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桜が散っている。 私のロードスターは、高台のパーキングに停まっている。 ふたり乗りのちっぽけなロードスター。 オレンジに塗られたボディに、漆黒の布製の幌が掛かっている。 急勾配の傾斜の途中に、巨人が指でつまんでこしらえたような平地が、虚空に向かって突き出している。そのパーキングのへりに平たく張りついている。 仕事がかさんでいる時期には、帰宅が深夜になることも、ままある。 エンジンの鼓動が止まり、車外に出ると、眼下には夜景が広がる。星が吹き散らされたような眺めだ。
はじめまして。 やさしい短編小説、写真の人、 小牧幸助です。 2021年2月から1年あまり毎日書いていた 1分で読める小説391作品の中から オススメの7作品まとめました。 空がくれたブランコ 靴を脱ぎました。夕暮れ時。彼女は高い建物の誰もいない屋上にいます。地上の人々が小さく見えました。ビル風に前髪が乱されます。これほど後ろ向きな前への一歩はないかもしれないと、彼女は目を閉じて苦笑しました。 一歩、進もうと目を開けたとき、彼女は目の前にブランコがあることに気づきまし