ウクライナ情勢をめぐる外交交渉について-03
アメリカ東部時間26日正午にワシントンでブリンケン国務長官が記者会見を行い、ヨーロッパ安全保障枠組み見直しに関するロシア案への書面回答を同日に行ったことを明らかにした。文書は在モスクワのアメリカ大使よりロシア外務省へ直接提出されている。
この文書は、昨年12月にロシア側から提示されていた案に対する回答であり、先週末にジュネーブで行われた米露首脳会談を受けて今週中にアメリカ側から提示されることになっていた。各メディアの予測では、回答の提示時期は早くても今週末と見られていたので、ブリンケン長官の会見を見た筆者は事態が当初より速く動いているのではないかという印象を持った。
その背景としては、ウクライナ情勢をめぐるロシア軍の展開が非常に速いスピードで進んでいるということ、それと同時に、米露交渉とは別にヨーロッパ主導のもとフランスとドイツが仲介するノルマンディーフォーマットに基づく外交交渉がパリで行なわれていること、が影響していると考えるべきだろう。
会見でブリンケン長官が明らかにしたのは、文章の内容は従来からアメリカが繰り返し表明してきた趣旨と何ら変わりがないということだ。NATOへの加盟が、希望するヨーロッパの国々に対して平等に開かれているという所謂オープンポリシーの原則が、未来永劫普遍不可侵であることを再度明確化したという。したがってこの回答は、行き詰まりの様相を呈する米露交渉の現状を文書化したにとどまる内容といえるだろう。
一方ロシアでは、モスクワ時間26日にラブロフ外相よりロシア下院に対するウクライナ情勢及び米露交渉に関する状況説明が行われ、アメリカ側からの回答が建設的ではない場合にはロシアは相応の措置をとる必要があると述べている。
さらに並行する形で、現在フランス・マクロン大統領がパリ・エリゼ宮にウクライナ、ロシア、ドイツの外交・安全保障関係者を招集しノルマンディー・フォーマットに基づく外交交渉が行なわれている。この会合で当事者間による今後の方向性を模索し、今週28日金曜日に、マクロン大統領とロシア・プーチン大統領の間で電話会議を行い、協議の方向性を話し合う見通しだ。したがって、この時のプーチン大統領の反応がロシア側の考え方を理解する鍵となるだろう。
(Text written by Kimihiko Adachi)
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