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建築士、転職する

はじめに

私は2024年秋頃に
メーカーからゼネコンへ転職しました。

建設業に関わる人で転職を
検討されている人は多いと思います。

私の経歴や実際の転職活動記録が誰かの参考になれば幸いです。

まずは私のプロフィール
(転職活動時)
年齢:30歳
経歴:新卒入社メーカー8年目
   (エンジニアリング部門)
   施工管理4年、設計4年
資格:一級建築士
   建築設備士
   2級建築施工管理技士
   消防設備士(甲4、乙6)

転職のきっかけ

この記事を読んでいる方は
少なからず転職に興味があると思いますが
そのきっかけは何でしょうか?

私の場合は
当時取り扱う案件の規模や用途がほとんど同じで
設計業務をしていても代わり映えせず
このままではベテランにはなれてもプロになれない
と感じたことが大きかったと思います。

転職活動の開始


まずは自分の市場価値を調べようと思い
市場でよく名前を聞く転職サイトに片っ端から
登録しました。

そうするとありがたいことに
各サイトですぐに20~30件くらいの
スカウトをもらいました。

転職サイトを利用したことがある方なら分かるかもしれませんが、
即座にスカウトメールが来るのはどのサイトを使っても
ほとんど同じ企業ですね。

意外と少ない設計職募集


当時設計をしていたこともあり
職種は設計で探していましたが
スカウト求人の内容は
・施工管理
・住宅設計
・設備設計
これらが多かったです。

設計ではあるものの、住宅設計は未経験。
建築設備士を持っているものの、実務経験はほとんどなし。
私が今まで取り組んできた非住宅系設計職の募集は
ほとんどありませんでした。

この時期は大手組織設計事務所やゼネコンは
やっぱり敷居が高いなあと思っていました。

一方で新卒当時から都市計画に興味があり
デベロッパーも候補に入れていました。

そんな時、たまたまインスタグラムで
某総合デベロッパーの中途採用説明会の
案内が流れてきて興味本位で登録をしました。

結果的にはここから繋がり
今回の転職に至るわけですが
当時はそんなつもりもなく
軽い気持ちでした。

webでの会社説明会

某総合デベロッパーの説明会では
関連会社合わせ4社の合同説明会でした。

事前に主催のエージェント会社から
個人プロフィールや希望転職企業のヒアリングがあり
その後案内が届きwebの開催でした。

説明会は最初、参加者全体に向け
各社の会社概要説明があったあと
事前に希望した会社の単体の座談会に
参加するという形式でした。

当初、デベロッパー本体のみを志願していましたが
エージェントから提出した経歴を見た関連会社の
設計事務所から座談会への参加依頼があるとの
連絡がありました。

その設計事務所はもちろん有名で
正直、自分がこれまで取り扱った程度の
設計技量では到底要求水準に達していないだろうと
思っていました。

とは言えうれしい気持ちもあり、勇んで座談会に参加すると
デベロッパー本体の時は担当者2名に対し、参加者が10名ほどいましたが
設計事務所では担当者2名に対し私含め参加者は2名でした。

約30分と時間を切られていましたが
参加者が少なかったこともあり
かなり色々と聞くことができました。

取り扱いの多い用途や発注形態、
部署の人員構成や繁忙具合、
異動の有無や福利厚生など
質問に対しては全て回答をもらいました。

その後、すぐに担当エージェントから連絡があり
座談会での印象もよかったので
ぜひ選考に進んでほしいと連絡がありました。

これを聞いた時、
「もうほとんど決まったんじゃね?」
と内心思っていました。

想像していなかったレベルの企業に
好印象をもってもらったこともあり
私は調子に乗ります。

エージェントに私の経歴で
引っかかりそうな企業の求人を
出してもらいました。

そして出てきたのは名だたる有名企業ばかり。
転職活動していて一番楽しい時期でした。

当時の業務との兼ね合いもあり
あまり数は受けるつもりはなく
ほぼ決まっている(過信)設計事務所と
ゼネコン(設計職)1社に絞りました。

・それぞれの中途採用(ゼネコン編)

書類選考〜面談


エージェント経由で履歴書を2社に提出後
少ししてポートフォリオの提出依頼がありました。

ポートフォリオといっても
今まで携わったものは工場倉庫ばかり。
とりあえず過去物件の写真や資料をかき集めて作りますが
何とも見栄えが悪い。
当然です。
設計者本人(私)が特段意匠性に拘ってないからです。

