『コーチ・プライム ~勝利の方程式~』S1-E3
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シーズン1, エピソード3「ジャクソン州立大のホームカミングデー」
やたら長いサブタイトルがついているが、今回の目玉はまさに「ホームカミングデー」での試合である。
ホームカミングとは、その名のとおり「家」や「故郷」に帰って来るという意味で、年に1度(秋学期)、高校や大学で卒業生を招く行事。いわゆる同窓会のような意味合いがある。
ダンスやパーティーなどが開催され「キング」や「クィーン」を選んだりと大いに盛り上がるのだが、その中でもフットボールの試合はメインのイベントとなる。ジャクソンの試合会場には4万人ほどの観客が詰めかけるという。
普通は弱めのチームを招いて自校のいい所を見せるわけだが、今回JSUタイガースの対戦相手となるのは同じリーグの強豪キャンベル大学(CU)である。
HBCU(Historically Black Colleges and Universities)は黒人が優先的に入れる大学を指すが、奴隷解放宣言後、教育を受けられなかった黒人たちが作り上げたものだ。そのうちの1校であるJSU(ジャクソン州立大)の卒業生には有名な黒人の選手やラッパー、俳優たちも多い。
その多くは、やはり有名人であるコーチ・プライムことディオン・サンダースの友人でもある。私が字幕担当したシーズン3のエピソードにも名前が出てくるラッパーのスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)* も、JSUの卒業生ではないようだが、すでにこの回に登場している。翻訳前には彼のことを知らなかったが、調べたらいろいろな意味で相当な有名人だった。
彼らもホームカミングデーにはジャクソンにやってきて、街は大いに賑わうのである。スヌープ・ドッグは、試合前のロッカールームにまでやってきて選手たちを盛り上げてくれた。
試合は相手チームの堅い守りに押されて拮抗するも、キッカーのアレハンドロ・マタの活躍にも助けられ、22対14の僅差で勝利。試合会場は大いに沸いた。これでJSUはシーズン7連勝中だ。
さて、順番は逆になるが、このエピソード3ではその前のアラバマ州立大との試合でひと悶着あった。試合には26対12と結構余裕で勝ったのだが、相手チームのヘッドコーチが、試合後にディオンコーチとのハグを拒否。彼の手を振り払うという大変失礼な行為に及んだのである。
それ以前から仲が悪かったのかもしれないが、何があろうと試合が終わったらノーサイド。どんなスポーツでも礼に始まり礼に終わるものだ。負けたとしても、正々堂々戦った相手におじぎなり握手なりハグなりするのが当然の礼儀である。
子供でも知ってる基本的な礼儀作法を、大勢が見ている前で大人が破るというのは教育者としてもどうかと思う。コーチ・プライムだってこの態度には腹が立ったであろう。
だが、この男を怒らせてはいけない。シーズン2でも似たようなことが起きるが、ディオンは批判されたり失礼な態度を取られると、それを逆手に取り選手たちを鼓舞するのである。
今回は、相手コーチに「ディオンはSWACの一員ではない」と言われたものだから、さあ大変。SWAC(Southwestern Athletic Conference )とは前述のHBCU(歴史的黒人大学)の大学で構成されているカンファレンス(リーグ)である。
"Who is SWAC?" 「誰がSWACか?」がスローガンのようになり、あらゆるところでこの言葉が飛び交い、歌や踊りまで作られた。さらにディオンは "I AM SWAC"「俺がSWACだ」というロゴが入ったTシャツを着る始末。精神まで筋肉でできてるような、打たれにくい男である。
ディオン・サンダースのコーチングは、さらに第4話へと続く。
(字幕翻訳 町野健二さん)
*スヌープ・ドッグについてはこちらをどうぞ⤵
著者:浦田貴美枝(映像字幕翻訳家)
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