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気持ちの良い場所。2階ホールの役割
1階のリビングから階段を上がると、2階の小さなホールにたどり着く。決して広いとは言えないが、このホールには家全体の環境を快適にする重要な役割がある。
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吹き抜けとホールが生み出す光の道
このホールは、吹き抜けに面している。鉄骨手すりによって視線が抜け、開放性を確保すると同時に、階段吹き抜けを通じて1階の奥まで光を届ける。特に、キッチンの位置が家の奥にある場合、自然光が届きにくくなるが、このホールが光の道となり、キッチンに心地よい明るさをもたらしてくれる。
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空気の流れをデザインする
階段の上部に設置されたエアコンは、吹き抜けを介してリビングとつながり、家全体のサーキュレーションを生み出す。2箇所の吹き抜けを利用することで、エアコン1台で全館冷暖房を可能にする。ホールのちょっとしたゆとりが、家全体の温熱環境を整える役割を果たしているのだ。
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2階の開放感をつくる仕掛け
2階は個室が多くなり、閉塞感を感じやすい。しかし、このホールを吹き抜けと隣り合わせに配置することで、視線の抜けを確保し、空間に広がりを生む。さらに、大きなFIX窓を通して坪庭の緑が見えるように設計することで、自然とのつながりを感じられる場所になっている。
居場所としてのホール
ホールに椅子を置けば、ただの通路ではなく、ちょっとした居場所になる。光が差し込み、坪庭の緑を眺めながら読書をしたり、リラックスしたりするスペースとして機能する。動線の一部でありながら、ふと立ち止まりたくなるような心地よい空間。そんな設計が、家全体の快適さを支えている。
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ホールの広さは限られているが、吹き抜けとの組み合わせや視線の抜け、光と風のデザインによって、家の中で最も気持ちの良い場所のひとつとなる。これこそ、建築が生み出す「余白」の価値なのかもしれない。