当時重視していたのは
省コスト、短工期
デザインは2の次、3の次で
そんなところにお金はかけ(られ)ない案件ばかりでした。

結局ほとんど大きいか小さいかだけの差のような
ポートフォリオを提出しました。

職務経歴書作成に当たっては
エージェントからテンプレートをもらい
それに沿って案件ごとの経歴書を作成しました。

私の場合、施工管理と設計の
どちらの経歴もあったので
どういった立ち位置でどのような業務をしたのかを
具体的に記載しました。

ポートフォリオと職務経歴書提出から
あまり間を空けずに書類選考通過の
連絡がありました。

最初に面談依頼があったのはゼネコンでした。

都内某所。
存在感のある建物のビルに向かいます。
入り口から威圧感があり緊張しました。

受付担当の人がいました。
大抵電話が置いてあるだけだったので
さらに緊張が高まります。

少し待って現れたのは
物腰の柔らかそうな男性と女性。
今回の採用担当のようです。

軽く挨拶し、会議室へ案内されます。
会議室も広く綺麗です。
どうしても自分の会社の会議室と比べてしまいます。

面接ではなく、面談ということで
職務経歴書だけでは分かりにくい部分のヒアリングと
業務のマッチングを重視に話をしました。

大きな会社になると
ジョブローテーションはあるものの
設計なら設計内、施工なら施工内での
異動がほとんどのようで
施工と設計どちらの経験もあることを
良い方向で捉えてもらえました。

その場で興味があるなら
一次面接の日程調整に入りたいと言われました。

正直、この会社には縁がない。
(自分では力不足)
と思っていたので意外でした。

二つ返事で一次面接をお願いしました。

一次面接


そうして迎えたゼネコン1次面接
相手は面談でも話をした採用担当2名と
予定配属部署のリーダーの方1名でした。

堅苦しい雰囲気はなく、
質問に対して回答ではなく
ずっと会話しているような感じでした。

約1時間半喋りっぱなし。
その後事務所内を軽く案内してもらいました。

事務所も広いのですが
印象的だったのは個人のスペースが広いことでした。
当たり前のように1人1台モニターがあります。
(当時の会社には全席にモニターがなかったので
早い者勝ちの取り合いでした。)

1次面接が通過であればSPIがあると
帰り際に恐ろしいことを言われ終了。

SPI


1次面接から3日ほど経って連絡がありました。
ゼネコンの1次面接通過連絡と合わせて
SPIの案内が来ました。

8年ぶりのSPIです。
当然頭は固くなっており、
解けないわけではないが
時間内に処理しきれないことに
ストレスを感じながらも
テキストを購入し1週間ほど練習しました。

テストセンターへ行き、SPIを受験します。
計算用紙が小さくうえ
会場が準備した書きにくいシャーペンで
問題を解きます。

ネット情報で
正答率により問題が変化するとのことで
枝問が多い問題が出てくると
それまでの正答率が高いようです。

後半で枝問が4つある問題がいくつか出てきたので
解きながら少し安心していました。
あとはMBTIみたいな性格診断を受けて終了。

中途採用SPIで落ちたら嫌だなと思っていましたが
あっさり通過の連絡が来ました。

後から聞いた話だと正答率より
MBTIみたいな性格診断の方が
重視しているようです。

これは余談ですが、性格診断で波がある場合、
社内で何らかの問題を起こすか、短期で離職する可能性が高いらしいです。
自分を偽る必要はありませんが
回答に一貫性がないと
不安視されてしまうかもしれません。

最終面接

いよいよ最終面接。
エージェントからの助言で
会社の統合報告書を読み込んでいきます。

中期の経営計画などが書かれていたので
おおまかな方針だけでも頭に入れておきました。

またエージェントから
想定される質問集をもらい
自分なりの回答を記入して
添削をしてもらいました。

回答を作る過程で
志望動機をきちんと言語化できたことは
当日の面接にもかなり効果的だったと思います。

新卒採用ではなく、中途採用のため
現職の退職理由と今回の志望動機が
リンクしているかは注意しました。

私の場合は前述の通り、
同等規模用途の案件がほとんであり
会社規模的にも受注限界が見えていたため
自身のキャリアを考えたときに
さらに大きな舞台に挑戦してみたい。
そのために必要な技術も深耕したい。
みたいなことを軸に進めました。

これはゼネコンも設計事務所も同様です。

さて、最終面接ですが
役員5名と採用担当1名と対面します。
さすがに1次面接とは緊張感が違います。

まずは自己紹介とこれまでの経歴を
提出した職務経歴書に沿って説明しました。

いくつか質問が返ってきますが
やはり懸念されているのは
これまで扱ってきた規模用途と
大きく異なるという点。

大型案件や工場倉庫以外の用途の経験が乏しいことは事実。
これは変えようがないので
どうにか適用することができるという
意思を示すことがポイントかもしれないと
その場で感じました。

