Annihilation
6月28日、wilcoがEP「Hot Sun Cool Shroud」をリリースした。
EPとは珍しい、と思ったら、自身の主催するフェスティバルに合わせてリリースされたものだ、とのこと。
最新アルバム「Cousin」から地続き、それに加えて少しオープンな雰囲気のあるサウンド。
インスト楽曲を収録しているのも珍しい。
いざ聴いてみたら、4曲目の「Annihilation」があまりに衝撃的な良曲だった。
思いの丈をぶつけるべく、記事を書くしかないと思った。
「Annihilation」
今年聴いた楽曲の中で一番好き。
wilcoの楽曲の中でも一番好き。
もしかしたら、この世の曲の中で一番好きかもしれない。
自分が死ぬときに、頭の中で流れてくれたらいいなと思った。
葬式があるなら、お経が聞こえないくらい爆音で式場に流してほしい。
それくらい良い曲だ。
なんでここまで良い曲だと思えるのか、言葉に出来る部分は少ないけど、書けることを書いておきたい。
まずはオープニング。
wilcoの楽曲の中でも随一じゃないだろうか、こんなに人懐っこいリフは。
シンプルでストレート。
楽曲の持つ雰囲気はまさにwilco、という感じなんだけど、ここまで素直なリフはwilcoらしくない気すらしてくる。
ただ、音色はwilcoのギターだな、という感じ。
12弦だろうか。
ミックスも絶妙で、押し付けがましくないのが良い。
相変わらず音の層は厚く、色とりどりのギターを楽しめるが、アレンジはラフな感じがする。
この脱力感のようなものが、楽曲に浮遊感を与えている印象があって、そこもめちゃくちゃ気に入ってる。
ボーカルは飾り気がなく、ポップとはかけ離れているようで、とても口ずさみやすい。
2、3回耳にすれば、もう歌えるようになっているはず。
トーンも暗めで、ポツリポツリと零すような歌なのに、口ずさんでいるとこんなに泣けてくるのは何でなんだろう。
展開が少ないのが良い。
展開が多い曲が悪い、というわけではないが、展開が少ない曲ほど美しいと思う。
フレーズの覚えやすさ、親しみやすさにも影響する要因だろう。
ギターソロ(Nels Clineが弾いてるのかな)もなんらかの魔法がかかってるのではないかと思うほど良い。
フレーズもクソもなく、ラフに、ときには掻きむしるようなプレイがたまらない。
音色もドライで、かえって新鮮な感覚だ。
楽曲全体に関して、コード…簡単なものだけで構成されているんじゃないかとは思う。
耳コピとか出来ないだろうか。
いつか弾いてみたい。
歌詞も…。
wilcoらしさ全開でいて、今までにないような感じもする。
「Kiss」が繰り返し登場するが、接触とか、一緒にいたことの証明とか、儀式的なことを表現しているのだろうか。
綴られた詩にも、羽や空を想起させ、前述の浮遊感に直結する力が働いているように思う。
歌い出しが「なあ、僕たちは堕ちた天使さ」の時点で只事ではない。
それをJeff Tweedyが書いて歌ってんだよ?
フレーズの結びが「Alright」なのも。
「Annihilation(絶滅、消滅)」なのに、「Alright」なの?
「こんなふうに消えていくなら、それでいい」のだろうか。
悲喜、神秘的な感覚、色んな感情がない混ぜになっている。
本当に良い曲に出会えた。
「Hot Sun Cool Shroud」がリリースされたこと、「Annihilation」を聴くことが出来たのは2024年内で最も重要なトピックだ。
いまのところデジタルリリースのみの展開のようだ。
フィジカル盤が販売されるのなら、是非手に入れたい。