楽天モバイル株主優待SIM
モバイル通信サービスは国内に4キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク、楽天)ありますが、筆者は全4キャリアを持ち歩いて、日時場所を変えて使い勝手などを試しています。
楽天グループでは、第27期の株主優待として、2023年12月末時点(権利付最終日は2023年12月27日)の株主に、「音声+データ30GB/月」プランの1年間無料提供を始めました。
筆者も別途楽天モバイルを契約しているものの、楽天回線は地下鉄で使いづらい、使いたい時に使えない、近頃は混雑していて使えないこともあったりして、あまり使っておらず、最低料金の月々3GB以内の範囲に収まっていましたが、今回この株主優待SIMをもらったおかげで、楽天回線を気軽に試せるようになりました:)。
この株主優待は月々30GBを1年間無料で使えてお得ですが、楽天らしいと言うかちょっと綱渡り的なところも垣間見えます(苦笑)。
2ヶ月使ったところで、無料の株主優待SIMはどんな使い勝手なのか、かいつまんで紹介したいと思います。
締切前日に発表、提供内容も二転三転
権利落ち前日に発表され、提供内容も当初は持株数に応じて3ヶ月~だったものが一律1年になり、データSIMだったものが音声対応になる、申込要領も間際まで不明、さらに提供条件書にあたる「ご契約内容のご案内」書類がSIM到着の1ヶ月後に届くなど、かなりバタバタとしていました。
同社では通信サービスのお試し施策を構想していたので、その一環なのかなと思っていたのですが、同時期に無配転落していることなどから、現金垂れ流しとなる配当に替わる個人株主への還元策として、今回のような破格の優待が用意された側面がありそうです。
しかしかなりのドタバタぶりで、まあ楽天らしいとも言えますが、これが有料サービスだったらクレーム殺到でしょうね^^;。でも無料かつ破格の優待だけに、また改善されていたので、むしろよくやってるなぁと感心しながら見ていました:)。
筆者はpSIM(SIMカードの同社での呼称)を発行してもらったので、先行申し込み期間に手続きし、その際に楽天IDとの紐づけがされ、楽天IDに登録している名前で届いて問題なく受け取れたのですが、本人確認にまつわる不都合も起きているようです。
当初はデータ専用のeSIMという話だったので、送って終わりの予定だったのでしょうが、後から音声通話機能を付けたことで本人確認が必須になってしまい、混乱に拍車をかけたようです。
株主優待で提供されたSIMカード
筆者はeSIMでも問題ないので、当初はeSIMをもらうつもりでしたが、eSIMだと機種変更の度に再発行手続きが必要になります。
一連のドタバタぶりを見ていて、後々再発行手続きをせずに済むSIMカード(pSIM)の方が無難かなと思って、先行受付期間の最終日に方針転換して申し込んだのが正解でした。以降スムースに受け取れて、5月連休頃から使えています。
届いたSIMカードはアクティベーション等の手続き不要で(つまり回線開通済みで)、端末に挿してAPNの設定をすれば使える状態になっていました。
ただ、写真のようにSIMカードだけ送られてきても(スタートガイドはQRコードを使って読めということらしい)使える人は多くはないでしょうね(^^;。
eSIMだとアクティベーションコード(が入ったQRコード)のみが届くのでしょう。するとますます使える人は少なさそうだな、と思います(^^;。
電波状況が良ければ通信はすこぶる快適
筆者は4月末頃に株主優待SIMをもらって2ヶ月ほど使ってみましたが、後述の制限を除くと特段の制限はなく、5G基地局のすぐ近くへ行けばすこぶる快適に使えます。
エリアおよび後述の問題を除けば、非常に使いやすく、月々30GBを1年間無料で使えるのはとてもお得です。
でも、ちょっと癖があります。
株主優待SIMの制限事項
サービス仕様上の制限
月々30GBまで。30GBを超えると200Kbpsに制限される
電話番号は新規発行され、選べない。MNP転入もできない
キャリア決済は使えない
「Rakuten Link」は使えず、「Rakuten Link Office」を使う
「my 楽天モバイル」が使えない
「my 楽天モバイル」を使えないことに起因する制限
残りデータ容量を確認する術がない
着信転送ができない
留守番電話をOFFにできない
eSIMは専用の問い合わせ窓口に連絡すると再発行してもらえるが、手続きに2ヶ月ほどかかる
eSIM⇔pSIM(SIMカード)の交換に対応したが、手続きは手動で2ヶ月ほどかかる
中身は法人向け30GBプラン
筆者は4キャリア全て持っていて、使い勝手など試していますが、楽天モバイルは筆者の生活圏では電波が悪くて使いにくさがあります。でも頑張って30GB使ってみたところ、図のように制限されました:)。
法人向けサービスの音声+データ30GBプラン(正価は税別2,780円)を流用したようで、月々30GBを超えると月末まで200Kbpsに制限されます。
制限ではありますが、これが1年間無料で使えるのは、株主優待としては破格の内容でしょう。
電話番号が新規発行のみで、電話番号を選べないのも、1年後に自動解約される「お試し」回線なので、まあ仕方ないかなと思います。
そもそも支払い方法を登録していないので、キャリア決済が使えないのはむしろ当然です。
機種変更に2ヶ月待ち!