提出したポートフォリオの中から
1件について具体的な説明をしました。
それは当時日本初の取り組みとなったもので
(といっても小規模です)
前例がないことをどういった経緯でクリアしたのか
特にその案件では内部で騒音振動を
発する機械があり
周辺環境への配慮が絶対条件でした。

所轄行政と度々協議を重ね
検査機関とも話し合いしながら
確認申請を出し着工に至りました。

この話の折々で
・やったことがないことへの取り組み方
・課題に対するアプローチと手法
この部分を強調しながら話しました。

その場での手応えは何とも言えない感じで
頑張ったのはわかるけど・・・
みたいな印象だったような気がします。

時間としては約1時間。
前半は怒涛の質問ラッシュ
後半でようやく自分の話ができる
そんな感じでした。

終わった後。
正直手応えはイマイチでした。
ここで気付きます。
全落ちしたら今の会社継続になる・・・
何となく嫌な予感がしました。

・それぞれの中途採用(設計事務所編)

1次面接


ゼネコン面接から2週間ほど空けて
設計事務所の1次面接がありました。

こちらも都内某所。
お仕事系ドラマで使われそうな
ビル群の中にその設計事務所はあります。

設計事務所の方は面談はなく、
最初から1次面接という名目でした。

こちらはゼネコンよりも固い印象で
最初に30分程度となりますと
制限時間を設けられた中で始まりました。

相手は人事1名、
予定配属部署リーダー格2名でした。

面接内容は職能を正しく理解しているかを
詳しく深堀されました。
設計とはいえ図面を書くだけでなく
各所の調整業務が多く発生するなど。

さすがにその当たり理解していたので
スムーズなやり取りができました。

その後何度も釘を刺すように言われたのは
高い専門性とスキルが必要になるため
今足りていないものを習得していく覚悟があるかどうか
念入りに確認されました。

面接なので
「もちろん!精進します!」
としか答えません。

そして予定通り30分で終了。
あまり手ごたえを感じる間もなく
終わったような印象でしたが
こちらは当日中にエージェントを介し
合格連絡が来ました。

新卒時の就活でもそうでしたが
自分の手ごたえと結果はあまり関係ないようです。

最終面接

最終面接では
役員5名+人事1名の構成でした。

これまでの私の経歴と設計事務所が取り扱う建物の
規模や用途のギャップについて深く聞かれました。

やはり懸念している部分は
ゼネコンも設計事務所も同様でした。

ゼネコンの最終面接とその準備で
自分の回答が整理されていたので
問題なく答えられたと思います。

ゼネコンと違った毛色の質問では
「当社がどのような建物を設計しているか知っていますか?」
「当社に入社したらどのようなもの手掛けたいですか?」
などを聞かれました。

事前に統合報告書と会社HPは読み込んでいるので
過去作品については特に自分が実際に行ったことのある
ものを中心に答えました。

どういったものを手掛けたいかについては
これまで工場内での仕事が多く
特定の人しか利用しない、目に触れない
そういったものを扱ってきたので
これからは公共性が高く、
ランドマーク的な位置づけになるものへ
挑戦したいと伝えました。

時間は約1時間。
後半は今自分が取り組んでいる仕事内容を説明し
設計という立場ではあるが、
・営業
・基本設計
・積算、見積
・実施設計
・確認申請
・工事監理
と業務幅が広いことを話すと
若干引かれていました。

こうして最終面接を終え
とりあえず今回の転職活動の
面接がすべて終了しました。
あとは吉報を待つのみです。

結果

今更ですが
ゼネコン設計職や大手組織設計事務所って
院卒からしか土俵に上がれない
みたいな風潮ありませんでしたか?

少なくとも私はその印象がありました。
なので学部卒の私は新卒就活では
そもそも目指す対象に選んでいませんでした。

中途採用ではありますが、
新卒時にどうせ無理だ…と諦めていた企業の
最終面接結果待ちが2社もある。
結果はどうであれ十分嬉しいですね。

何よりこの転職活動で自分の
これまでのキャリアが評価され
間違った方向に進んでいないことを
確認できただけでもやった価値があります。

前置きが長くなりましたが結果です。
ゼネコン 内定
設計事務所 内定

なんと2社とも内定を貰うことができました。
その後エージェントを介した連絡を続け、
待遇についても確認しました。

現在の年収や福利厚生(家賃補助等)、
希望年収などを提示しました。

気になる待遇面の話

転職サイトのCMやHPでも
転職で年収〇〇万円UP!!
なんてのよく見かけますね。

実際はどうなんでしょうか?
私は当時30歳で約800万円ほどでした。
(残業代ブーストと福利厚生バグ家賃補助の影響)

そのためあまり賃金UPについては
期待はしていませんでした。
ですが、希望年収提示という
せっかくの機会がありましたので
思い切りのいい数字で出しました。

夢はでっかく1,000万円!

