしていました。

夜、消灯時間の少し前、同じクラスの女子が飯ごう炊飯をした場所に忘れ物をしたということで私と彼女の二人で連れだって取りに行くことになりました。

手分けして忘れ物を探していたところ、自分の背後を探していた彼女が突然

「キャーーーーーーー!!」

と大きな悲鳴を上げました。

その声に驚いて彼女に駆け寄ると、彼女は顔面蒼白になりながら、

「あの木の陰から・・・びしょ濡れの女の人がこっちを見てたの。」

と震える手で、キャンプ場近くの森の方を指さしていました。

私も恐る恐る森の方へ目を向けましたが、すでにそんな人影は見て取れず、

「そんな人はいないよ?大丈夫。きっと袋か何かを見間違えただけだよ。」

と彼女をなだめながら、部屋に戻りました。

怖がる彼女を同室のクラスメイトに預けて部屋に戻り、その日はそのまま就寝しましたが、暑さのせいか冷や汗のせいか、ひどく寝苦しかったのを今でも覚えています。

翌日はレクリエーションの日でした。
急流下りを選択していた私のクラスは川沿いの道を山登りさながらに登っていました。

昨夜のことも気になり彼女の横に行くと、彼女も怖くて眠れなかったようで、ひどく疲れた顔をしていました。

気を紛らわせようと話をしながら歩いていると、ふと彼女が川の方に目を向けました。

「あ…」

と小さく声をあげ、彼女は突然川の方に走り出していってしまいます。

近くのクラスメイトに先生に伝えるようにお願いして後を追うと、彼女は川のそばの背丈ほどの岩に登って座り込んでいました。

近づいてみると、彼女は昨夜探していた忘れ物を握りしめていました。

「見つかってよかったけど、なんでこんなところにあるんだろう」

と怪訝な顔をしていました。

風で飛ばされたんだろうと、はぐらかしながら戻ろうと促して、私が来た道の方を振り返った瞬間、背後から

「きゃっ!!」

と彼女の悲鳴と何かが水に落ちる音が聞こえました。

振り返るとそこには川に落ちた彼女の姿。

浅かったので流されることはなかったのですが、その浅さのせいで、岩から落ちた彼女の左足はありえない方へ曲がっているのが見て取れました。

急いで駆け寄り、彼女を川から引き上げようと手を伸ばすと彼女は

「誰かに足を掴まれた」

と泣きながら呟いていたのを聞いてしまいました。

寝不足で足を滑らせたんだろうとなだめながら引き上げたところで、後を追って来た先生たちが追いついたので事情を話すと、彼女は近くの病院へ搬送されました。

左足は手の形のような内出血とともに、やはり骨折していたそうです。

楽しいはずだった林間学校は1人の負傷者を出してしまい苦い思い出になってしまいました。

しかし話はこれだけでは終わりませんでした。

彼女のセリフに若干のうすら寒さを感じながら林間学校から帰ってきた数日後、現像され貼り出された集合写真を見て私は背筋が凍りました。

集合写真に写った彼女の、しかし左足だけは、まるで何者かに奪われることを暗示していたかのように、写真に写っていなかったのです。

おわり

あとがき

ということで!
とあるお気に入りのストリーマーの方の怪談朗読大会に投稿した私の怪談話でした!
若干の脚色は入っていますが、ほぼ実体験です
(投稿された中で一番の長さだったそうで、気合い入れすぎました笑)

いまでも鮮明に覚えていたのでこれを機会に文章化!
ということでこちらにも投稿させていただきます

まだまだ暑い日は続いてますが、気づけば8月もそろそろおしまい!
納涼怪談大会のネタにでも、おひとついかがでしょうか。


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キミカギ(Kimikagi)
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