しかし、データ残量を確認する術がないのは不便。筆者は別途楽天モバイルの契約があるので「my 楽天モバイル」を開けますが、株主優待の番号は出てきません。
法人向けの「my 楽天モバイル Office」というものもありますが、こちらにログインしても「my 楽天モバイル Officeにアクセス権限がありません」エラーになります。
そして、この「my 楽天モバイル」が使えないことに起因して、eSIMの再発行やSIM交換もできません。株主優待担当部署にて人手を介して手続きできるものの、2ヶ月かかると告知されています。
50万人もの株主がいて、そのうち機種変更する人の割合は不明ですが、仮に2割だとしても、毎日274人分の機種変更を手動で処理する人海戦術。スタッフが気の毒です…
そしてユーザー目線でも、機種変更に2ヶ月待たされるのは、いくら無料でもちょっとひどいですね…
VoLTE通話OK
通話には、「Rakuten Link」は使えず、「Rakuten Link Office」を使うよう案内されていました。
ところがVoLTE通話も制限されてはおらず、発着信とも普通に使えました:)。
株主優待SIMは申込時に支払方法を登録していないので、VoLTE通話を使われても料金を請求する術はありませんから、VoLTE通話は着信専用なのかなと思ったのですが、普通に使えてしまいました(^^;。
筆者は専らデータ通信で使っていて、通話は動作確認くらいしかしていませんが、VoLTE通話をヘビーに使われたらどうするんでしょうね。
留守電が常時ONで、OFFにできない
面食らったのは、留守電がONになっていて、OFFにできない。着信転送も使えない。
当初データSIMという話だったので通話を使うつもりはなかったからいいとして、通話を使う前提だったらこの制限はいただけません。
そもそも、留守電が常時OFFならまだしも、ONになっていてOFFにできないのは欠陥だと思います。
ちなみに楽天モバイルの留守電メッセージ再生番号は「1417」でドコモと同じですが、ドコモと違って1410などの設定用番号は使えませんorz。
キャンペーンSIM用の「my 楽天モバイル」が必要では?
楽天Gは来期の株主優待について何も発表していません。今期は無配転落した代償として奮発したのでしょうが、少なくとも今回のような破格な優待は続かないように思います…
機種変更(eSIM再発行)手続きを人手を介して行っているのも、続けるつもりがないからでしょう(単に間に合わなかった可能性もありますが、続けるつもりであればシステム開発して対応すると思います)。
でも、楽天は無料お試しSIMを構想していたようですし、今後このようなキャンペーンSIMを提供できるようにするためにも、データ残量と着信転送・留守電設定、SIM交換手続きだけに機能を絞った簡易版「my 楽天モバイル」のようなものを作っておく方がいいように思います。
また、SIMを送って終わりでは使えない人が多いでしょう。無料お試しSIMを考えているのなら、初期設定をわかりやすく案内する仕組みづくりも必要だと思います。
楽天モバイル契約回線数を底上げ
余談ついでに、株主優待無料回線は法人向けサービスを流用して提供されており、楽天モバイル契約回線数に計上されているようです。
同社では2024年 6月16日時点で700万回線を超えたと発表していましたが、楽天グループの株主数は2023年12月31日現在で531,233名いるそうなので、700万回線のうち50万回線ほどは無料の株主優待回線なのでしょう。
すると、1年後には自動解約になる(≒50万回線純減になる)し、楽天グループ本社から楽天モバイルへの支払いはあるにしても、ARPU押し下げ圧力になりそうです。
勢いよく見せたい気持ちはわかりますが、1年後にツケを回す格好になりそうです(^^;。
【本稿は、2024年 7月14日に『きまぐれ手記』に追記した余談を再構成したものです】