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映画『HACHI』を見て、逃げた警察犬を思う

映画『HACHI 約束の犬』を見た。
言わずと知れた、『ハチ公物語』のハリウッドリメイク版。
犬好きならば、まちがいなくウルっときてしまうストーリーだ。
「忠犬ハチ公」と呼ばれるように、ハチの飼い主への忠誠心がこの物語のキモ。
でもそれより何より、ハチが自分の意思で自分の行動を決めているところに、グッときてしまった。

先日報道された、行方不明者の捜査中に逃げ出した警察犬のニュース。
「逃亡中」とか「確保」とかの言葉が使われていて、違和感を感じずにはいられなかった。

特別な訓練を受け、捜査などの任務を行うのが警察犬だけれど、それは人間が決めたこと。
人間の目から見たら「逃亡」したのかもしれないけれど、犬だってどんな動物だって、自分の意思に従って行動したいという本能は当然あるはず。

そんなモヤモヤを抱えているとき、イラストレーターの安西水丸さんが、エッセイスト平松洋子さんとの対談の中で語った言葉に、ハッとさせられた。

うちは七人きょうだいで、姉が五人。一番下の姉とは七歳離れてますから、誰が僕と今日寝るか、ジャンケンするんです。僕だって好き嫌いがあるから(笑)逃げ回ってました。ペットって辛いと思うんですよね。     『ひさしぶりの海苔弁』平松洋子


ペットは話すことができない。
警察犬とペットは違うかもしれないけれど、どちらも自分の意思どおりにできることは限られている。
飼い主がよかれと思ってやっていることでも、ペット自身がどう思っているかはわからないのだ。

我が家にも、かわいいかわいい愛犬がいる。
彼は全身で私たち家族を信頼し、そこにいるだけで幸せをもたらしてくれる。
私たちも、できるかぎりめいっぱいの愛情を注いでいるつもり。
でもやっぱり本当に幸せなのか不安になるときがあって、「うちの子になってよかった?」と聞いてしまう。
もちろん答えを聞くことはできないけれど。

人間と動物の間には、もうできあがってしまっている関係があって、それを変えていくのは難しいことなのかもしれない。
でもどんな動物にもそれぞれの意思があるということだけは、忘れないようにしようと思う。

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