スラム街の住人で打順組んだ
日本のとある街。住んでみたらスラムだった。
まずは目次から!
気になるタイトルだけクリックしてみてください^^
なお、私は野球に全く詳しくないため、打線ではなく打順のみでご覧いただきたいです。悪しからず^^;
とんでもない街に越してきてしまった
結婚してから初めて住んだ街。
新生活、固定費はできるだけ削減したい。家賃はなるべく抑えたかった。
そんな中、市街地までのアクセスが良く、大手不動産メーカー管理・築浅で相場よりも2万円ほど低い物件を見つけた。
私たち夫婦はそこに住むことを決めた。
物件情報しか気にしていなかったのだ。
結局その物件は2年程で引っ越すことになったのだが、生活する上での住環境、「住む」周辺の環境というのをよく検討しなかったことを深く悔いた期間だった。
その地に住んでいらっしゃる先住民の方、その土地の先輩たちの雰囲気はなかなかパンチが強く、住環境の治安は全く良くなかった。
①ペットキャリーに荷物を入れて持ち歩き、市電に乗り遅れたおじいさん
初めて遭遇したパイセン。
市街地へ出かけようと路面電車の電停へと向かっていた。電停まであと300メートルのところで先の電車が待っていた。すると後ろから70代くらいの男性が叫びながら近づいてきた。
「マテ!電車!クソ!無理か!」
当時私は妊婦だった。
驚いて道を開けることしかできなかった。
男性は私を抜き去って電停に向かった。
しかし電車は出発した。
この少ない情報から読み取ったのは、この男性と待ち時間をともにし、次の同じ電車に乗らないといけないということだった。
男性と距離を取って次の電車を待ち、離れて座ったが、何かに危害を加えるということはなく、市街地へ着くまでただずっとぶつぶつ喋っていた。
②掘っ立て小屋みたいなアパートに出入りしている小学生〜高校生くらいまでの子ども
私たちの住んでいる物件は築2年で新しく、近隣にも大手不動産管理の新しい賃貸がいくつかあった。建設中のものもあった。一軒家も立ち並ぶ住宅街だった。
しかし、その間にはボロボロの建物も数多く混在していた。それは使われていない建物ではない。それぞれに住民が存在しているのである。
中でも近くの掘っ建て小屋は衝撃だった。掘っ立て小屋と言っては失礼かもしれない。ただ、建物は土塀に木枠のガラス窓。壁はところどころ違う色で修繕されていて、お世辞にも立派とは言えない造りだった。
小屋沿いに自転車が5台くらい停まっている。道路に。小学生くらいの男の子がよく出入りしていたが、中学生くらいの女の子と高校生くらいの男の子の出入りも目撃したことがある。
子どもが出ていく際、特に施錠している様子もない。大人が出入りしているのも見たことがない。私は塾か何かに利用されている場所かと思っていた。
一軒家だと思っていたが、よく見ると玄関ドアが2つ付いている。
“2世帯…?”
夏になると自転車が停まっていない方の玄関は窓が開け放たれ、玄関ドアも少し開けてあった。老婆が一人で居るのが見えた。おそらく2世帯が入居している賃貸。
“子ども何人居るの…?”
