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韓国のバーチャルアイドル:PLAVEの前例のない異常な人気秘訣

下記の該当映像は韓国のエンタメ市場へ新しい歴史が刻まれた瞬間だ。

2024年3月9日、韓国国内有名音楽放送でバーチャルアイドルが1位を取得した。ルセラフィムなどのトップクラスのアイドルを勝ち抜いて。

バーチャルアイドルがここまで愛されたのは前例がない。

彼らの名は「PLAVE」だ。

このNoteではバーチャルアイドル「PLAVE」とスタートアップ「VLAST」の人気戦略と個人的な考察を語ります。

概要

韓国バーチャルアイドル「PLAVE」

「PLAVE」は2023年3月にデビューした新人バーチャルK-Popアイドルだ。所属メンバーは(写真の左から)ハ・ミン、ノア、イェジュン、バンビ、ウンホの計5人で構成されている。彼らは作詞、作曲、振り付けなど製作の全過程へ取り組むセルフプロデュースアイドルである。

彼らは宇宙人であり、地球にいる技術者(開発者)に能力を与えられ、地球とコミュニケーションができるようになったという独自の世界観を持っている。

大事なのは、PLAVEはAIアイドルではない。外観はバーチャルだが、その裏には各キャラクターに当たる「本体」の人が存在する。

PLAVEはどれくらい人気があるのか?

初めてのライブから成功

PLAVEの初コンサート 「Hello, Asterum!」

今年4月13-14日、ソウルのオリンピック競技場でPLAVEの初ライブが開催された。先行販売チケットのオープンで同時接続者が7万人に達し、全席完売を記録した。二日目の公演はオンラインでも配信され、オン・オフラインでファンとリアルタイムで交流ができた。

ポップアップストアで売上が7倍

PLAVEのポップアップストアのポスター

ソウルに位置する「ザ・ヒュンダイ百貨店」で、PLAVEを含め1ヶ月間バーチャルアイドルのポップアップストアを連続して開催し、約10万人の顧客が訪れた。

ザ・ヒュンダイ百貨店はこれで合計70億ウォン以上の売上を上げたと明らかにした。(通常、ファッション系のポップアップストアの1ヶ月間の売上は10億ウォン程度であるにもかかわらず)

当時は単独映像を上映するなどの体験型コンテンツが展示された。特に、ホログラムフォトブースが当時SNS上でチャレンジ化され流行ってた。

コスメモデルに抜擢 → 完売

今年4月、韓国の有名コスメブランド、「Mediheal」は初めてバーチャルアイドルを自社ブランドモデルに選定した。

「Mediheal」の人気商品を持っているPLAVE
実際の商品のイメージ
「大容量スクエアトナーパッド」という商品

Medihealは天才だった。購買力のある20-30代の女性をターゲットにするMedihealにとって、PLAVEのファン層は非常に被っていた。

↑ Medihealは4月29日から2日間、先着順でOliveyoung(韓国のNo.1 ビューティードラッグストア)で自社のイベント製品を計3万ウォン分以上購入すれば、PLAVEメンバーのランダムフォトカードとステッカーを贈呈するイベントを開催した。

イベント初日の午前0時になると、たった15秒で完売。 サーバーはダウン。

その後、Medihealはサーバー混乱とイベント商品の早期消尽で謝罪文まで載せた。PLAVEに向けたファンのものすごい熱狂が感じられる。

これまでMedihealが展開してきたマーケティングの中で、前代未聞の履歴を記録し、早期完売となりました。PLAVEのファンの皆様のご声援に備え、準備不足と失望をおかけしたことをお詫び申し上げます。

- Medihealの謝罪文の中


PLAVEはなぜこんなに人気があるのか?


今までバーチャルアイドルが存在しなかったわけではない。以前にもSUPERKIND、MAVEのようなバーチャルアイドルグループが活動を続けていた。 では、人々はなぜPLAVEにこんなに熱狂するのだろうか?

