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玄関の向きが暮らしを変える

私は「玄関は道路側に向いていない方が好きです。」という話。

私の単なる個人的な好みの話。あくまでも個人的な好みによる意見ですので、敷地の形状や周辺環境、住まい方によってこの限りではありません。
これはなんとなく感覚の話になるのですが、玄関が道路側にダイレクトにつながると感覚的に落ち着かないのです。玄関を開けたときに完全に道路に対してオープンな状況になってしまうことが気持ち的に落ち着かないのです。また、デザイン的にも玄関が見えないほうが住宅ならではの生活感を表に出さないファサードになるのも好きです。道路から少し奥まった位置にあると、アプローチを歩いて玄関まで行く間の風情が好きだったりもします。車からのアクセスが遠くなることもありますが、2〜3歩の話なので実際は気にするほどのものではないと思っています。玄関までの道のりがお客様を迎える程よい余白としてのアプローチを考えてみてはいかがでしょうか?

家づくりを考えるとき、多くの人が「間取り」や「外観デザイン」に注目します。しかし、住まいの印象や居心地を決定づける要素は、それだけではありません。今回は「玄関の向き」について考えてみたいと思います。

玄関は道路に対してオープンであるべきか?
玄関は家の「顔」とも言われますが、その顔がどこを向いているかによって、住まいの雰囲気や住み心地は大きく変わります。多くの住宅は、道路に面した位置に玄関を配置することが一般的です。それは、動線の効率や利便性の観点から、当然の選択肢と言えるでしょう。しかし、道路に対して玄関がダイレクトに開かれることには、メリットだけでなくデメリットもあります。
例えば、玄関の扉を開けた瞬間、目の前が道路というのは、プライバシーの観点から少し落ち着かないものです。特に、交通量の多い通りに面している場合、人の視線を感じることが多く、無意識のうちにストレスになることもあります。
また、デザインの観点から見ても、道路側に玄関があると、住宅としての「生活感」が表に出やすくなります。郵便受けやインターホン、表札などが視界に入り、家のプライベートな部分が半ば公の空間と繋がってしまうのです。そのため、個人的には「玄関は道路側に向いていない方が、住まいとしての落ち着きが生まれる」と感じます。

緩やかな程よい距離の玄関アプローチ

「玄関の奥行き」という余白の価値
玄関が道路に対してオープンでない場合、必然的に「アプローチ空間」が生まれます。このアプローチは、単に玄関までの通路というだけでなく、住まいに「余白」を生み出す重要な要素となります。
例えば、玄関が少し奥まった位置にあると、住まいの外観に奥行きが生まれ、落ち着いた印象になります。訪れる人は、アプローチを歩くことで「家に入る」という感覚を自然と持ち、玄関に到達するまでの時間が心の切り替えを生む役割も果たします。
また、植栽や小さなベンチを配置することで、玄関までの道のりを単なる通路ではなく「迎え入れるための演出空間」とすることもできます。お客様が訪れたときにも、玄関の扉を開けるまでの間に、その家の雰囲気を感じてもらえるのです。

車からのアクセスと利便性のバランス
「道路側に玄関がないと、車からのアクセスが不便になるのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、実際には、玄関までの距離が2〜3歩長くなる程度であれば、それほど気になることはありません。むしろ、駐車スペースから少し歩くことで、家に入るまでの心の切り替えができるというメリットもあります。
都市部の住宅では、限られた敷地の中で車と玄関の位置をどう配置するかが課題となりますが、すべてを効率的にまとめるよりも、あえて「余白」を設けることで、住まいとしての魅力が増すことも多いのです。

要素の少ないスッキリしたファサード

デザインとしての玄関の「見え方」
住宅のファサードデザインを考えるとき、玄関の存在感は意外と大きな影響を与えます。道路側に玄関があると、建物の正面に玄関ドアが位置するため、どうしても「住宅らしい」見た目になります。しかし、玄関を側面や奥まった位置に配置することで、建物のファサードがよりシンプルで洗練された印象になります。
特に、ミニマルデザインやモダンな住宅では、玄関を目立たせないことで、建築の造形そのものを引き立てることができます。玄関の位置を少し工夫するだけで、全体のデザインバランスが整い、より洗練された佇まいを実現できるのです。

玄関前に板塀をつくり干渉エリアをつくる

暮らしの快適性を決める「見えない工夫」
玄関の向きや位置を工夫することは、デザインだけでなく、暮らしの快適性にも直結します。例えば、玄関が道路側にあると、直接外の風や騒音が入り込みやすくなります。一方で、玄関が奥まった場所にあると、風除けの役割を果たし、室内の快適性を高めることができます。
また、冬場の冷たい風や夏場の直射日光を和らげるために、玄関前に壁や庇を設ける設計も有効です。こうした小さな工夫が、日々の暮らしのストレスを軽減し、心地よい住環境をつくり出します。

玄関を考えることは、住まい全体の快適性を考えること
玄関の向きや位置は、単なる好みの問題ではなく、住まいの快適性やデザイン、さらには暮らしの質に大きく影響を与える要素です。もちろん、すべての家が同じ考え方で設計されるべきではありませんが、「玄関は道路側にあるべき」という固定観念を持たずに、自分たちにとって最適な配置を考えることが大切です。
家づくりを考える際には、ぜひ「玄関までの道のり」を意識してみてください。その道のりが、ただの通路ではなく、住まいの印象や暮らしの豊かさを決める重要な要素になるかもしれません。

「玄関は道路側に向いていない方が落ち着く」という選択。
それは、単なる動線の工夫ではなく、住まいのデザインや暮らし方をより豊かにするための「余白」のつくり方なのかもしれません。

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