各社提示は以下の通りでした。

ゼネコン
現基本給+7万円(+84万円/年)
使用期間満了時に再度交渉可
資格手当などは無し

設計事務所
現基本給+5万円(+60万円/年)
資格手当あり 1万~2万円/月

世界って広い。
高待遇で働いている人なんていくらでもいるんだと
思い知らされました。

どちらもUP分を加味しても
提示額には届きませんが
年収ベースで約80万円上がります。
そもそも上がると思っていなかったので
十分好待遇です。

こうなるとどちらを選べばいいのか悩みます。
多分今までの人生で一番贅沢な悩みです。
一生噛みしめていたいくらいの悩み。

結果的には私はゼネコンを選択し
今そこで働いています。

決め手は様々ありましたが
1番は現場が近いこと。
設計や監理をやっていく上で
現場が近いことは重要だと思っています。

現職への対応

さて、転職の楽しい部分はここまでで
ここからは現職との退職交渉です。

転職経験のある方はこれが大変だったのではないでしょうか。
例に漏れず私もかなり大変でした。

当時の私の業務状況は
・営業対応 2件
・基本設計 5件
・実施設計 2件
・工事監理 2件
・監理技術者 1件
と、かなり部署内でも偏った配分になっており
部署全体の7割近くを担当していました。

また他の側面として
会社の一級建築士事務所の存続があり
私と一番年齢の近い建築士は50歳で
私の入社以降、建築系社員が入社しておらず
単純にあと10年で現役社員の建築士が滅亡します。

そういった状況であったため
退職交渉は難航し、上司や人事との面談が
毎週あり毎度同じような話をしました。

結局、退職願を提出してから
退職に至るまで約半年ほどかかりました。
(年休消化1ヶ月程度も含む)
その間の面談は約20回。

長くかかったおかげで十分に
引継ぎすることもできました。

どんなに人間関係が良くとも
円満退社なんてものは難しいです。
自分の分の負担は誰かに乗りかかります。
そして残される側はそれを受けるしかないのです。
この時ばかりは自己中心的に考える他ないと思います。

最後に

ここまでだらだらと長い文章を読んでくださり
ありがとうございます。

最後に転職活動で感じたことです。
・中途採用は学歴の壁を越えられる
・資格は武器であり盾でもある
・そこでしか経験できないことがある
・自分の価値の客観視
・矛盾するけれど

中途採用は学歴の壁を越えられる

これは記載している通り
院卒以上しか入れないと思っていた場所で
戦えたということ。
しっかりと自分の今の立ち位置で
役割を果たすことが
新しいステージに繋がると感じました。

資格は武器でもあり盾でもある

資格は転職を踏み切る武器でもあり、
最悪失敗しても現職での立場を失わない盾でもある
ことを再認識できました。
当然資格が全てではありません。
実務でしか得られないものも多いです。
ただ資格があることで
最低限このレベルは理解しているや
努力することができるということが
初対面の相手には伝わりやすいと思います。

そこでしか経験できないことがある

どんな会社であれ、そこでしか経験できないことがあります。
大企業だからできる、中小だからできる
特にこれは規模や業務範囲にそれぞれの
特徴が出ます。
大企業が正、ではなく
現状の正を積み上げることは他では経験できない
貴重なものになります。

自分の価値の客観視

転職活動を通して初めて
今の自分の市場価値を確認できました。
社内で評価されていても
他社で見ると、業界全体で見るとどうなのか、
これは中々測ることはできません。
私の場合はエージェントと話し、
面接で話すことで何となく測ることができました。
これは例え、今回の転職活動で
全て不採用であったとしても価値のある時間
だったと思います。

矛盾するけれど

本当のことを言うと
新卒で入った会社で最後までいれるなら
それに越したことはないと思います。
でも長く働くと何かしら不満が出るものです。
それはきっと環境を変えても
いずれ不満が生まれます。

それでも自分の中で消化しきれないものがあり、
5年後、10年後に後悔しそうであれば
転職活動に踏み出すのはアリだと思います。

前述の通り、
自分の価値を調べるくらいの気持ちで
探るだけでもいいかもしれません。

取り留めないですが
誰かの転職活動の参考になれば幸いです。

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