見出し画像

ウクライナ: チェルノブイリ原発、ロシア側の動きに関する追加情報(2)

チェルノブイリ原発の運営管理を行っているウクライナ国営電力会社Energoatomが25日に明らかにした情報によると、原発構内で勤務する職員のシフト交代が再び出来ない状態に陥ったとのことである。原発サイトから約60km離れた放射能管理区域外にある職員居住区(スラブチッチ)の周辺にロシア軍が砲撃を加えており、原発との間の通勤の安全が確保できないのが原因だ。このままの状態が続くと、現在原発の構内にいる職員がシフト交代できないまま構内で寝泊まりしながら勤務を続けるということになり、ロシア軍侵入直後からの無理な運営体制が再び繰り返されることになる。

スラブチッチのあるドニエプル川の東側は本来は戦闘地域ではないので、ロシア軍が砲撃を加える実質的な意味はない。しかし、23日に国際原子力機関(IAEA)が原発の安全と核不拡散管理のために専門官をウクライナの原発に派遣する意向を表明したので、ロシア側がチェルノブイリにIAEA関係者が入るのを阻止するために、意図的にスラブチッチでの交戦状態を作り出そうとしている可能性が強く疑われる。

また、Energoatomによると、ウクライナに出張で入っていたロシア国営原子力会社ロスアトムのロシア人社員4人がロシアへの帰国を望まず、ウクライナ国内で保護されている模様だ(ウクライナで現在稼働している原発は、旧ソ連式加圧水型原子炉を使用しているので、現在も燃料等の関連技術でロスアトムとの取引関係を続けている、将来的にはアメリカ・ウエスチングハウスとの取引に切り替える方向。)この4人は、2月からウクライナ西部にあるリブネ原発に関わる仕事でロシアから出張してきたが、その直後から始まったロシア軍の侵攻の実態を目のあたりにして幻滅し帰国を諦めたと。これに対して、ロシアが4人はウクライナ側に拉致されたとのフェイクニュースを流したので、今般Energoatom側から事実関係を明らかにすることにしたとのことである。

IAEAはウクライナの各原発に専門員を派遣する準備ができたといいながら、いまだに実際に派遣する様子がみられない。受入国のウクライナが同意しているのにもかかわらず、IAEAの指定理事国であり、上位機関の国連常任理事国として核兵器保有国としても認められているロシアに気を遣ってあいまいな態度を取っているとすれば、早晩、IAEAも国連と同様の真に必要なときに機能しない機関として認定されてしまうであろう。IAEAが、どのような対応をするのか、間違いなく、イラン、北朝鮮は注目しているであろう。

(Text written by Kimihiko Adachi)

(C)_Welle_Kimihiko Adachi_all rights reserved_2021_2022(本コラムの全部または一部を無断で複写(コピー)することは著作権法にもとづき禁じられています。)


いいなと思ったら応援しよう!

足立公彦_Welle_world politics and energy
最後までお読みいただきありがとうございます。