③ひたすらえずきを轟かせるおじさん
電停から居住アパートまでは15分程歩く。当時お腹が大きかったっため、動きものろく、体感では倍の時間がかかっていたように思う。一人で出かけ、夕食を済ませて帰ったので19時を回っていた。あたりは暗くなっていた。
アパートの近くまで歩いてきた時、おじさんの音が聞こえ始めた。
“ゔぉおぉぉおおおおおえ‼‼‼‼”
“ぅ、う、ぅ、ヴぉおおおおおおおおおぅえ‼‼‼‼‼‼”
“ゔぉおおおおおぅえ‼‼‼‼”
安定期には入っていたが、つわりを彷彿させた。音の方角を見るとおじさんらしき塊がアパートのベランダにあった。ベランダでうずくまってえずいていたようだ。
④夜22時、24時間営業スーパーで荷物を詰める台に腰掛け惣菜を食らうおじいさん3人衆
居住物件近くには24時間営業しているスーパーがあった。徒歩3分程度で到着する便利さから、最初はよく利用していた。生鮮食品は鮮度が良く、日用品も良心的な価格。広さも十分で品ぞろえも豊富、遅い時間でも営業している。スーパー自体は主婦にとって頼もしい店舗だったが、私たち夫婦はやがてそのスーパーのことを“魔窟”と呼ぶようになった。
入口の自動販売機のところにはパイセンたちがよくたむろしていらっしゃった。保護を貰いに行く日に顔見知りになると聞いたことがある。
ある夜、夫の帰りが遅くなった日。夕飯は何か買ってくるとのことだったため、私は適当に済ませていた。22時過ぎ、夫が帰ってきてから聞いたのが見出しの件だった。そんな光景見たことがない。大体台の上に座る大人なんて居ない。店内飲食可能ではないし、イートインスペースもない。店員さんは注意しないのだろうか。見慣れているのだろうか。
以後、私がそんな時間に買い物に行くことはないし、夫もあまり行かなくなったため、日常的に行われている状況なのかは不明である。
⑤スーパーで惣菜の蓋に手を当てながら1番温かい物を選別するおじいさん
④番よりも前に遭遇したと思う。感染症も流行前だったが、嫌悪感を抱いた。いくら蓋の上だからとはいえ、購入する気のないものまで素手でベタベタと触っても良いものだろうか。おじさんはぶつぶつと”いけん、こりゃぬるい””んー、これかな?”とか言いながら総菜を吟味していた。私は魔窟でお惣菜を買うことはなくなった。というより、魔窟で食材を調達することを諦めた。なるべく車を走らせ、少し距離はあるが大型のショッピングセンターの食品売場で買い物するようになった。
⑥スーパーでスボンの股間から片足先までびしょ濡れで異臭を放つおじいさん
子どもが生まれてからは荷物が増えたため、車で出ていくのが億劫になり、久しぶりに魔窟に寄ってみた。行ってみるとやはり野菜は新鮮で大型店より
価格も安く、こちらも新鮮な気持ちで店内を見てまわった。
レジ付近、ふいに異臭がして辺りを見まわした。鼻に突き刺さってくる、昔の公衆トイレのにおい。強烈なアンモニア臭だった。においの先を目でたどると、股間から片足の先までズボンの色が変わっているおじいさんが居た。がに股ですり足。明らかに歩き方がおかしい。
”漏れてますやん…。”
魔窟のスーパーとしての良さを再認識し始めた時だったが、私は子どもと荷物を抱えて大型店に行くことを覚悟した。
⑦隣に越してきた、子ども3人居ながら時におじさんが運転する軽自動車でご出勤されるシングルマザー
隣の部屋はしばらく空室だったのだが、ある日突然ドタバタとし始め、引越してきたなというのが分かった。今回唯一の後輩だ。
その日の夕方、ピンポンが鳴って、引越しのご挨拶に来られた。玄関ドアを開けると、金髪をお団子にまとめた美人が立っていた。「子どもが3人いるんでご迷惑おかけするかもしれませんがよろしくお願いします」と、かわいい柄の布巾のセットを頂いた。声はガサガサに枯れていた。ご丁寧にありがとうございます、と受け取ったが、間取りは同じはず。60㎡もない2LDK。子が産まれてからの我が家は荷物が増え、赤ちゃんの間でさえすでに手狭に感じていた。3人も居てどうやって過ごしているのだろう。
会えば挨拶をする程度だったが、どうやらシングルマザーのようだった。大人1人で幼児以下が3人だったらまぁ住めるかな、と感じるようになっていた。
よく近くの公園に子どもと遊びに出かけていた。女性は細身でスキニージーンズが良く似合っていた。キャップはグッチだった。グッチを筆頭に、その他身に着けているものがハイブランドであることに気が付いた。仕事は夜職だろうなと感じた。
ある日、こちらが出かける際、隣の玄関でごそごそと音がしていた。私たちが出かけるまで、ドアの向こう側で息を潜めていらっしゃるように感じた。
