伊勢物語を原文で読む(二)
男は、失恋して、京を去り、東へあてもなくさすらってゆく。道々、京には珍しい風物を見るにつけ、女を思い出し、歌を詠い涙する。
だけど、だめだなあ、東京あたりまで来ると、女好きの癖がででくるんだなあ。
しかも、東の女性に上から目線。失恋して、ヨレヨレになって放浪し、旅先でオンナをもて遊ぶ。愚かな男。
この愚かさをご覧くださいませ。
十四 くたかけ
くたかけ=にわとり
男は陸奥まであてもなく行き着いた。女が、都会的なその男を見て、一目惚れしてしまい、歌を詠んだ。
なかなかに 恋に死なずは 桑子にぞ なるべかりける 玉の緒ばかり
しなくてもいい恋をハンパにしなきゃよかった。私はうちで飼ってるあの蚕にでもなればよかった。あんなに仲良くできるんだもの。ほんの少しの間でも。
男は、田舎っぽいなあ、と思いながらも、一晩いっしょに寝た。そして、夜深いうちに女の家を去った。
女は怒った。歌はこうだ。
夜が明けたら、あの鶏め、水溜めにぶち込んでやる。私は夜も明けないうちから鳴いて、男をみすみす逃がしちゃったわ。
男は、その下品さにびっくりして、もう京都へ帰ろうと思って、歌を詠んだ。
そこの住所は、宮城県栗原市金成町姉歯というところだったので、
栗原の あねはの松の 人ならば みやこのつとに いざとはいはましを
つと=土産
栗原の姉歯の松が、もしも人であったなら、京への土産に、さあいっしょに行こう、と誘って連れていくんだけどなあ。
女は、まあ、連れて行ってくれるのね、と勘違いしてしまった。
以上。
女の歌は、万葉集の東歌調ですね。ひなびた感じが健康的で、女性のはつらつとした姿が目に浮かぶなあ。
意外と読みやすい伊勢物語。