おばあちゃんが言っていたこと
私のおばあちゃんは77歳。
時折届くおばあちゃんからのLINEに私はいつも驚かされ、友達に見せてもやはり驚かれる。
というのも、おじいちゃんを亡くした10数年前からおばあちゃんは劇的に変わった。
そう言うと何か悪い意味と捉えて、眉間に皺寄せる人もいるのだけれど、そんなのは無視。
というか、変わったわけではなく、変わらないまま生きてきた……と言った方がいいのかも知れない。
おばあちゃんとおじいちゃんの話に戻せば、おばあちゃんは一度目の結婚を25の時にしている。
その時に前の旦那さんとの間に一人子供を産んでいる。
それがお母さん。
お母さん曰く、
「母親らしい母親じゃなかったけどね」
と過去を漏らしている。
一緒に住んでいたわけではなく、時折顔を合わせるくらい。
それでも縁が切れなかったのは、お母さんはおばあちゃんが好きで、おばあちゃんもお母さんのことを大切に思っていたんだと思う。
お母さんの節目には顔を出してきたというから、良好な関係、その一言でいいと思う。
そう、一度目の結婚で、お母さんと一緒に住んでいなかった……ことから、おばあちゃんは離婚をしている。
一度私がおばあちゃんに離婚原因を聞いてみたことがあるけど(考えてみればそんなことを聞く私も私よね……と今更ながら反省してる)、
「そういうマイナスなことは秘密のままでいいのよ。私はそれを一生お墓まで持っていくつもりだし……ただ、私もお馬鹿だったってこと」
と笑っていた。
その後に親戚関係から色々な噂を聞くわけだけれど……。
それでもおばあちゃんを嫌いになれず、むしろおばあちゃんらしいなぁと感心したの何でなんだろうか。
「考えたってわからないものは考えないことよ」
そうも口癖のようにおばあちゃんは言う。
「なるようになるものだ」と。
正直、気楽だな、と思ったこともある。
それでもおばあちゃんはおばあちゃんなりに生きてきた分だけ人生の苦労っていうものを味わっているはずだし、高々まだ20そこそこの私なんてきっと何もわからないことなんだと思う。
そのおばあちゃんの二度目の結婚。
それまでは色々あったらしい。
あったらしい、というのはやっぱりここでも誤魔化されてしまった。
お母さんも知らない。
「知って楽しいものでもないでしょ、親の恋愛遍歴なんて」
その時も笑っていたけれど、どこか寂しげだったのは気のせいなのだろうか。
ただ一つだけ、おじいちゃん-補足すればおばあちゃんの前の旦那さん-のことを聞いた時だけは、照れながらも素敵な人だった、と教えてくれた。
おばあちゃんとおじいちゃんは10違い。
おばあちゃんが42の時に出会い、おじいちゃんは32歳。
年の差である。
周りは当然、からかわれているだとか心配なんだかわからないことを言ってきたそう。
その前にもおばあちゃんは年若い人たちと恋愛をしては……とのことだったので、あまり恋愛経験もなく、そもそも10年下と言ったら今はまだ12歳の小学生になってしまう私にとっては、まだよくわからない感覚だった。
「でも何で年下がいいの?」
わからなくて聞いたこともある。
周りの友達は年下より年上がいいというのが大半だったし、確かに30代40代からすれば年下は魅力的かも知れないけれど……。
「精神年齢が子供なのよ」
おばあちゃんの答えは納得いくようないかないようなもので、私はますますわからなくなった。
「そもそも年なんて関係ないのに、人は見かけばかり気にする。何歳だからこんな服を着て、何歳だから何歳とはつきあっちゃ駄目だとか」
おばあちゃんはケーキを頬張りながら語ってくれた。
好きなものは甘いものと紅茶。
気になるカフェを見つけてはこうやって一緒にお茶をする仲だった。
「人は必ず大人になる。毎年年を取りながら成長する。それはもちろんどんな経験なのかは人それぞれよ」
私も食べながらだったのでうん、とだけ頷いた。
「経験はその人の糧になる。いわば肥料よね。いつ大輪の花を咲かせるかはその人次第だけど」
時々おばあちゃんは難しい話をする。
でも嫌いじゃないし、むしろ好きだから私は黙って話を聞く。
「私は好きなことをしてきただけ。それで人に迷惑もかけてるから嫌いな人は嫌いだろうけどね」
それはきっと離婚した旦那さんか誰か。
「それでも好きと言ってくれる人はいるし、それがたまたま年下でそれこそ何でって言われるんだったら、おばあちゃんに年下さんを虜にする魅力があるってことよ」
バッサリ言い捨てるおばあちゃん。
その時のおばあちゃんは私の年とそんなに変わらない気がする。
むしろお姉ちゃんみたいな感じ。
「だけどその分年上さんにはもてないのよね」
とオチをつけていたけど、きっと年上にもモテているんだとは思う。
だって、
「年なんて関係ない。好きなものが好きなだけ。好きな人に好かれるだけ」
そう言い切れるだけで素敵だから。
「私もおばあちゃんみたいになれるかな?」
訊ねると、
「なれないしならなくていいわよ。あなたはあなたらしくでいいの」
それが総ての答えなんだと思う。
【あとがき】
とはまた違いますが、
最近見た、100歳寿命のこの世の中30代女性は~の呟きの影響を受けてか、
この話のままの夢を見ました。
夢か、ネタか、寝ぼけていたので定かではないですが。
ああ、この話書きたいと思って、
記憶を辿りに書き上げました。
でも、思ったように綺麗で格好いい台詞はなかなか難しいものですね。
それから、
もしこれを読んで私のことに気づいたとしても、
それは秘密です。
何かわかったらこっそり教えてください。
そのくらいにして、
書いた私のことなどどうでもいいのです。
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