女性が出てきた時、残念ながら私たちはまだ車に荷物を積み込んでいた。女性はいつものジーンズ、すっぴんにカラコンだけのスタイルではなく、バッチリメイクにひらひらの服、ファーベストにシャネルのマトラッセを身に着けていた。とても綺麗だったのだが、私たちがまだ出発していないことに驚き、少し気まずそうに笑顔を向けてこられた。ずっと停まっていた軽自動車に乗りこんで先に出発して行った。
私たちが引き払ってから数年になるが、最近彼女のインスタアカウントを発見した。フォロワー5万人のインフルエンサーだった。お隣さんだった時に疑問だった壁の向こう側がこうした形で覗けると思わなかった。
⑧医院の垣根に立ちションするおじいさん
住宅街の中、住居を兼ねているような古くからあるクリニックが多い地域だった。内科を始め、小児科、婦人科、精神科、耳鼻咽喉科、眼科、と、診療科も多様で充実していたように思う。
中でも、眼科は広かった。広い庭があり、その周りを含めた医院全体を手入れされた垣根が覆っていた。あのおじいさんは電柱も垣根も便器も同様の価値観なのだろうか。まっすぐ立っているものなら何にでもかけて良いわけではない。そもそも住宅街の真ん中で社会の窓から取り出すのも完全にアウトのはずだ。私という目撃者もいた。もしかしたら見せたかったのか。何を見せられていたんだ。
⑨老人ホームに生まれ変わった2部屋まる焦げのままの元公営住宅
地図上は老人ホームだった。変わったつくりだな、とは感じていた。老人ホームの周辺は大きな公園、マンモスマンションが2棟、公営住宅が数棟、かなりの人が住んで居そうなのだが、あまり歩いている人を見かけなかった。
公園もあったため、私は夫が居る時は子どもを連れて周囲を散歩していた。
歩いていると、なんとなくの景色が目に入る。ただ一つ、何気ない光景に違和感を抱く。目をこらすと、3階建ての1番上の部屋、見えにくい部屋ではあったが、ベランダから見える窓であろう場所にベニヤ板が当ててあった。板の上側、屋上につながる軒の部分がすすで真っ黒だった。
その時点で驚いてはいたのだが、さらにもうひと部屋、同様にベニヤ板が当てられて軒が真っ黒な部屋を見つけてしまった。
2部屋も焦げたのなら、修繕するより売り払った方が得策ということだったのだろうか。
補欠1 夜間、電柱の影に座り込んでうなだれる金髪ショーパンギャル
ジェンダー面から、女性の話題を少し増やすべく補欠を追加。パンチは弱い。こちらが夜間のお迎えのため車を走らせている時に見かけたというだけの話だ。声をかけるべきだったのだろうか。ただ、こちらも妊婦だったのだ。不用意にトラブルに巻き込まれるのは避けたかった。
補欠2 上の部屋に住んでる、ショーパンロングブーツの、薄めのアンミカ
私たちの真上の部屋に住んで居るのは良くて40代、50代にも見える女性だった。駐車場で出くわすと挨拶はかわしていた。ショートパンツにロングブーツはこだわりだったのだろうか、毎回そのファッションだった。余談だが男性は露出の多いファッションの女性を見ると”目のやり場に困る”というが、目を見て話せば良いだけだ。
こちらも夜職のにおいはした。6戸しかないアパートの2世帯の住民が水商売の女性だったということになる。
住環境の大切さ
現在はマンションを購入し、引越した。希望の新築マンションは当時3つ候補があったのだが、先の反省を生かし、間取りだけにとらわれないよう慎重に選んだ。2択まで絞ったもう1つの候補の方が、正直部屋の間取りや雰囲気が気に入っていた。しかし、マンション建設予定地のすぐ隣に、ツタでおおわれている一軒家があるのを私は見逃さなかった。洗濯物のような衣類も吊るしてあった。もちろん、それだけで決めたわけではないが、不安な要素はできるだけ排除すべきである。
現在は快適な住環境を得て、のびのびと過ごしている。子どもとよく外に出かけるようになった。よく考えると、あのアパートも築2年で空室になっている時点で怪しい気はしていた。未入居ではなく、先住民が居たのだ。
相場より家賃が低いのも、オイシイとは思わずに注意する必要がある。みなさんも、新しい物件を選ぶ際は忘れずに周辺状況を確認していただきたい。
日本にもスラムが存在している
私は地方の田舎の出身だ。小学生で初めて博多駅に行き、駅前の植え込みで寝ている人たちを見たのが衝撃だった。路上生活者と縁が無かった。
大学卒業後、初めてミナミを歩いた時は猫を乗せた車輪付きの家を運んでいるパイセンに目を奪われてしまった。成人しているのにも関わらず、同期に「見たらアカン‼‼」と注意された。
その環境が当たり前だったら、特に不思議に思わなかったのかもしれない。世間知らずだったのかもしれない。そう、知らなかったのだ。そんな環境があることを。知ろうともしていなかった。だから突然知らない環境に身を置いて、面食らってしまった。
今回は私のように、スラムに縁がなかった人にも届くようにまとめた。
日本のとある街の話。