仮説1. 韓国人に馴染みのある絵柄と大衆性のあるジャンル

PLAVEはウェブトゥーンとK-POPの融合体だ。

これまでバーチャルは、従来のANYCOLORのような日本のアニメーションスタイルがほとんどだった。しかし、韓国国内ではそれほど馴染みのあるスタイルではなかった。

一方、今のMZ世代は学生時代からスマホでウェブトゥーンを見ながら育ったので、ウェブトゥーン風の絵柄にとても慣れている。そのため、ほとんどの人が日常的に楽しむことができるウェブトゥーン風の絵柄は、漫画スタイルを維持しながらも、より幅広い市場をターゲットにできた。 (ディープフェイクで作られた中途半端な実写顔ではなく、漫画体であるため、不気味の谷を免れたこともあるだろう)。

実際インタビューによると、(通常は他のアイドルが好きで、新しいアイドルに乗り換える場合が多い反面) PLAVEの場合、ウェブトゥーンやサブカルチャーのアニメなどが好きでアルバム、ストリーミングに初めて触れるファンが半分を越えるという。

ジャンルとしても、グローバルに領域を広げているK-Popで大衆を攻略し、広い市場性を期待することができた。サブカルチャーとメインカルチャーの融合で大きなシナジー効果を出したのだ。

仮説2. 隠さないバーチャルアイドルの抜け目

Youtubeに「PLAVE」と検索すると、「プレイブエラー」という検索キーワードが上位に露出される。

↑ 「プレイブエラー」と検索すると一番上位に出てくるファンが製作した映像。ライブストリーミング中にPLAVEの各メンバーのエラーに対処する方法が紹介されている。当該映像は現在(6月18日時点)までにおよそ97万回再生されている。

PLAVEの動きはリアルタイムレンダリング(Real-time rendering)技術で実現される。しかし、まだ完璧な技術ではないため、たまに技術的欠陥によりエラーなどの偶発的な問題が生じることもある。

動画のようにラグが生じてキャラクターが凍ったり、ぎこちない不思議な動きを見せたりもする。これはリアルタイムでファンに送出されるライブストリーミングなので、メンバーたちは慌ててお互いを隠したり、画面の外に急いで出る姿を見せたりする。

しかし、別にこのような抜け目をわざわざ隠したりせず、自然に露出し、一つのネタとしてコンテンツ化する様相を見せている。このような意図的に表わす抜け目から、ファンとのまた新たな相互作用が現れる。ファンは該当映像のように技術的エラーが発生する事例だけを集めて、これを楽しんで共有している。

バーチャルアイドルの短所や限界と指摘されそうな抜け目を、むしろファンは愉快な要素として受け入れ、コンテンツとして消費しているのだ。初めは拒否感があったというファンもこのようなことをきっかけにファンになることが多いという。

仮説3. 双方向的なコミュニケーション

通常、K-Popアイドルは不定期に個人のSNSやファンダムプラットフォームを通じてライブストリーミングを行う。短ければ2分、長ければ1時間程度が平均的だ。

一方、PLAVEはデビュー初期から週2回、約2時間ずつYoutubeのライブストリーミングでファンと定期的にコミュニケーションをとってきた。

概して一方向的かつ空虚なコミュニケーションとコンテンツ消費に過ぎないAIアイドルとは異なり、実際に双方向的な自然なコミュニケーションが可能なため、一般的なアイドルから感じられる魅力をそのまま感じることができる。

PLAVEのYoutube公式チャンネルで行われる実際のライブストリーミングの様子。
毎回平均的に1~2万人程度が視聴する。

主な活動舞台がオンラインであるだけに、オンラインで接点を増やすことに力を入れているのだ。PLAVEがファンダムを多く拡張できたのは、このような持続的なコミュニケーションが大きな影響を及ぼしたと考えられる。


PLAVEは誰がつくったのか?

脱伝統的なエンタメスタートアップ

PLAVEは、VFX(視覚効果)を専門とするバーチャルコンテンツスタートアップ、VLAST によりつくられた。

韓国の地上波放送局であるMBCで20年間働きながらコンピューターグラフィックチームを率いたイ・ソング代表が独立して設立した。

ハイテクスタートアップとしてスタート。 エンタメの専門家はいなかった。

従来のアイドルを育成する伝統的なエンターとは違い、内部人材は大部分コンピューターグラフィックやゲームエンジンの開発者たちで構成されている。
(普通にゲーム会社じゃね、、?)

内部構造はゲーム会社に近いが、収益モデルは一般の芸能事務所とそんなに変わらない。現在までは音源とグッズ、そしてファンダムプラットフォームを通じてお金を稼ぐ構造で、芸能事務所と同じだ。今後、バーチャルアイドルならではのコンテンツを製作し、新しい収益源を作るつもりだという。

時代の空気を逆行

PLAVEは2023年から活動を始めたが、当時はメタバースへの期待が物凄く盛り上がった時期であり、数多くの企業が現実の人のようなバーチャルインフルエンサーに力を注いた時だった。そのような雰囲気の中で正反対のスタイルを追求し、エンタメの業界に新たな荒波を引き起こしたのだ。

