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本棚というインテリアの存在感
地味かもしれませんが、ダイニングの裏にあるちょっとした本棚が私のお気に入りのインテリアです。本に囲まれる生活が好きな人も多いと思いますが、個人的には、あまり主張しすぎない本棚が心地よいと感じます。建築のスケール感に合った本棚は、圧迫感を生むことなく、むしろ空間のバランスを整えてくれる存在になるのです。
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本棚は建築だけでは完成しない
本棚というのは、建築だけでは成立しないインテリアの代表例です。そこに住む人がどんな本を並べるのかによって、空間の表情が変わります。本棚の中に住まい手の好みの本が並び、少しずつ増えていくことで、まるで「育っていくインテリア」のような感覚を覚えます。
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私の場合、住宅の仕事をしていることもあり、本棚には住宅系の雑誌が多く収まっています。しかし、住宅とは単なる建築ではなく、「暮らし」を形にするものです。そのため、住宅雑誌の合間に趣味の雑誌が混ざっているのも自然なこと。建築と暮らし、仕事と趣味、それらが混ざり合うことで、本棚は単なる収納ではなく、住まい手の個性を映し出す存在になるのです。
背表紙の美しさとリズム
本棚の面白いところは、その並べ方一つで印象が変わることです。背表紙がきっちり揃った整然とした雰囲気も魅力的ですが、サイズやデザインの異なる本がランダムに並ぶと、それはそれでリズム感のある楽しい表情を作り出します。どちらが正解ということはなく、その人の価値観やライフスタイルによって変わるもの。
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リビングの隅やダイニングの裏など、空間の片隅に自分の趣味性がほのかに表現されている場所があると、住まいに奥行きが生まれます。本棚はその象徴的な存在なのかもしれません。過度にデザインを主張するのではなく、住まい手の暮らしと共にゆっくりと育っていく。本棚はそんなインテリアのひとつなのだと思います。