Neue Zürcher Zeitung Samstag, 1. Juni 2024
出典: NEUE ZÜRCHER ZEITUNG SAMSTAG, 01.JUNI 2024
先週のNeue Zürcher Zeitung紙 (NZZ)週末版の第1面、欧州議会選挙の1週間前のタイミングでの著名ジャーナリストEric Gujerによる論説記事をのせた。今回の欧州議会選挙ではポピュリスト政党が躍進する見込みであり、その背景について、EU主導で行われている温暖化対策施策（特に農業分野のトラクター等の機械用ディーゼル油への補助金撤廃等）および移民政策が民主主義的な対話に欠けた一方的ともいえるかたちで推進されていることに対して、民主主義プロセスでは有権者としては反論の手段としてポピュリスト政党に投票せざるを得ないからだと纏めている。
この、Gujerのみたては、今回の欧州議会選挙では特にフランスの有権者の投票行動に強くあてはまると見てよいだろう。実際の有権者の投票行動は、EUと欧州議会を評価して投票するのではなく、自国の政権に関する評価に重点を置いて投票するからだ。議会で与党が過半数割れした状態で2期めにはいっているマクロン政権は、フランス憲法で限定的に認められているとはいえ議会の否決を覆せる大統領下の内閣権限を多用し、議会において強硬的な手法を使わざるを得ない政権運営を行ってきたからだ。
6月3日時点のEURO-ROLIING-IFOP-FIDUCIALのサーベイでは、フランスでの得票予想は、ルペン氏のポピュリスト政党Rassemblement Nationalが33.5%、マクロン氏の与党Renaissance連合が15.5%、社会党連合が14%、メランション氏のLa France Insoumiseが7%、共和党が7%ゼムール氏のReconquêteが6.5%、Les Vertsが6.5%となっている。この得票予想の比率からは、温暖化対策施策に異議をとなえてきた農業従事者層が、従来の受け皿であったメランション氏のLa France Insoumiseからルペン氏のRassemblement Nationalにかなり動いたということが見て取れる。農業従事者層が、ルペン氏の政策への影響力を評価したのではないかということ、および、ルペン氏が農業従事者層を取り込むキャンペーンを強化してきたのではないか、ということがここから推測できる。
では、ドイツの得票予想はどうだろうか。6月5日-6日にかけて行われた最終のDie Forschungsgruppe Wahlenのサーベイでは、CDU/CSU30%、SPD14%、Grüne14%、AfD14%、BSW7%、FDP4%、Linke3%、Volt3%、その他11%と、ポピュリスト政党に分類されるAfDはフランスにおけるルペン氏のRassemblement Nationalほどは伸びないという予測となっている。ただし、ドイツに関してはフランスとは異なる事情として、今回選挙から参政権の年齢が引き下げられ16歳から投票できるようになる（前回選挙までは参政権は18歳、被参政権は今回も従来通り18歳）。このことにより、ドイツ全土で新たに16歳～17歳の層が有権者として加わり、この新たに加わる若者の票が合計で480万あることが今回の選挙にどのような結果をもたらすのかはふたを開けてみなければわからないといえる。今年に入ったころから、若者の間に急速にAfDの支持が広がっているともいわれており、そのような事情が若者の投票行動につながった場合には、実際のAfDの得票が事前のサーベイを上回る可能性もあるだろう。
(Text written by Kimihiko Adachi)
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