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ウクライナ情勢: トルコによる仲介の動きについて。

ウクライナ情勢に関しアメリカ・NATOとロシアの交渉が行き詰まりの様相を見せる中で、今週に入りヨーロッパ及びトルコの主要メディアがトルコによるウクライナ・ロシア間を仲介する動きについて報道をし始めた。エルドアン大統領が、ウクライナ・ゼレンスキー大統領とロシア・プーチン大統領の双方に対してすでにその旨の意向を伝達しているようだ。

筆者は、このエルドアン大統領による仲介の動きに注目すべきだと考えている。ウクライナ情勢で明らかになったのは、アメリカとロシアによるヨーロッパ関係国の頭越しに行われている交渉が、ヨーロッパ関係国の間でのコンセンサス作りには有効に働いていないという実態だ。

ヨーロッパ各国は各々ロシアとは通商面を中心に長年の関係を築いてきており、ロシアに対して急遽大規模な経済制裁を科そうとしても跳ね返ってくるダメージもかなり大きくなる。また、ヨーロッパ内でも地理的にロシアとの距離がそれぞれの国で異なり、それによる温度差もあるのが実情だ。こうした要素が、アメリカとロシアの交渉を難しいものにしている。

仮にトルコがウクライナとロシアの間を仲介することができるのであれば、ヨーロッパから独立した仲介の動きが可能であり、かつ安全保障的にはトルコはNATOのメンバーであり、アメリカ・NATOの延長線上での動きを取ることも可能だ。そして何より近年トルコは単独で、シリア紛争、アゼルバイジャン及びアルメニアをめぐる紛争を通じてロシアに対抗する安全保障上の強い影響力を築き上げるに至っている。したがって、仲介役としての立場を裏付けるだけの十分な力があるといえるだろう。

ロシア側からは今週クレムリンの大統領報道官より、トルコの仲介の動きにロシアとウクライナに加えて東ウクライナ紛争地域の代表者も当事者として含めることを期待するとの意見表明があった。ロシア側も前向きにとらえていると考えてよいだろう。

トルコ政府は、エルドアン大統領が2月3日にウクライナを訪問する予定をすでに発表しており、その前にロシアとの間で何らかの意見交換が行われるものと考えられる。したがって、週明け以降のトルコの動きに注目をする必要がある。そのように筆者は考えている。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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