以下は、VLASTのインタビュー内容の一部を抜粋して自分なりにまとめた内容である。

現実の人のようなキレイなバーチャルヒューマンを作るためには、ターゲット層は自然とBTS、Twiceのように実際にキレイな現実の芸能人が好きな人になるので、彼らと同等の魅力を与えなければならない。バーチャルヒューマンからも現実の人と同じまたはそれ以上の価値を与えなければならないということだ。

単なる写真ではなく、映像という高い技術が必要な媒体では、特にそれを完璧に実現し満足させるのは今の技術ではまだ限界がある。中途半端にやってしまうと、逆に不快感を与えるだけだ。

このような限界を認めたVLASTは、バーチャルヒューマンの代わりに、自信のあるモーションレンダリング技術を基に、2Dイラストのアイドルを作ることにしたのだ。

バーチャルアイドルも経験するリスク

製作会社の立場でバーチャルアイドルの最大長所の一つとして言及されるのは、事件事故に巻き込まれるなどアイドルのプライバシー問題がないということだ。

しかし、彼らもまた彼らだけのリスクを持っている。それはバーチャルの裏に「本体」が存在するということだ。

実際にPLAVEは「本体公開禁止原則」を固守することで有名だ。VLASTはバーチャルキャラクターを実演する「本体」を言及することを厳格に防ぎ、これを守らない際に法的措置をすると公示したことが話題になったことがある。

なぜこんなに本体を隠すことに執着するのだろうか。
「めいじろう」といキャラクターで簡単に例を挙げてみよう。「めいじろう」は明治大学のマスコットだ。

たまにキャンパスに出没するめいじろう

「めいじろう」はかわいいルックスで人気者である。たまにこのようにキャンパス内を歩き回り注目を集めている。私も彼のグッズを買ったり一緒に写真を撮って愛がってたりはするが、実は彼の中に誰がいるかは知らない。別に知りたくもない。私は「めいじろう」の裏にいる誰かが好きなのではなく、「めいじろう」のことが好きだからだ。むしろ、もし突然「めいじろう」が頭を脱ぎ、中からあるおじさんが汗を拭いて出てきたら、少しショックを受けるだろう。

キャラクターを消費する時、その裏に誰がいるのか知っている人も多いが、特にそれを掘り出すこと自体は消費しない。IPを消費する過程でその裏を知ろうとする行為は、製作会社が意図したことと全く違うものであるだろう。

VLASTによると、仮想のキャラクターとして活動しているので事件や事故に巻き込まれることはないと思われるかもしれないが、最近はファンがPLAVEメンバーの裏にいる「本体」を見に所属事務所を訪ねてきたりすることが多くなったそうだ。そのため一般アイドルと同様にプライバシー管理をしなければならないという。

「バーチャルアイドルにもかかわらず、日常生活でも気をつけて良い姿を見せないといけないと思うくらい、他のアーティストと同じようにリスクも存在する。バーチャルだからといって、日常生活をめっちゃくちゃにして活動できるとは思っていない。私生活や言動に気をつけなければならないし、誠実でなければならないと思う。」

- VLAST 代表、イ・ソング


好奇心から感動へ、危機からチャンスへ


一般的にこのようなバーチャルアイドルは、初期にはバーチャルという魅力的な要素のため、不慣れで異質的だと感じられ面白いと思い流入されることが多い。

しかし、こうしたファン心を持続させるのは結局バーチャルではない。

安易に好奇心につられた人々は安易に去っていく。この好奇心をファン心に変えるためには、まだ「人の真正性」が必要なようだ。そしてPLAVEは実際にそれを満たしている。人間だけが与えられる人間的な魅力と既存のアイドルが与える感動や連帯感まで、、このような面で、MAVEのような他のAIアイドルとは全く違う。

そのためか、特にYoutubeの動画に「うちのPLAVEはAIではない!」と叫んでるファンのコメントが異常に多い。
実際VLASTの代表もそれが最大成功の要因だと分析する。

最後に、個人的にPLAVEは本当に災い転じて福となすの代表例のようだ。

背後にある本体を表面に出してはいけないというリスクと、完璧ではないテクノロジーによるリスク。

しかしながら、その本体があるからこそ、人の心を動かすことができたのであり、テクノロジーが完璧ではないからこそ、人を笑わせることができたのでは。

これは本当に知れば知るほど魅力的なアイドルだと思う。


以上。


前回の韓国のショートドラマ編が思ったより多くの方から評価され ↓

今回も韓国のエンタメのネタに触れてみました。
楽しんで頂けたら幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
貴重なご意見を交わしたいと思う方は是非ご連絡お待ちしております。

キム ユンソ


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